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第4話 ガドランドの悪い癖

 さて、場所は変わって、ガドランドの家。

 街の中でも人通りの少ない通りにある大きい家。

 ガドランドがまだ小さいクリスと住み始めた家に、ウェイン、ロレンツともう一人の五人が住んでいる。増改築を重ねているため、大きくいびつな家となっていた。


 そこにアマンダ、ガドランド、ウェイン、ロレンツの四人が、リビングに集まっていた。

 中央に大きな一枚板のテーブル。その周りには五脚の椅子が並べられていた。

 テーブルの上にはいれたての紅茶が並べら、心地よい香りがアマンダを落ち着かせていた。


「落ち着きましたか? オレはガドランド・ラッセル。冒険者をやっていて、一応、こいつらのオレの弟子みたいなものです。こいつが元騎士のウェイン。ちょっと堅くて融通が利かないが真面目な奴だ」


 ガドランドの言葉に、紺色の髪を綺麗に切りそろえ、彫りの深い真面目そうな男ウェインが、席を立てたアマンダに一礼した。


「ウェイン・サリバンです」

「アマンダです。助けていただき、ありがとうございます」


 ウェインの堅い礼に気圧されるようにアマンダも立ち上がり、頭を下げた。


「それで、こっちの悪ガキそうな魔法使いがロレンツだ。ちょっと口が悪いが、根が良い奴なので気にしないでください」


 けなされているのか褒められているのか分からないガドランドの言葉に、黒と緑のツートンの髪を掻きながら、席に座ったまま口を開いた。


「ロレンツ・ハーバインだ。よろしくな」

「よろしくお願いします」

「それで、今、奥に引っ込んでいるのが回復術士のクリスだ」


 アマンダは、あの中性的で無表情な男性を思い出していた。

 クリスが入れていたミルクティーを一口飲んで、ガドランドは口を開いた。


「それで、なんであなたは、あんな大人数に追い回されていたんですか」

「わからないのです。……私、酒場の歌い手をしているのですが……仕事が終わって、帰ろうとすると……男たちが追いかけてきて……」


 アマンダはその美しい赤い髪をはらりと落としながら、下を向いてつぶやく。


「怖かったです」

「それは怖かったでしょう。あのあたりの飲み屋街は、ガラの悪い連中もいますからね」

「助けていただいて、本当にありがとうございます」


 切れ長の美しい瞳を潤ませながら、上目遣いにガドランドにお礼を言う。

 その何とも言えない色気にガドランドは思わず、ドキッとする。


「いえいえ。たまたま、あそこに居合わせただけですから、お礼を言われるようなことはしていませんよ」

「強くて、お優しい上に……謙虚なのですね」


 歌手をしているというだけあって、艶やかな声で褒められる。

 その言葉に顔を赤くしながら照れるガドランドを見て、弟子の二人は同じこと思った。


 悪い癖が出た。


 ガドランドには弟子たちが心配する二つの悪い癖がある。

 その一つが、女性に惚れやすい。

 その容姿のせいなのか、ガドランドはモテない。大体の女性は、一目見て悲鳴を上げて逃げ出す。今まで、モテたことがない。見事にモテたことがない。ええ、しつこく言いますが、ガドランドはモテない!

 そのため、ガドランドには女性に対する免疫がない。少し優しい言葉をかけられると、すぐに好きになってしまう。成人女性であればストライクゾーンは見事に広い。それがアマンダのように酒場の花のような美人であればイチコロである。

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― 新着の感想 ―
[一言] イケメン弟子はさておき、お金貸して美女ににげられるというのは現実社会ではよくあることで、、このあたりの現実感とファンタジー感をどう調和させるのか興味があり、読ませていただきました。ちょっと変…
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