お目覚めドッキリいただきました
まぶしさに意識が浮上した。
見慣れない天井に、そういえば昨日はマオのベッドで寝たのだと思い出す。
これだけ静かってことは、まだキリは来てないみたいだ。
マオがカーテン開けてどっかに行ったっぽいな…と薄目で昨晩マオが座っていたあたりを見ると、やっぱりいない。
「こーんな広いベッド、マオも使えばいいのにね…」
そう呟いて転がる。
2回転がってもまだ余裕があるなんて、キングサイズより大きいんじゃないだろうか?
このベッドが置ける部屋だと、うちだとリビングにギリギリくらいかな…。
まぁ部屋いっぱいのベッドとかどうすんだよって話だけど。
掛布団を巻き込みながら2回転して、固いものに顔面をぶつけた。
「いだっ!」
石のようなひんやりした感触。
片手でぶつけた鼻を抑え、空いた片手で原因を探る。
年輪のように凸凹して、先に行くほど細くなる。
付け根にはごわごわとしてはね回る黒い髪。
「……なんでここで寝てんのよー!!!」
ベッドの端と端で寝ていたのは、紛れもなくこの部屋の、いやこの城の主たる魔王でした…!!
「…んー」
「まぁここマオのベッドだからね!?いいんだけどね!?」
昨日寝ないって言ってたじゃん!!
私の絶叫にうるさそうに眉根を寄せる。
掛け布団は私が巻きとってしまったので寒そうだ。
むしろ私がぬくぬくと寝ていて、枕も掛け布団もないベッドの端っこで丸くなっている魔王…というのもちょっとおもしろい。
「ねー、寝ないって言ったじゃん」
「…あら、ハナちゃんおはよ」
「いやおはようじゃなくて…」
のんきな挨拶と共に、マオがベッドの上でぐぐっと伸びをする。
「まだキリくん来てないの?」
「来てないみたい」
マオは1つあくびをして、ベッドの上で胡座をかいて座った。
いつも無造作の髪が、あらぬ方向に激しく跳ねている。
「…いやー、3年ぶりくらいに寝た」
「寝ないって言ってたじゃん…」
今日このセリフもう何回目だよ…起きてから数分なのに…!
「いやね?ハナちゃんが激しくベッドからはみ出てたから、布団掛けてやろうと思って寝顔見たらねー、なんかこう、おれまで眠気が…」
「えっ嘘はみ出てたの!?」
「ハナちゃんの寝顔は催眠効果があるよねぇ」
「ないわ!!」
いつもの部屋のベッドから落ちたりしたこと無かったのに…!
アレか?身の丈に合わない広々ベッドで寝たから、気が大きくなってたのか?
まさかいびきとかかいて無かったでしょうね…!
聞く勇気はないけど!!
「じゃあまぁ…二度寝する?」
「しないよ?キリもう来るんでしょ?」
「冗談なのにね〜」
まだベッドの上で、もう1つあくびをしているマオを置いて、私は部屋に移動する。
我ながらさすがに成人(?)男性の部屋のベッドで寝るのは迂闊だったか…?
でもあのフワフワベッド気持ちよかったなぁ…朝まで1回も起きずにぐっすりだったし。
「ねー、マオ!今日これ着てけばいい?」
顔を洗って昨日準備しておいた服に袖を通す。
もともと着道楽でもないので、そんなにコーディネートで迷うほどでもないけど、今日はとにかく動きやすい服がいいだろう。
私の玄関からマオの部屋に顔を出すと、マオの体が黒いモヤで包まれている最中だった。
「いいんじゃない?ていうかまぁハナちゃんには特にやってもらうことないから、服なんか何でも…」
「っていうかマオ何やってるの?」
「あなた段々人の話効かなくなってきたね…」
ふわりとモヤが晴れる。
さっきの寝起きと特に変わってないように見えるけど…。
「魔力で服着てた」
「なにそれ便利!!」
そう言われるとちょっと服がシャッキリしてる…ような…気がしなくもない…!
「私もそういうこっちの世界風の服欲しいな〜!ねぇねぇ、私にも魔力で服着せたりできないの?」
「うーん、やってみる?ハナちゃんに魔法使えないから無理だと思うし、魔力切れ起こしたらすっぽんぽんになるけど…」
「じゃあいい!!!!」
魔王様の魔力切れはないと思うけど、万が一にでも全裸は避けたい、絶対に!
「今日帰りに時間あったら、アクリの街で服でも買おうか」
「やったー!」
「キリくんの頑張り次第だね」
まぁ今日のメインは食材集めだもんね。
とりあえず手持ちの服で足りるのは足りるし、ちょっと浮いてる気がするけど…。
「あとさー、これ朝ごはんにお弁当作ったんだけど、持ってっていい?」
自分用の小さなお弁当箱はあるけど、こういう大人数で食べる分のものはないからタッパーだ。
「いいねぇ。おれが持ってくから貸して」
「よろしくお願いしまーす」
そう言ってマオに手渡すと、それを鞄にしまい…と思いきや、マオの手元の空間にズボッと吸い込まれた。
「何!?」
「あ、これ?アイテムボックスにしまったの」
「何ーーー!?」
やばい語彙力が喪失する…!
「これ魔王の特権スキルで、ほぼ無限に入るんだよね。保存も効くし」
「ドラ〇もん…!!」
「ドラ…何て?」
急に怒涛の魔王スキル見せつけてくるじゃん…!
もはやツッコミが追いつかなくなったところで、けたたましい足音と共に、キリがマオの部屋の扉をぶち開けたのだった。
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