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ガラクタの学園  作者: 夕霧湖畔
間章二 サメの魔法を求めて
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07.鮫は危険物

 素材の解体には、白い服が必須だった。

 けれど今は【猫眼甲】と《猫爪装衣》が血を好むので、今は敢えてこちらを着て解体を行っている。


 メガロドン。向こうに伝わる古代ザメとは明らかに別物の大きさだ。

 大きさで言えば(くじら)並、それも世界最大級よりも大きいかも知れない。


 実の所、魔石のある魔物は発動具に出来ない。要は魔石並の魔力を蓄えた臓器や肉体こそが発動具化出来る部位なのだ。

 魔石が存在する魔物は、全身に巡る程の魔力が無い、という証拠になる。


 全身に魔力が満ちていれば封印石ごと発動具化も出来るが、今回メガロドンの場合は頭蓋骨(ずがいこつ)と心臓だけだ。不要部位が多い程魔力の通りが悪い。

 全身を必要とする召喚具とは、そもそも勝手が違うのだ。


 ティーパーティからメガロドンの発動具化に関する情報は一通り確認済みだ。

 だが新種の場合、当然公式に確認されていない呪文を試す必要があるが、この際に不要部位の比較的魔力の多い部分で試し、呪文文が機能するかを試す。


 不要部位の魔力が薄過ぎるともう発動具部位で試すしか無いのだが、今回の場合は(くび)の大動脈を用いれば十分だ。

 折角なので予想された呪文文以外も試してみる。


「……ふむ、成程。

 元の生物の魔力適性に応じた呪文以外は拒否反応が出るのか。」

 これだけ多いと色々実験し甲斐(がい)がある。ある程度試したら残りの部位は保管しておこう。


(ティパーティは本当に優秀なのね。未知の生物なのに一致する呪文が既存の呪文には全く無い。完全にオリジナルの(まじな)い文を見つけ出している。)

 必要な要素は事前情報で全て揃っているのだとしたら、はて困った。


 頭蓋骨と心臓は完全に別の呪文になってしまう。どっちも平屋サイズだ。

(普通に考えれば二つの発動具にするところだけど……、いや待てよ?)


 どうせ同じ封印石に戻すのだ。部位だけが繋がった状態なら元の封印石に入るのではないか?

 不要部位が封印石に入らなくなるが、最優先は発動具。手始めに解体してみるとしようか。


…………、………、……、…。丸一日がかりで成功した。


 因みに不要部位は今、携帯鞄一つが完全に血の海肉の池と化した。

 背骨を含めた骨は、全部後ろで自然乾燥中。

 頭蓋骨と心臓は今、神経だけで繋がっており、一旦封印石に戻した。


 後は呪具に呪文を刻み、封印石と同化させるだけなのだが。

(う~ん、同化率が今一ね。柄の部分を先に骨と同化させてみようかしら。)


 使っているのは先日買った大型素材解体用の大包丁だ。

 魔力伝達率は極めて良いのだが、根本的にメガロドン側の魔力が不足している手応えがある。


 何かで不足分の魔力を補う必要があると感じ、最も魔力が少ない柄の部分にグラトニーの魔力を沁み込ませた骨を別の封印石に封じて同化させてみる。

 柄が思ったより大分骨っぽくなってしまったが、大分遣り易くなった。だが包丁サイズを考えるとまだ足りないので、もう一個中型封印石を用いる。


(これで大型一つに中型二つ。中々豪勢な発動具になったわね。)

