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「はぁ~もう食えねぇ!」


お鍋も炊飯器もすっかり空になって、まだおかわりコールが鳴りやまなかったらどうしようかと思っていたところで、最後まで粘っていたキリがテーブルに突っ伏した。

大食い選手権でもないんだから、そんなに限界まで食べなくてもいいのに。


「おれもう今日はここで寝る~」

「え、そんな場所ないよ!」

「ハナちゃんが困ってるでしょ。キリくん明日の朝食の仕込みもあるんだから帰りなよ」

「今日の夕食はいつにもまして質素だったと、給仕が愚痴っていましたよ」


まぁお腹いっぱいになってもう寝たい気持ちもわかるよ、うん。

私以外からも集中砲火でちょっとかわいそうだけど…。


「だってアイツら美味いの一言もないんだぜ?だいたい食堂に来るのなんて一握りだし、他のやつらにも給仕が持ってってるけど、食ってんのか食ってねーのかも分かんねぇしよぉ」

「へー食堂もあるんだ」

「美味いの一言がないのは、貴方の料理が単純に美味しくないからでは…?」


オピスちょっとストップ!辛辣すぎ!

そもそもこの世界って、あんまり食事に興味なさそうな人?魔族?多いイメージなんだよね…魔力さえ摂れればそれでよし!みたいな。

私的には食事はもはや娯楽の一つと言ってもいいくらいなんだけど、この世界では人間が住んでるところでもそうなのかな。


「あー、ハナちゃん、なんか誤解してそうだから言っておくけど、魔族でもグルメはいてね。グルメとまでいかなくても、城下町には結構美味い料理屋もあるらしいし…」


自主的にお皿洗いを始めていたマオが言う。


「えっ!ご飯屋さんあるの!?行きたい!」


ソファから飛び上がる勢いで言う。

異世界に来たからには城下町も見てみたいし、こっちの世界の料理もぜひ食べてみたい…!

キリの料理はほら、素材の味って感じだから、調味料とか炭水化物とか、その他のお肉の使い方も気になるじゃん!?


「キリも勉強してくればいいのでは?貴方もほとんど城下町に降りたことはないでしょう」

「キリくんはまだここで働き始めて日も浅いし、他のみんなの生活を知るのもいいかもしれないね。キリくんがいればハナちゃんも大丈夫だろうし」


オピスとマオが続けて言う。

勝手に、城下町に住んでる魔族がこのお城でお勤めしてるのかと思ってたけど、どうやら違うみたい。

そう考えたら見てくれはこんなんでも、15歳で働いてるんだから、本人なりに充分頑張ってるんだよなあ。


今日一緒にキッチンに立った感じだと、料理作るのは好きそうなんだよね~。

私は一人暮らしに慣れちゃってたし、美味しいもの食べるのも大好きだから苦にならなかったけど、そりゃ食べてくれる人から何のアクションもなければ、楽しくもなんともないよなあ。


「じゃあさ!私は自分の世界の料理教えるから、キリはこっちの世界の食材の事とか教えてよ!そしたらキリは料理のバリエーション増えるかもだし、私は魔力回復できるごはん作れるし、Win-Winじゃない?」


人間やっぱり大事なのは衣食住だと思うんだよね。

その中でも食は一日三度とるものだし、生命に直結してるんだし。

私が作ったものをお世辞じゃなく美味しいと思ってくれてるなら、味覚のベクトルは私と変わらないと思うから、幸い調味料とかも無尽蔵みたいだし、うちから持って行ってくれて構わないから!


「やっぱり作るなら美味しく食べてもらいたいじゃん?」


そう笑うと、キッチンで食器を洗い終わったらしいマオが、頬を掻きながら言う。


「キリくんは仕事だけど、ハナちゃんは別に無理して作らなくていいんだよ?」

「わたくしは毎日でも食べたいです」


ソファに戻る途中で、マオはオピスの頭を軽く叩いて窘めた。


「まぁおれも毎回ごちそうになってて言うのもどうかと思うんだけど、頑張りすぎてない?大丈夫?」

「料理するのは楽しいし大丈夫だよ。美味しいって言われると作り甲斐もあるし、私もうれしいし、それにずっとここに閉じこもってても暇だしね~」


普段仕事していて、週末だけ引きこもりならまだしも、毎日毎日自宅にいるのはきつすぎる…!しかもせっかく異世界に来ているというのに!

帰る手段がない以上、ここはもう開き直ってこの世界にいるうちは、こっちでの生活を楽しもうと思う。


「…お前が教えたいっていうなら、教わってやってもいいけど?」


しばらく何かを考えるように黙っていたキリが口を開いた。


「やった!じゃあとりあえず明日にでも、精米したお米と小麦粉持ってきて!」

「おいなんか上手く使おうとしてねぇか、こいつ」


いやいや何を仰いますやら!互助会みたいなもんですよ!


「とりあえずキリにはコレをあげよう!」


キッチンへ移動し、調味料の棚を漁る。

どういう仕組みかは相変わらず不明だけど、ここも冷蔵庫も、ほしいと思ったものが手前にきてるんだよね…便利すぎる!


「…なんだこの黒いの」


キリ、オピス、マオまでもがテーブルに並べた小瓶を興味深げに見ている。


「これお肉に掛けるとすっごい美味しいんだよー!ステーキ醤油って言って、メインは大豆から作ったしょっぱい調味料なんだけど、そこに他の食材の風味がついてるから、同じお肉でも味が変わるってわけ!」


我が物顔で説明したけど、これも日本の食品メーカーの力です!

大根おろし、たまねぎ、ガーリックと3種類あるから、とりあえずキリには調味料を使って、料理を美味しくしてもらおう!

改めて、かけるだけ、和えるだけで、味付けの決まるものが溢れてたのは素晴らしいことだったんだなあとしみじみ…。


「私のいた世界では、普通は牛肉を焼くときに使うんだけど、他のお肉でも美味しく使えるんじゃないかな?しょっぱいから明日にでも味見してみて、ちょっとずつ使ってね。足りなくなったらいつでも言って」


明日から毎日一緒にお料理、ってわけにはいかないし、とりあえずここはコレで何卒!


お読みいただきありがとうございます。

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