続・大人も子供も大好きなアレです
「というわけで明日はマリーさんのところに行くから、食材調達はまた今度ね。マオにも行っていいか聞いておくから。キリも明日一緒にマリーさんところ行く?」
「げっ!ヤダ!おれアイツ嫌い!」
あの天使ちゃんが嫌いだと!?
確かにキリとは見た目正反対だし、マリーさんは何となくおっとりしてそうだったし、気が合わないっていうのもそんなに不思議じゃないけど…。
相当な嫌がり方が気になるところですね…!
「じゃあ1人で行くからいいもん。マオもマリーさんなら大丈夫って言ってたし」
「お前油断すんなよ…?」
ちょっとそこまで言われると怖くなってくるじゃない!
なんでそこまで嫌がるのか、理由を聞こうとした瞬間、勢いよくリビングのドアが開かれた。
「ハナ様ーーー!!魔王様とだけお昼ごはん食べたなんてズルいです!!!」
「わぁ!オピス、お疲れさま〜」
「わたくし夜は絶対にハナ様と一緒にごはん食べますよ!仕事は死ぬ気で終わらせてきました!」
そう言って私の両手を握ってブンブンと振る。
マオからどれほどの仕事を振られたのかは分からないが、朝より多少ボロっとしている雰囲気から、相当がんばって片付けたのだと見える。
「まだ夜ごはんできてないんだ。今日はキリも一緒に食べるんだって」
「おや、ハナ様に御無礼を働いていないでしょうね?」
「んだと!?」
「キリ、食材分けてくれたんだよ!今日の夜ごはんも手伝ってくれたし!」
肉体派VS頭脳派の戦いとかやめてくれ!しかもこの狭いキッチンで!!
必死で間に入りフォローする。
「もうマオ待つだけだし、最後の仕上げしちゃお!ね!」
「これで完成じゃねぇの?」
「これだけだとほとんど味しないから…コレ!」
これさえ使えば絶対失敗しない、日本の食品メーカーの粋!!カレールウ!!!
みんなの辛さ耐性がどれくらいか分からないから、とりあえず甘口と中辛をブレンドしてみよう。
昔なんかの番組で、違うメーカーのルウを2種類使うと美味しいと聞いて、私はずっとこの方法で作っている。
半分ずつ、パキパキと割って鍋に入れる。
ヘラでお鍋の中をかき混ぜると、嗅ぎなれた匂いがふわっと漂う。
「これは…スパイスですか?それも何種類も」
「スパイスと塩とか小麦粉、油とか入ってるみたいよ。野菜とお肉を炒めて煮込んで、これを入れたら出来上がり!」
「すげぇいいにおいする…!」
2人して鍋を覗き込む。
誰が作っても簡単に美味しくできちゃうんだから不思議だよねぇ。
焦げ付かないようにかき混ぜながらしばし煮込んだら完成!
あとはもうそろそろご飯も炊けるし、これだけじゃ寂しいから、サラダでも作ってOKかな。
今日は結構、異世界の食材使ったから効率よく魔力がとれる出来なんじゃないだろうか!
そういえばマオって何時ごろ来るんだろう?
お風呂入ってたりしたら、何だかんだでちょっと早めだけど夜ごはんにはいい時間かも…。
「わ〜なんかスッゴイいいにおいする〜」
「マオ、おかえり。キリと同じこと言ってる」
やっぱり魔族にもこの匂いは効果てきめんなのね!
そういえば昔は帰ってきて、玄関あけてカレーの匂いがしたらすごく嬉しかったっけ。
「あらら、皆さんお揃いなのね」
「おせーよオッサン!もう食っちまうとこだったぜ!」
「今できたばっかりじゃない…」
興奮気味に言うキリに苦笑する。
相変わらずお皿はバラバラだけど、なんとか揃えて配膳の準備だ!
サラダはレタスときゅうりとトマトの簡単なもの。
さて、この狭い部屋でどうやって4人を座らせるか…と悩んでいたら、マオは勝手にソファへ、オピスはこれまた勝手にテーブルに着席した。
しかもちゃっかり自分の分のカレーライスは確保している。
このままソファにキリを座らせると、ソファごと壊れるかもしれない…!
キリをオピスの向かいに座らせ、私はソファへ移動する。
せ、せまい…!これは明日なんとしてもマリーさんにお願いして、マオの部屋を使えるようにしてもらわなくては…!!
「ハナちゃん、これなに?おいしそう…」
「カレーライスだよ〜。私のいた世界では、大人も子供も大好きなやつ!今日はキリにも手伝ってもらったから、魔力いっぱいとれるといいんだけど…」
いただきます、と呟いて、マオがスプーンを口に運ぶ。
「ん!辛くて美味い!」
「辛すぎない?」
「いや、丁度いいよ」
ちらりとテーブルを見ると、オピスとキリの2人は無言でかき込んでいて、どうやらこちらも口に合ったようだ。
「ハナ!おかわり!」
「早!」
私が席を立つのと同時に、マオもおずおずと空の食器を差し出す。
オピスももりもり食べてもう無くなりそうな勢いだし、これは今日お鍋空っぽになるな…多めにご飯も炊いておいてよかった。
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