表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/60

狩りの時間です


「ハナちゃん、おれさっきダメにしちゃった分、2、3羽狩ってくる」

「ここで待ってて大丈夫…?」

「3分で終わるから。それに遠くには行かないし、結界も張ってるからね。絶対にここから動かないように」


そう私に念を押して、ひょいひょいとアイテムボックスに卵を入れていく。

割れ物だけどそんな無造作に入れちゃって大丈夫なのかしら…。


「じゃ、いい子にしてて」


そう言うとマオは、城からここまできたスピードとは比べ物にならない速度で上昇していく。

思わず上空を見上げると、木漏れ日の隙間から、マオがロック鳥を狩っているのが見えた。


と言っても、ほとんどすれ違いざまにロック鳥の羽が舞い、同時にその巨体がマオの足元に吸い込まれていく。


「マリーさんの清浄魔法と同じくらい便利な魔法だなぁ…」


呆然と見上げながら呟く。

まぁ私の家の冷蔵庫とかも同じといえば同じなのかもしれないけど…。


「ただいま。とりあえず5羽分くらいあればいいよね?」

「あの大きさなら十分でしょ!」

「じゃキリくんところに行こうか。そろそろ着いてるはずだし」


そう言うとマオはまた私を抱きかかえ、巣からゆっくりと飛び立つ。


「ちょっとだけ森の中も見てみたいな~」

「今は大きい魔獣もいなさそうだから、ちょっとだけだよ」


ゆっくりと高度が下がる。

ロック鳥の巣からは、木が鬱蒼と茂っていて森の内部までは見えなかった。

もしかしたら料理に使えそうな野草なんかがあるかもしれない。


「はい到着」

「おー…」


恐々踏みしめた地面は、落ち葉が重なりあってふわふわしている。

そういえば上空は肌寒かったのに、森の中に入るとほんのりと暖かいのはなぜだろう?

紅葉している木も見当たらないし、水辺の岩に生えた苔も青々としている。


「なんかあったかいね」

「ここは年中こんな感じだよ。魔獣だけじゃなくて、植物にも魔力が満ちてるから、より繁殖しやすい気温を保ってるんじゃないかな」


いよいよなんでもアリだな…。


「…なんか可愛いのがいる!」


倒れた木の洞の中から、ふわふわのお尻が見えている!

あの丸みを帯びたしっぽと、ふわっふわのグレーの毛はウサギちゃんでは!?


「触っていい?」

「あー角ウサギか…まぁ大丈夫でしょう」


そっと近づくが逃げる気配はない。

私の足音に気付いたらしく、ウサギちゃんがこちらを振り返る。


「おお、角がある…!」


長い耳の付け根に、私の人差し指ほどの角が二本、上に向かって伸びている。

それ以外の、ひくひく小刻みに動く鼻や真っ黒な瞳は普通のウサギだ。


「はー!可愛い…!?」


角ウサギはあたりを警戒するように前足を上げて、二本足で立ち、威嚇するように口を大きく開けた。


「このウサギちゃん牙があるー!」

「角ウサギは雑食だから…」


ウサギといえば長い前歯じゃないの!?にんじん食べないの!?


「あんまり美味しくないし、肉も少ないけどどうする?」

「えっ別に狩りしようとした訳じゃないから!」


すぐ食べ物それ以外かで判別しようとするな!

私はこの可愛いモフモフを触りたかっただけなのに…。


「あ、行っちゃった」


角ウサギはふんっと鼻を鳴らすと、また四つん這いになってぴょんぴょんと草むらに消えてしまった。

可愛かったけど、あれをなでなでする勇気はちょっとないかな…物理防御の魔石があったとしてもちょっと。


「襲い掛かってこなかったね」

「うん…逃げられちゃったけど」

「本来ならこのへんにいる角ウサギって、群れで魔獣や魔族に襲い掛かってくるんだけど、どうやらハナちゃんは魔力ないからエサ認定されなかったみたいだね」


そ、それは喜ぶところなのか、エサにすらならない雑魚っぷりを悲しむべきなのか…!?


「マオにだって来なかったじゃん!高級食材のくせに!」

「人を美味しそうに呼ぶのはやめなさいな。今いた個体は一匹だけだったし、おれは無理だと思ったんだろうね。群れで帰ってくる前に森を出よう」

「…はーい」


再びマオに抱えられて森を出る。

結局、野草なんかを探す暇はなかったけど、肉食ウサギちゃんが群れを成しているような森で、ゆっくり探すのは難しそうだ。

それに私が知ってる野草ってそんなに多くないし、ここに自生しているとも限らないしねー。


「…ねえ、あれキリ?めっちゃ追われてない?」

「めっちゃ囲まれてるね」


草原の中で、赤黒いブラッドブルの群れが興奮して雄たけびを上げまくっている。

その中央でキリが大剣をぶん回していた。


「おーい!キリー!大丈夫ー!?」


上空からぶんぶんと手を振る。

それに気づいたキリが、大剣をブラッドブルに振り下ろしながら叫び返す。


「おいオッサン!めちゃくちゃデカい群れが来てんじゃねーかよ!」

「お肉足りなかったんだからいいじゃない」

「もう十分だっつーの!」


わー、血の海…!

そこかしこに黒い巨体が横たわっている様は、なんとも…。

私の世界でだって、食べているお肉は最初からあの形ではもちろんなくて、食肉加工される過程があるんだけども、そのかなり初期段階を見るのはなかなか…!


お読みいただきありがとうございます。

誤字脱字、ご感想などありましたら、教えていただけると嬉しいです!

お気に入りに登録してくださった方々、本当にありがとうございます(;▽;)

もしよろしければ☆での評価も頂ければ励みになります!( ˶˙ᵕ˙˶ )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