召喚されたらしいです
体の下の、ごつごつとして湿った感触を確かめる。さっきまで居心地のいい家で華金を楽しむべく、先にメイク落としてお風呂入ってさっぱりしちゃお!と思っていたのに…。
そうだ、浴室のドアを開けたら電気を付けなくても薄ら見えるはずの室内が真っ暗で、電球切れたのか?と思って浴室のヘリに足かけたところで、なんかヌルヌルしたもので滑って転んで…で、ここどこ?なんで石畳の上に座り込んでんの?あちゃーみたいな顔してるこの人誰?
「…オピス、説明せよ」
私の真後ろから声がして振り向く。
映画やなんかでしか見た事のない、玉座?っていうの?短い階段の上の広場に、背の高く装飾のゴテゴテ付いた立派な椅子があり、そこに頬杖を付いた男が座っている。
あの人なんかデカくない?遠近感おかしくない?というか角生えてない?
自慢の視力1.5の両目でよくよく見ると、真ん中から分けられた艶のある黒い長髪、均整の取れた体躯、装飾のついた肩当と長いマントと動き辛そうな洋服、顔は黒いベールのようなものが掛かっていて見えないが…
「めっちゃ角生えてるやん…!」
思わず悲鳴に近い声で呟いた。え、何アレコスプレ?ハロウィン?もう終わってない??
顔中に?を貼り付けていただろう私の腕を取って、オピスと呼ばれた人が、私を立たせた。
こちらはこちらで、深い緑色をした長い前髪で、さらに両目を皮の眼帯で覆っている。おまけに肌は青白く、よく見れば頬に鱗のような模様がある。やっぱりハロウィンか〜私には縁のないイベントだったけど、最近は特殊メイクもすごいって言うし…前見えないけどこの人大丈夫?
「こちらは異世界の神子である!必ずや魔族に輝かしい未来をもたらすでしょう!」
「はぁ!?!?」
当然吹き出した素っ頓狂な疑問の声は、片手で難なく塞がれた。この人手ぇ冷た!冷え性すぎ!まだ若そうなのにお姉さん心配しちゃう!
「なんか神子っぽいこと言ってください」
小声で耳打ちされた一言に、さらに声が出そうになるが、残念ながら口は塞がれている。目だけで周りを見る。
薄暗いのと、余裕がなくて視界に入らなかった周りの様子が目に入る。このハロウィン会場、本格的すぎない?そして規模大きすぎない?視界に入る人達は、背中から羽を生やしていたり、体の一部や大部分が動物だったり、あるべきところにあるべき物が付いていなかったり、反対に多すぎたり、あっ骸骨もいる!カタカタ動いてるけどアレ人形なのかな〜。
ぱっと口を塞いでいた手が外される。
OK、ここはハロウィン会場ね、そして私は記憶にないしどうやって来たのか分からないけど、なんかこう、ゲスト的な感じで呼ばれたのね!?縁もゆかりもない地味OLですけど!私だけスーツですけど!
「……盛り上がっていこー!」
片手を上げて精一杯の大声を出す。薄暗い岩の壁にこだまして消えた。えっ…やばい外した…!と焦って追加でなにか話そうとした瞬間、地鳴りに近い歓声が上がった。
初めての執筆と投稿です。
ストックがある内は毎日更新していきます!
拙い文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。
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