お勉強タイムが始まりました
ハナ様、まずここが魔王様の統治する魔族領、その中心の魔王城というのは、もうご存知ですね?
この世界は大きく分けて、人間と魔族の2つの種族によって棲み分けがされています。お互いの行き来は多少ありますが、永住したりしている者はほとんどいません。その間に魔獣や、少数種族がいます。
まず魔族領のお話をしましょう。
わたくしたちのいる魔王城を中心に、城下町が築かれています。そうですね、ハナ様の部屋から見える、あの辺りまでです。
城下町は矢の的のように、大まかに分けて三重になっているのです。塀などはありませんが…。
一番内側がこの魔王城ですね。敷地は広いですし、危ない場所もありますから、ハナ様おひとりで出歩くのは厳禁です!今は使っていませんが、忘れられたトラップなどもありますので…。
城で働いている者は当然、魔族ですが、基本的には皆さん魔王様には従順ですから、そういう意味での危険はないでしょう、たぶん。
二番目…魔王城のすぐ隣がケントロン・タウンと呼ばれている地域です。ここには気性の穏やかで魔力の弱い魔族たちが住んでいます。魔王様の直接の庇護を受けていると言っても過言ではありません。
ここまで魔獣が侵入することはまずありませんし、何かあっても魔王様を含めた我々が近くにいますから、すぐに終結させることができます。
三番目がアクリの街。産業や工業が盛んです。一番多くの魔族が住んでいるのもこの街です。それなりに自立した生活のできる魔族たちですし、お互いに商売もしていますから、賑やかなところですよ。治安の悪い場所もありますが…そこにさえ近寄らなければ大丈夫でしょう。
それより外は、ほとんど森と山と、その先は荒地です。魔獣も出ます。城下町の作りとは正反対で、魔獣は魔王城に近いところに棲息しているものほど凶暴で危険です。人間の領地に近いほど、弱くなるようです。恐らく本能的に魔力の高い魔族を食べようとしているのでしょう。
ここには辺境伯と呼ばれる、魔王様直属の魔族たちが点在して小さな城を構えています。彼らの魔力は恐ろしく強大です。魔獣たちは城下町に入る前に、まず辺境伯たちの所へ向かい、駆除されます。つまり彼らは…言い方は悪いですが、エサであり、砦なのです。
まぁその、大変に強い方々だけあって、皆さん一癖も二癖もあるのですが…。
詳しくは言えませんが、魔王様がなんとかしてくれているようです。まぁハナ様が近付くことはないので、心配はありませんよ。
さて、お次は人間領のお話です。
ハナ様?大丈夫ですか?寝ていませんか?
人間領は辺境伯たちのいる荒地のはるか先、イリシオという深い谷を越えた更に先にあります。
わたくしたちから見れば、人間はとても弱く脆い存在です。はるか昔、魔王様によって魔族が統治されていなかった頃、魔族も魔獣も、人間を侵す脅威でした。
魔王様が魔族の頂点に立ったとき、魔王様は人間とも交流を図ろうとしたのです。
初めは敵同士のようなものでしたから、それはそれは苦労なさったと聞いています。わたくしの生まれるずっと前の話ですから、ほとんど伝説に近いような形でしか残っていない記録ですが…。
現在は、人間領を魔獣の群れがが襲ったり、天災があったときなど、人間たちで対処できない場合に、こちらから魔族を派遣して手助けを行っています。
魔族が人間を襲うことはありません。魔族同士の殺し合いと同じタブーです。…とはいえ魔族の中には血気盛んというか、闘争本能の塊のような者も多いですから、そのあたりは魔王様の采配で派遣される者が決まっています。
という訳で、人間と魔族とは決して諍いあっているわのでは無いのですよ。仲良しこよしという訳には行きませんが。
……勇者?
あぁ、奴らはカルト教団のようなものです。ここ200年ほどは活動している記録はないようです。
はるか昔に、それこそ神話のような昔の出来事…魔族が人間を脅かしていたことを恨み抜いて、未だに打倒魔王を掲げている者たちです。
ハナ様、わたくしは、わたくしたちは、過去に人間を襲っていたことを、正当化するつもりはありません。
しかし、魔王様は今に至るまで、充分すぎるほど贖罪を繰り返してきました。そしてそれはこれからも続くのでしょう。
ああ見えて、お優しい方なのです。
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もはや一人称視点でで語りまくっております…