理想と現実の狭間で揺れています
一人暮らしを始めて、他人に部屋に入られることがあまりなかったので緊張する…!
いやまぁマオもオピスもキリも、ズカズカ入ってきてたんだけど、今回は私がお招きする形で、しかも(見た目)同い年くらいの女性だし!
さらに言えばあのお姫様みたいな部屋からしたら、広さも家具も何一つとして勝ってませんし!?
「私一人で生活してる家だったので、狭いのですが…」
いやこれでも駅チカで三ツ口コンロでお風呂トイレ別の単身者向けの部屋って中々ないんですよ!?
王様や伯爵のお城からしたら物置以下かもだけど!
「狭くないわよぅ~。ケントロンタウンだとこれくらいの広さの家もあるわよ~?」
「恐縮です…」
そう言いながらマリーさんは、物珍し気に辺りを見回している。
寝室や洗面所のドアを開けるたびに、「ここ見てもいいかしら~?」と聞いてくれるのは、なんだかすごく安心する…。
私が玄関で靴を脱いでるときは不思議そうな顔をしていたけど。
ちなみにマリーさんは屋外でも素足なので、特例としてそのままで良しとした。
スリッパでも用意した方がよかったかな?と思ったが、でもあの恐竜みたいな鳥の足に合うスリッパなんて無いよなぁ。
いっそ廊下にも敷物とか絨毯でも敷いた方がいいのだろうか。
「なんだか落ち着く部屋だわ~」
「そうですかね?味気ない感じがしません?」
マリーさんの部屋は、調度品や食器の一つ一つまで、好きなものを集めたって感じが伝わってきた。
それに引き換え、私の部屋は一人暮らしの時に取り急ぎ、安くてそれなりの使い勝手の物を集めただけだ。
「じゃあ今度、一緒に街にお買い物しに行きましょうよ~」
マリーさんが私の手を取って言う。
「わー!行きたいですっ!食器とかも足りなくて…」
「今のままでもすてきな部屋だけど、自分の好きなものを集めるのが、居心地のいいお部屋にするコツよぅ」
この生活がいつまで続くか分からないけれど、幸い今は時間だけはたっぷりある。
自分の好きなものを探して歩き回るのは、どんなに楽しいだろう。
「はっ!でも私、お金がありません…!」
今まで忘れてたのも自分でどうかと思うけど、お財布に入ってる小銭くらいしかないんだった…!
だいたいそのお金もこちらの世界で使えるかどうかも分からないし、この2日間、奇跡的にお金を使わず、物々交換みたいにやってきたけど、これってやばいんじゃ…?
「お金なんて気にしなくていいわよぅ!今日のお菓子とお夕飯のお礼~」
「いやそれはマオの部屋を綺麗にしてもらった分なんで!!」
辺境伯、伯爵と言うからにはそりゃあお金持ちなんだろう。
とはいえ自分の欲しいものは自分で買いたい…。
人に買ってもらうと思うと、なんか値段気にして本当に欲しいものが買えなくなってしまいそうだし、それじゃ本末転倒だ!
「お金はなんとか目途つけるので、お買い物はいつか必ず!」
マリーさんの翼をぎゅっと握りしめてそう誓った。
早速今夜にでもマオに相談してみよう…!
「それはそうとマリーさん、お米って食べられます?」
「備蓄用の食料でしょう~?何度か食べたことはあるけど、粉っぽくて、でもびちゃびちゃしていて…最近は食べてないわねぇ」
そ、それは炊き方の問題では…?
そういえば午前中のうちに、パンと一緒にお米も焚いておいたんだった!
マリーさんをソファに座らせ、キッチンへ移動する。
炊飯器の蓋を開けると、ふわりと甘いお米の香りが立ち上る。
ふっくらつやつや、とはこのことを言うのだろう。
しゃもじを差し入れて底からひっくり返すようにかき混ぜる。
「これなら食べられそうだけどなぁ」
「あら?これお米?私が食べたのと全然違うわ~」
いつの間にか背後に立っていたマリーさんが、驚いた声を上げる。
やっぱりマリーさんがいつか食べたというお米は、炊き方に失敗してるんだ…。
「マリーさん、夜ごはんまでまだ時間があるんですけど、お腹空いてます?」
「そうねぇ~。ハナちゃんが作ってくれたケーキは美味しかったけれど、まだまだ入るわよ~。ハルピュイアはこう見えて大食いなの~」
翼で口元を抑え、恥ずかしそうに笑う。
ナイスバディで大食いとは羨ましい…!
「ちょっとだけお米試食しません?」
「そう…ね。このお米なら食べてみてもいいかも…」
そうと決まればおやつと言うにはやや重いが、おにぎりでも作ってみよう。
お米のおいしさと言えばおにぎりよね!
夜ごはんに使うには炊いた量が少ないし、余ったおにぎりは明日の朝ごはんにしてもいいし!
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