みんなでご馳走ごはんです
一般的なダイニングテーブルを、向い合わせにつなげたような大きさのテーブル。
表面は大理石のような光沢のある石で、見るからに清潔そうだ。
マリーさんが清浄魔法をかけてくれたばっかりだし、落としたものもそのまま食べられそう…。
「丼一つだとちょっと寂しかったかな…」
「とんでもない!卵が乗っているじゃないですか!」
「オピスは卵さえあればいいもんね」
先ほどの疲れ切った様子からうってかわって、オピスは満面の笑みでスプーンを握りしめている。
これはアレだな、テーブルコーデが必要だ。
せめてランチョンマットとか…!
「ブラッドブルのお肉、こんな感じになったのね~」
「キレイですよねぇ、この断面…」
それぞれが席に着き、私は空いていたマオの隣に座る。
いつもよりだいぶ離れた場所。
「この机、むかーし会議とかに使ってたやつ?」
「そう言われればそんな気もしますねぇ」
余裕で1000歳オーバーのマオとオピスが懐かしむくらい昔って、一体いつよ…?
「いいから食おうぜー!」
「そだね!食べよう!いただきます!」
私とマオがそろって手を合わせる。
不思議そうな顔をしたその他の面々も、そのまま同じように手を合わせる。
温泉卵をぷつりと崩し、まずはソースと卵が絡んだローストビーフを…!
「…うっま!!ブラッドブルうま!」
じゅわっとした肉汁、身はしっかり噛み応えがあるけど、噛んでいくと口の中でホロホロと解けていく。
甘めのソースもお肉の味を引き立てて、これは紛れもなくごちそうだ!
野菜のシャキシャキした食感と、ごはんも合う…!
「ハナちゃんこれすっごく美味しいわ~!!」
「これマジでおれがやった肉と米かよ…」
「わたくし、卵はそれ自体が大好物だったのですが、こうしてお肉に絡めても美味しいのですね!!」
三者三様だが、どうやらお口に合ったらしい。
隣のマオを見ると、黙々と、しかし目を輝かせながらお肉を口に運んでいるところを見ると、こちらも美味しくいただいてもらえてるようだ。
「これならまとめて作るのも簡単だし、食堂で出すのも良いと思わない?」
「よっしゃやっぱり明日ブラッドブル狩りに行こうぜ!そんでお前もそのあと厨房で昼飯作りな!」
「んぐっ」
あぶねっ!ご飯粒が変なとこ入った!
むせているとマオがコップに入った麦茶をこちらに寄せてくれる。
「あ、ありがとマオ…げほっ」
ていうかキリ今なんて言った?
狩りの見学はおいといて、厨房で料理?お金とってお客さんに出す料理を素人の私が?
「いやお金とれる料理なんて無理だよ!」
「?十分美味しいではないですか?」
ほっぺたをいっぱいにしながら、オピスが首をかしげる。
「そうよぅ~!同じお金なら、いつもの生焼けお肉とお芋より、こっちの方が良いに決まってるじゃない~」
「マリーちゃんの言うことにも一理ある…けど狩りはダメだ。厨房の手伝いも、ハナちゃんの負担になるならダメ」
いつの間にか間食していたマオが、スプーンを置いて言う。
なんか誰もキリの作った料理についてフォローしてないんだけど…。
「マオ、私も狩り見てみたい。厨房も、ずっと家にいても暇だし、お手伝いくらいならできるかもしれないから、ダメ?」
「狩りは危ないよ?」
「おれが居るんだから大丈夫だろ?」
「キリくんが一緒だから危ないんだよ。きみ、獲物めがけて一直線に行っちゃうでしょう」
あー、なんかわかる。
でも私に魔法は効かないらしいし、物理攻撃もマオから貰った魔石とやらで防げるなだ、そんなに心配しなくても…。
「わたくしが付いて行きましょうか?」
マオに続いて食べ終わったらしいオピスが、ナプキンで口を拭いて手を挙げた。
「オピスの明日の業務は今日と同じ。まだ全部終わってないだろ」
「えええ!もう嫌です!」
絶望的な声を上げて、両手で顔を覆う。
参謀というからにはバリバリ仕事のできそうなオピスが、そんなに嫌がる仕事って一体…。
「オピス、昨日も来なかったけど、なんのお仕事してたの?」
「この城にある、今は使ってないトラップを解除して回ってました…」
「せめてハナちゃんに城内くらいは歩き回れるようにしてあげたいからね」
マオ優しい…!けど部下には容赦ないのね…ていうかオピスが2日間探し回ってまだ見つけられないトラップがあるとか、どんだけ危ないのよこの城は!
「いくら私が解呪の魔法が使えるからって、もう地下牢とか暗渠とか、暗くて人気のない所の探索はイヤですぅぅ!」
「私もそんなとこ行かないけどな…」
姿が見えないと思ってたら、そんなところで仕事をしていたとは…。
「マオが明日狩りに出かけてもいいって言ってくれたら、オピスの大好きな卵でなんか作れるんだけどな~」
そう言ってちらりとマオを見る。
マオは嫌そうな顔をして考えた後、ため息をついて言った。
「じゃあ明日はおれも行く。おれのそばから絶対離れないこと、いいね?」
喜びの声を上げようとしたが、それはキリの拒否の声にかき消されてしまった。
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