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なんということでしょう!を目の当たりにしました

「失礼しまーす…」


とは言ってみたものの、ほぼ自分の部屋に入るようなものだ。

マオがいないときは、基本的に自分の家から出ない様にはしているけれど、呼ばれれば出ていくし、マオに至っては私の家に勝手に入ってくる。

まぁ家ごと居候させてもらっていると思えば、文句もないけれど。


「ここが魔王様のお部屋ね~」

「なんかマリーさんの部屋を見た後だと、よりボロく感じます…」


朝、言っていた通り、マオは不在のようだ。

私はともかく、マリーさんは臣下?にあたる魔族なのに、ほいほいと部屋に入れて本当によかったのだろうか?

でもマリーさんにもマオからOKが出ているらしいし…。


「確かに年期入ってる感じするわよね~」

「このベッドなんてこんなに大きいのに、寝ないから要らないとか言うんですよ!?」

「貰っちゃったら~?」

「そもそも玄関に入らないし、入ったとしてもリビング埋まります!」


ああ悲しき1LDK…。


「じゃ、ハナちゃんのお部屋も見たいし~さっさと片付けちゃおう~!」

「お願いします!」


マリーさんはそう言うと、大きく羽を羽ばたかせた。

それによる物理的な(?)風だけではない。

さきほどマリーさんの部屋で見た、白い風が部屋の隅々にまで行きわたる気配がする。


そういえば魔法って杖使ったり、呪文とか唱えなくていいんだ。

まあ何もかもイメージでしか魔法の知識はないんだけれども!


風はだんだん激しくなり、ひと際強く吹いた瞬間、私は思わず目をつぶった。


「ふぅ。終わったわよ~」

「わーー!!わーーー!!す、すごい…っ!!」


思わず飛び跳ねる。

同じ部屋とは思えないほど、なんていうか、彩度と明度が上がっている。


石造りの壁は深夜のテレビでやってる高圧洗浄機のビフォーアフターみたいになってるし、天井の煤も、隅の蜘蛛の巣も、床の傷さえもなくなっている。

本棚は鮮やかな背表紙がよく見えてきらびやかだし、床の絨毯もふかふか…!

そしてなにより…。


「はぁ~…ベッドがきれいになってる…新品みたい…!」


滲み一つない真っ白なシーツ。

体を預けるのがもったいないほどふかふかで、埃のひとつも立ちそうにない。


念願の大きなテーブルも、顔が映るくらいピカピカだ。


「ていうか、なんか明るくなりました?」

「カーテンも窓も、埃が積もってる感じだったものね~」


そう言われれば、マオの部屋の窓には、いつも重たそうなカーテンがかかっていたし、窓を開けているのを見たこともなかった。


「…開けちゃおっかな」


とはいえ天井の高さからして、そこにぶら下がっているカーテンも長く、半端じゃない重さだ。

カーテンというよりは、体育館のステージの幕、と言った方がしっくりくるかもしれない。


両手を使って片方ずつカーテンを開く。


「おー!いい景色!」


景色は私の部屋から見えるものとそう変わらないが、窓の大きさが違う分、スケールも桁違いだ。


「でもなんか…魔王様の部屋っぽくない…かなぁ?」


これもあくまでイメージですが、なんか前の方が魔王城っぽかったような気も…?


「魔王様ってぇ、なんかイメージ作りに固執してる気がするのよねぇ」

「イメージ作り…ですか?」

「そ~。あのマオと魔王様って使い分けも、魔王様っぽくない本来の姿を隠してるからだと思わない~?」


やっぱり全然ばれてるんじゃん!


「あれって…みんな気づいてますよね?」

「気付いてるんじゃないかしら~?最近はホント稀にしか魔王様の姿じゃないもの~」


魔王っぽい姿、魔王っぽい部屋。

魔王としての雰囲気と言うか、威厳が無いと、周りを従えられないと思ってるんだろうか?

でも私が会った人たち限定かもしれないけど、姿形でマオに仕えてるわけじゃないと思うんだけどな。


魔王っぽい部屋は、生来の無頓着さなのか、わざと作ってるのかは微妙なところだ…。

お掃除に簡単にOKを出すあたり、これに関しては前者のような気がする。


「でもなにが魔王様っぽいかなんて、誰が決めるんですかね?」

「だからそれが魔王様自身のイメージなんじゃない~?」


マリーさんは、ぐぐっと羽を伸ばして言った。


「さすがにこれだけ広い部屋だと魔力も使うわね~。なーんかわけわかんない呪文のかかってるアーティファクトもあったし、少し疲れたわ~」


そういうものなのか…未だにどんな魔法にどのくらい魔力を使うとか、よくわからないんだよなあ。


「あっ、もしよかったら、マリーさんも夕飯一緒に食べませんか?マオも夜には帰るって言ってたし、さっきキリから貰ったブラッドブルっていう魔獣のお肉もありますから」


マオの机に置いたままのお肉を思い出して言う。

マリーさんは魔力回復なんて気にせず、料理してればいいって言ってくれたけど、やはりこの世界ではそこも重要なポイントだと思う。


「あら~!お菓子に続いてお夕飯までいいのかしら?」

「ぜひぜひ!お口に合うかわからないんですけど…」


マリーさんは嬉しそうに翼で私の肩を抱き、回れ右して言った。

背中に当たるやんごとなき感触もまたいいものですね…!


「じゃあ~ハナちゃんのお部屋で待たせてもらおうかしら~」


せめて洗濯物だけでも取り込んで来ればよかったかなぁ。




お読みいただきありがとうございます。

誤字脱字、ご感想などありましたら、教えていただけると嬉しいです!

お気に入りに登録してくださった方々、本当にありがとうございます(;▽;)

もしよろしければ☆での評価も頂ければ励みになります!( ˶˙ᵕ˙˶ )


マリーさん、お気に入りのキャラクターです。

ふわふわボディは正義!

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