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デリカシー以前の問題です


夜ごはんはカレーライスとサラダにしよう。

メニューが決まったところで洗面所とお風呂場へ。

こちらも以前と変わっているところは見あたらないが、切れかけていたはずの柔軟剤や洗剤もたっぷり補充されている。


洗濯機もきちんと動くし、これで着るものも大丈夫!浴室はお湯も出るし、もしかしてこの部屋、一生引きこもっても大丈夫なのでは…?

外部からの娯楽と言う意味では、一切何も入って来ませんが!


兎に角さっぱりしたい。よく考えたら昨日の夜から丸一日お風呂に入っていなかったんだ。誰にも何も言われなかったけど、匂ってなかった…よね!?

服をつまんですんすんと匂いを嗅いでみる。自分じゃ分からん…!まぁ緊急事態だったししょうがないよね!ということにしてください!


服を脱ごうとして気づく。

この部屋って今、玄関開けっ放しでめちゃめちゃ不用心じゃない?でも一応お風呂場にも洗面所の入り口にも鍵がついてるし…いやしかし、魔族なら壊そうと思えば簡単に壊せる感じ?

キリあたりは、鍵がかかっていることにすら気付かず、壊して入ってきそうだ。


「マオは部屋にいないって言ってたし、私もこの部屋から出るのちょっと怖いし、どうしよう…」


少し考えて、古典的な手段だが張り紙を作ることにした。


「入浴中!開けないで!…っと」


何が悲しくて一人暮らしの家でこんなものを掲げないといけないのか。

洗面所の外に上を貼る。ドアを閉めて鍵をかけ、服を脱いで洗濯機へIN!

干す場所は洗ってから考えよう。部屋干ししても臭わないらしい洗剤なので大丈夫でしょう。今までも平日は夜に回すことがほとんどだったし…。


湯船にお湯をためながら体を洗う。普段はシャワーで済ませることが多いけど、今日位は時間もあるしゆっくり浸かりたい。


「はぁ…気持ちいいー!」


湯船につかって思いっきり体を伸ばす。そんなに広いお風呂ではないけれど、ユニットバスにしなくてほんとによかった…!


そういえばこの城にも浴場はあるのかなぁ。

眠る必要もない魔族にとって、ゆっくりお風呂に入ると言う概念があるようには思えないけど、でも、マオもオピスも、マリーさんもキリも、城内を歩いている魔族たちさえ、不潔な感じはしなかった。


こんなに大きいお城のお風呂、もしあればさぞや広々としているだろう。

あっでも、あったとしてもずっと使っていなくて朽ち果てている可能性も…?


鼻の下までお湯につかって、ぶくぶくと泡立てる。

異世界に召喚されて半日と少し。向こうでは考えられれないほどの密度とスピードで、時間が過ぎていく。

我ながら恐ろしく順応していると思う。


でも、絶対的な力の差があって、向こうに悪意がなければ、反抗する必要もないと思うのだ。

ことあるごとに「大丈夫?」と心配そうに私を見るマオの顔が浮かんで、思わず笑みがこぼれた。


「おおおーい!ハナ!ここかー!?」

「ぶっ」


いや、うすうす気づいてはいたんだよね。遠くから何か叫びながら、地鳴りのような足音が近づいてくるなって…!

玄関まで来たらしいその声の持ち主は、この家のすべてのドアを勢いよく開けているようだ。そしてこの足音、多分土足だな!どいつもこいつも!


夜ごはんを食べに来るにはどう考えても早すぎると思うけど…でも、午前中のキリの嬉しそうな顔を思い出すと、早く来るのも当然のような気もする。


どちらにせよ、念のために張り紙をしておいてよかった。

キリには悪いけど少し待っててもらおう。


「キリ、今お風呂入ってるから…!」

「おっ!いた!」


声を上げる前に、洗面台の扉がバキッと短い悲鳴を上げた。そのままの勢いで浴室の扉がブチ開けられる。


「わーーーっ!」

「なんだ風呂かよ。メシの準備あるなら手伝う…」

「いいから閉めろバカ!」

「はァ!?バカって言う方がバカ…!」

「うるっさい!!」


投げつけた洗面器が、いい音を立ててキリの額にクリーンヒットした。

大して痛くはなさそうだが、私の剣幕に押されたらしく、それ以上何も言わずに浴室のドアを閉めた。いやなんか取っ手がひん曲がってるんですけど!?

ていうか咄嗟に体育座り&バーリア!のポーズで隠したけど、見えてない!?見えてないよね!?見えてたらもっとなんか言うよね!?


「お前なァ、サキュバスの奴ら見てみろよ。アイツらほぼ全裸だぜ?」

「魔族の視点でモノを語るな!」

「大体、お前の貧相なモン見たってどうしようも…」

「それ以上言ったらあんた夜ごはん抜きだから」

「!?」


こうなってはゆっくりお風呂にも浸かっている場合ではない。そっと湯船から出て、浴室のドアを少しだけ開けて外を確認する。どうやらリビングかどこかに移動したみたいだ。

バスタオルで手早く体を拭き、服を着る。トレーナーとジョグパンツ。これでもまだ魔族たちからは浮きそうだけど、スーツよりマシだ…と思う。


「なー!これどうなってんの?なんで冷てぇの?」


魔族って何でみんな勝手に他人の家の冷蔵庫開けるの?

冷蔵庫も冷凍庫も野菜室も全開にして、無邪気に目を輝かせるキリに、濡れた頭を抱えたのだった。




お読みいただきありがとうございます。

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