第21話 冒険前夜
「実はもう一つお話ししなければならないことがございます」
アマンダは少し言い出しにくそうだった。
「まだ、何か隠していることがあるのか? お前は」
ロレンツが苦々しそうに文句を吐く。
「ロレンツ、お前は落ち着いて人の話を聞け。悪い癖だぞ。それで、なんでしょう。隠し事はもう、なしにしましょう」
ガドランドはアマンダが話しやすいように、なるべく優しい口調で尋ねる。
「四日後の満月の夜までにフリートの秘宝を持ってこないと、あの子達を返してくれないと言うのです」
四日後!
ガドランドたちは調査のために、考えていた日数は約一週間。それのおよそ半分の時間でフリートの秘宝を見つけて戻って来なければならない。
「なんで、四日後なんだ? 転売するつもりなのか? そもそも、なんでエルフを買い取る必要があったんだ?」
「詳しくは教えてくれませんでした。ただ、なんとなく……このチャンスを逃すと二度とあの子達に会えないような気がして……どうかお願いします」
時間勝負か。ガドランドは即座に頭を切り替えた。最速で目的を果たすために。
「ロレンツ、ウェイン予定変更だ。保安官のところは帰ってからでいい。準備優先だ。明日の朝一で出発するぞ! ルカは予定通り情報集め、その前にアマンダさんの金を全部しまっておけ! 朝には帰ってこいよ。移動中に寝てていいから。クリスは買い出し、アマンダさんも手伝ってもらえますね」
ガドランドはすぐに修正した段取りを組む。
その勢いに気圧されたアマンダは、なんとか返事をする。
「ア、アマンダで結構です。クリスさん、よろしくお願いします」
クリスとアマンダは買い出し、ウェインは馬車の手配、ロレンツは家の倉庫からダンジョン探索用の装備を引っ張り出す。ルカはアマンダの金、約八千万マルをルカしかわからない金庫にしまうと、情報収集に出かけた。
準備を始めるには遅い時間。
急がなくては店が閉まってしまう。
みんな慌ただしく動き始めたあと、ガドランドは一人で自室にこもり、フリートダンジョンのマップとにらめっこする。
ルカに渡した複写ではなく、オリジナルのマップ。
今回のダンジョンはフリート火山の中にあるため、広さに限りがあるはずだ。そしてこれまでのダンジョンの作りから、イ・フリート本人の性格、癖を推測する。
単純そうに見えて、人の盲点や思い込みを利用した、人を食ったような性格。
例えば、簡単な落とし穴があり、普通なら引っかかるような奴はいないのだが↓、の階層へ行くにはそこを降りなければならなかったりする。
そして上に行くためには一度下がる必要があったり、螺旋状の階段で方向を狂わしたりと、マッピングに悩むような工夫が随所に盛り込まれている。
また、それだけでなく、フリートによって生み出され、改造されたモンスターが随所に現れる。
ガドランドは自分がイ・フリート本人だと仮定して、ダンジョンを再構築する。
初見のダンジョンには使えないが、ある程度の情報があればそこから高確率でダンジョンの構造、罠、モンスターの配置を予測する。長年、戦場やダンジョンでつちかった経験を持つガドランドの特技の一つ。
『予知する守護者』
本来ならばルカの情報を待って行うべきだが、時間短縮のため、予想と合っているかは後から答え合わせをするつもりだ。逆に言えば、ガドランドの予想とルカの情報が合っていれば、他の予想も高確率で合っているだろう。
ガドランドが予想を元に、マップを追記する。
そうして各々、旅の準備を行い、夜が更ける。




