終了のお知らせ
「なんで早く起こしてくれないんだー!!!」
少女は目を見開きそう叫んだ。
「ひゃあっ!」
思わず素っ頓狂な声を出してゴミの山に頭を突っ込んでしまった。心臓が口から出てしまうのではないかと言うほどバクバクいっている。どうも静まりそうにないからとりあえずあちらの方を見てみる。
「先程から何度も起こしていたではありませんか」
メイドはそう話しながら主人と思われるあの少女の着替えを手伝って·····え?
「嘘だろ?なんで?」
ここで着替える意味が分からない。僕がいるのに着替えるとかもうちょっと僕の精神を労わって欲しい。
コソコソ覗き見るのは無理なのでとりあえず後ろを向いて置くことにした。それでも音とか聞こえてくるのだけど·····
「すまんすまん、どうやら待たせておったようだな」
どうやら着替えが終わったようだ。声を掛けられてしまった。ここでどうやって返すのが正解なのだろうか。
初対面だし敬語で話すべきかフランクに話すべきか。まともに人と話したのは何ヶ月前だろうか。あのメイドとも一言くらいしか話してないし。
「どうした?気分でも悪いのか?」
「やはりこの部屋は人体に害を及ぼすようですね。今日こそ片付けますよ」
マズイ。心配を掛けてしまったようだ。勇気を出さないと。
「は、はい。お元気です。本日はお日柄もよく、えっと」
あれ、なんか変な事を喋ってしまっただろうか。2人がプルプル震えている。怒らせてしまっただろうか。冷や汗が体中を伝う。手も汗まみれで気持ち悪い。どんな言葉がくるのだろうか。
『プッ、アハハハハハッ』
「へっ?」
「今まで私と話して来た奴は沢山いるが、お前みたいな話し方をした奴は初めてだぞ。よほどのコミュ障だな」
「笑ってはいけませんよ。それは失礼です。クスクス」
なんだ、怒らせてしまったのでは無く面白かったという訳か。良かった。怒らせて殺されるよりかはましだ。
「あー笑った。さてと。本題に入ろうか」
そう軽く話しつつも、その顔はさっきの人とは別人のように真剣だ。少し怖いくらいだ。
「さて、まずは自己紹介からだな。私の名は沢山あるが大体の者が邪神と呼んでおる。お前も邪神と呼んで構わん」
僕を呼んだのはまさかの邪神!?
「そう驚くな。別に私が何か悪い事をしてるとかでは無く、お前がこれから行く世界の者がそう呼んでいるだけだから安心しろ」
なんだそういうことか。それなら安心して続きを聞ける。
「続けるぞ。まずお前を呼んだ理由は·····」
「理由は·····?」
場に緊張した空気が流れる。一体どんな理由がくるのだろうか。
「特にないっ!!!」
「へっ?ない?」
マジかよ。理由が無いのに呼び出したのか。こっちは助かったけど。
「いや、正確にはある。あるのだが今それを話すのはまずい。理由についてはその時になれば話すとする。だから今はそれで我慢してくれ」
なんだそういう事か。なら納得だ。誰にでも話したくない事の1つや2つあるものだ。それを無闇に詮索するのは良くない。
「後は·····。おおそうだった。お前の職業を決めないとな。職業決めはこのルーレットでやる。中には超人気職の勇者などもある。」
「勇者かぁ·····」
それになれば友達は出来るのだろうか。普通に出来そうだな。戦うのは面倒くさそうだが友達が出来るのなら我慢出来る範囲だ。狙うか、勇者。
「さて、ルーレットを回すぞ。心の準備はできたか?」
「はいっ」
ルーレットが回り始めた。勇者こい。勇者こい。ルーレットばかりは運だから必ずくるとは言えないが、勇者ではなくても人気の職業につきたい。
徐々にルーレットが止まり始めた。このまま回ると当たる職業は勇者!運が僕についてきたか!速度はもっとゆっくりになり、ほぼ止まっていると言ってもいいレベルまできた。今指してるのは勇者。お願いだ!このまま止まってくれ。ブゥゥウン。ゴミの山から出てきたハエが僕の鼻に止まった。くすぐったい。
「ハックション!!!」
それはとても大きいくしゃみであった。振動でルーレットが指す職業が少しズレてしまった。僕の職業は·····
「なんと!お前の職業は死霊術師!この世界で1番忌み嫌われている職業だ!」
あ、僕のセカンドライフ終了のお知らせです。