肉料理はテンション上がります
「あらボウヤ、食堂は放ってきて良かったの~?」
「うっせえ!ガキ扱いすんなって言ってんだろ!今日の夜は閉める!」
「え!閉めちゃっていいの?」
みんな、ごはん食べられなくて困ったりするんじゃないの?
それともマリーさんが言ってた通り、一食くらい食べなくてもいいのかな。
まぁアクリの町には飲食店もあるらしいし、どうにかするのかしら。
「肉が足りねーんだよ。お前から貰ったソースあったろ?朝飯でアレ食ったやつらが昼も来るわ、話聞いた奴らが来るわで狩っといた分がなくなっちまった」
「いつも閑古鳥なのにねぇ~」
「へー!大盛況で良かったじゃん!」
ステーキ醤油をあげた身として、みんなの口に合ったのはうれしいことだ。
そしたらお肉分けてもらうのも悪かったかな?
いやでももうローストビーフにしちゃったもんね!
「つーわけで、明日狩りに行くぞ、ハナ!」
「えええ!」
「ダメよぅ。パパの許可がないと~」
「いやマリーさん、マオ本人にそのつもりないのに、勝手にパパ呼ばわりはちょっと!」
よしんば私がそう思っていても、マオからしたら心外かもしれないので!
こっそりそう思ってるくらいで十分だろうし、伝える気もない。
そもそも会って間もないアラサーからパパ呼ばわりなんて、恐怖でしかない。
「おれが何~?」
「おおおっおかえり!」
「?ただいま。オピスもいたから連れてきた」
「ハナ様~お腹すきました…!」
おお、なんかオピス久しぶり…。
ぐったりしながらマオに引きずられているのを見ると、だいぶお疲れのようだ。
今日は異世界の食材メインにしておいてよかった。
「さ!揃ったところでごはんにしよう!」
「げっ、こいつもいんのかよ」
「マリーさんのおかげでマオの部屋がきれいになったんだから、文句言わない!」
「ハナ様のごはん…ごはん…!」
「今日はまた一段と賑やかだねぇ」
確かに、こうして皆がごはんに集まると本当に家族みたいだ。
マリーさんを見ると、長い睫毛を瞬かせてウィンクしてくれる。
「今日のごはん、食堂でも使えそうなレシピだから、キリ一緒に手伝ってよ」
「しょーがねぇなぁ」
そう言いつつ、キリは嬉しそうに立ち上がってキッチンへ向かう。
ほとんど出来てて、あとは盛り付けくらいだけど、5人分ともなると中々の重労働だ。
それを何人分も、しかも何人来るか分からない食堂で準備をしているのは、やっぱりすごい。
「今日はコレ!」
そう言ってキリに、タオルに包まれたお肉を差し出す。
当然?でいっぱいのキリに、ここまでの過程を説明した。
「また手間のかかる…。焼いただけでいいじゃねぇか」
「この前のカレーだってしっかり火をいれて美味しかったじゃない」
「牛肉なんか生でもいいくらいだ」
生肉至上主義者なんだから…。
まぁ食べてみればわかるさ!
包みをほどいてまな板に出す。
よしよし、肉汁はいい感じに閉じ込められてるな~!
「じゃあキリはこのお椀にご飯盛って。半分くらいね」
「…おれ昼間のパンがいい」
「大丈夫だって!私もマリーさんも食べたけど、美味しかったから!」
しぶしぶという感じのキリに言い含め、私はお肉を切るぞー!
今日は丼にしたいので、できるだけ薄めに…。
「おぉ…!」
周りはきちんと火が通って、中心に向かうほどきれいなピンク色。
この辺は好みの分かれるところだけど、私はこのくらいの火の通り加減が一番好きだ!
「これ中は生なんじゃねぇの?」
「これは周りだけ焼いて、さっきみたいに保温しておくとこういう感じで、余熱で火が通るんだよ。肉汁も逃げないし、柔らかいし…」
しゃもじを持ったまま、キリが私の手元をのぞき込む。
お肉をすべて切り終えたところで、キリが盛ってくれたご飯の上に、冷蔵庫の野菜室から取り出したサニーレタスをちぎって乗せていく。
「野菜なんかいらねー」
「あった方が美味しいからいるの!緑があると見た目もきれいだし!」
キリにもらった残りの玉ねぎも、スライサーで薄く切ってサニーレタスの上に。
時期的なものか、品種的なものか、この玉ねぎは生でもほとんど辛くない。
「野菜を乗っけたら、その上からさらにお肉を盛り付けて~」
できるだけ高さが出るように、きれいに並べて、頂上の真ん中を少しくぼませる。
そこに事前に作っておいた温泉卵をトロリと乗せて完成!
「は~卵乗ってるとそれだけで2割増しで美味しそうに見える…!」
思いのほか集合が早くてソースは準備できなかったので、市販のものを使おう。
常備はしてないけど、この冷蔵庫ならきっとあるはず!
「…ほんとに優秀だね、うちの冷蔵庫は」
ほらね、扉側の調味料ストックの中にある…!
ローストビーフの上からたらりと回しかけて、ローストビーフ丼の完成だ!
「さ、キリ運んで運んでー!今日はマオの部屋で食べるよ!」
「ここでいいじゃねーか」
「この人数はウチだとキャパオーバーなの!」
両手に丼とスプーンを持って、マオの部屋の大きなテーブルに運ぶ。
いい加減、食器も揃えないとなぁ。
ひとまずお金が工面できるまでは、厨房から借りてもいいか。
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