第2話 ガドランドと弟子達の戦い
「助けていただき、ありがとうございます。わたしの名前はアマンダと言います。あなたのお名前は?」
「ああ、これは失礼。オレはガドランドと申します。たまたま通りかかっただけなんで、よく状況が飲み込めてなかったのだが、あれで良かったのですかね?」
山賊の親玉のような男、ガドランドは周囲に気を配りながら、まだ人影が多く見えるメイン通りへ向かう。
「はい、助かりました。それにしても、お強いのですね」
アマンダは手を引かれながら、ガドランドの後ろ頭に話しかける。
「いえいえ、たまたま冒険者をやっているもので」
そう言って振り返るガドランドの顔を見て、一瞬、体がこわばる。アマンダは、恐怖心をぐっと飲み込む。
もしかしてこれは罠なのではないだろうか? 油断をさせておいて、このまま連れ去られるのではないか?
しかし、アマンダのその心配は杞憂に終わった。
馬車がすれ違える程の大通りに出ると、ガドランドはその儚げな細い手を離した。
「ここまでくれば、さっきの奴らも下手に手を出せないでしょう」
「ありがとうございます」
美しい長く赤い髪の毛をなびかせて頭を下げたとき、遠くから怒声が響く。
「いやがった! てめえら! 隣の男に気をつけろ!」
アマンダが声の方を向くと、そこには武装をした二十人以上の見るからに柄の悪い男が、叫びながらこちらに向かって近づいてくる。
道行く人々は、この騒動に巻き込まれないよう、大通りから隠れた。
「おっさん! いやがった!」
反対から別の声が聞こえてくる。
アマンダは不安げな顔でそちらを見ると男が四人。こちらは四人ともイケメン。
軽装の革の鎧をつけた者、厚手のローブを身につけた者、全身金属の鎧をつけた者、黒い普通の服を着た者とその服装から統制が取れていないように見える。
挟み討ち。
普通に考えて、強行突破するならば四人の方だが、ガドランドは大人数の方を向く。
「お嬢さん、ちょっと大ごとになりそうなので、その辺りに隠れといてください」
ガドランドはタバコを靴の裏でもみ消し、ゆっくりと歩いていく。
「そんな人数で来るって事は覚悟できてるんだろうな! 命までは取りゃしねえが、手足の一本や二本は覚悟しとけ!」
ガドランドは軽く肩を回しながら凄む。
しかし数の力を笠にきた男たちに、その忠告が届くわけもない。逆に火に油を注ぐように、男たちは剣を抜き、口々に汚い言葉でガドランドを挑発する。
両者の距離は約十メートル。
男たちの後ろから矢が三つ。ガドランドの後ろにいる四人の男たちに当たる危険性を無視して射られる。
「クリス!」
ガドランドは両手で、二本の矢を叩き落としながら叫ぶと、落としそこねた矢の行方を見ることもせず、一団へ突っ込む。
「風の盾」
ガドランドの後ろから近づく四人の男たちのうち、金色の長い髪の女性と見間違う中性的な美しい容姿の男が、魔法の風の盾をアマンダの周りにつくる。矢は強風の渦に巻き込まれて石畳に叩きつけられる。
ガドランドは向かって来る男たちの剣先を避けながら、その剣を奪い取ると短弓の男たちに迫る。
慌てて次の矢をつがえるが遅い! 遅すぎる。
迫る剣を避け、一振りごとに弓を壊すと剣を逆さに持ち、柄を男の腕に叩きつける。
「囲んで一気にやっちまえ!」
次々と男たちを無力化するガドランドを取り囲む。数の有利を使わない手はない。
「麻痺の雷」
ガドランドを囲んだ男たちの半分は、雷に打たれて痙攣を起こす。
「おっさん! 注文通り殺してないぜ」
白黒のツートンの髪、鋭い金色の眼光に太い眉のワイルドな雰囲気の男がガドランドにウィンクをしながら、男たちに麻痺性の雷を落とす。
「よくやった、ロレンツ。下手に殺すと保安官にどやされるからな」
ガドランドは剣をさばきながら、厚手のローブ姿のイケメンに声をかける。
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