 尚、同期で同じ事が出来るとしたら精々ジュリアンとアヴァロンくらいだ。

 アヴァロンは完全に未知数だが、パトリシアは十人集まってワンチャン位。多分素材が腐り始める方が普通に早い。


 外で行えば近付く者が魔力酔いしそうな暴力的な魔力で、同化を進める事数日。

 途中、同調を早める為には血の海と化した生き血を共に吸わせると加速する事が判明し、出来る限り大量の血を吸わせ続け、限界まで満たし。


「……出来た。【古代鮫の骨包丁】といったところかしら?」

 血の色は全くしないが骨を削って刃物にしたとしか思えない、身長サイズの長柄包丁が完成した。


 握りの柄は足の長さに相当し、完全に骨を装飾したようなデザインだ。

 強度は元よりかなり増しているとはいえ、もう少し金属や元の包丁要素を残すべきだったろうかとも思ったが、発動具としては極上の代物だろう。


「ふむ。以前より軽くなってるし、こっちの方が良いか。」

 振ってみた感じ案外軽く、グラトニーの筋力でも遜色(そんしょく)無く振るえる。

 何より【巨人の左籠手】を活かすのに、《妖刀》では若干強度以上に長さが不足気味だったが、これなら存分に振り回せる。


「それじゃ、『縮め』。」

 呪文と同時に魔力を流し、前腕より少し短い程度の小刀に変化する。

 振るって見ても問題無い。鞘に納めて腰に仕舞えば、鏡で確認しても腰帯に隠れ帯剣が分からなくなる。素晴らしい。


 呪具を奪った純血の中には《携帯鍛錬場》持ちも居たので練習スペースには困らない。全力で術を振るっても端まで届かないのは流石高級品か。


 小さ過ぎたり使い勝手の悪い《鍛錬場》は血の従者越しではなく、直接学園街で売却を済ませている。

 全部を従者越しに売れば早々に繋がりを悟られるので、多少足元を見る程度なら気にする事も無い。元よりグラトニー視点での不良品だ。


 質の悪い物はドンドン売り捌いているので地味に学園街では値崩れが起きているが、買い叩いた物を安く売らなければ起きない問題なので、あくまで店側の責任として放置されているのが現状だ。


 まあ決闘祭を見てグラトニーに責任を押し付けようとする度胸(どきょう)のある者もいないので、元凶は事態に気付いてすらいないのだが。


 兎にも角にも、《訓練場》には所有者によって特色があり、何も無い広場だったり障害物があったり。はたまた吹雪いていたり水辺があったりと色々な品があって実験には便利だ。


 手元に残したのは《水辺付き》と《吹雪》と《的召喚付き》だ。ある意味当然の話だが、学生作品は殆ど残らなかった。

 今回使うのは勿論《的付き》だ。


 発動具の一体化に成功したので使える呪文は二つ。


 『激痛鮫』の呪文は幻の鮫の群れを放つ呪文で、対象に痛みを与えるだけで一切的を傷付ける事は無かった。気絶した魔物を《訓練場》に放り込んでから使うと、絶叫を上げて再度気絶していた。気絶中に使うとショック死する様だ。

 呪文を聞けば一発だが、傍目には召喚駒による『顕在召喚』にしか見えない。


 『鮫の王』は牙で埋め尽くされた巨大顎で、質量任せに噛み砕く文字通りの破壊魔法だった。

 こちらも同じく人を襲う鮫という幻想の再現で、威力とサイズは無関係な上に、範囲は自在に調節出来るという優れモノだった。質量は魔力量で密度化する様だ。

 小刀でも骨包丁でも問題無く使えたので、使い勝手はかなり良い。



 後は廃品処理だが、肋骨(ろっこつ)(ひれ)、背鰭、尾鰭は残しておいて良いだろう。

 背骨と脛骨(けいこつ)周りは全部使い切ったし、決闘祭で他学年の《肥料生産箱》を幾つか奪ったので、内臓を含めた不要部位は一気に肥料化して売却品に加工してしまう。


 一応二年で習うので売ろうかとも思ったが、呪文と魔力があれば即完成という呪具でも無いので複数あった方が都合が良い。手元に残して活用するとしよう。


 念の為食べられそうな部位は簡単に確認し、魚肉部だけは別に収納した。

 これは惨殺して食肉に出来ない大小の鮫も同様の処理をしている。


「これで良し、と。量が量だけに肥料はどっちに卸すか向こうに聞こうかしら。」

 幸い商売に関しては血の従者に詳しい者がいる。持つべきものは使える部下だ。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 因みに惨殺していない方の鮫に関してだが。


 夏季休暇の末頃。グラトニーは外周を訪れたメンバーを集めていた。

 場所は例の〔栓の塔〕。密談をするために秘密裏に訪れていた。


「ねぇ。外注した潜水艦なんだけど、一月程度で完成する物なのかしら?」

「「「何を馬鹿言ってるの?」」」

 どうしてもちょっと確認を取りたかった。


「秘密を守って貰う代わりに研究用の鮫を何頭か提供したんだけど、完成した現物がコレよ。」

 潜水艦。見た目、完全に大型鮫である。乗り込み口は背鰭を持ち上げる。


――主犯、七不思議の魔女達。魅惑、傀儡、鏡、紙の四名。

 普段は最大のブレーキである紙が暴走したら、もう止まる筈が無かった――。


「外周の鮫だから学術的にも超貴重で、しかも未知の進化を遂げていたらしいわ。

 これが発表の為に必要な調査資料、データ諸々。」

 辞書ほどでは無いが、割としっかりした本一冊を脇に置く。


「こっちが現物の設計図ね。修理手順や内部構造も全部記載済み。

 昔の潜水艦って魔法の箒と似た理論を使っていたのね。鮫の外装を応用して、空を飛べるように改造出来たそうよ。

 後諸々の機能を補助するために半ゴーレム化済み。」

 これ仕様書付き、と少しだけ分厚くなった本を一冊追加。


「「「何て?」」」

 正直紙は、資料魔だと思う。


 流石に巨体過ぎて、水中から飛翔するか、地上から飛ぶ場合は魔力を注ぎ込むか蓄えておく必要があるというが。大部分は鮫が持っていた肉体構造を魔術的に再現すれば良いと、傀儡(くぐつ)がとてもとても興奮して熱く語っていた。


「流石に普通の収納具には仕舞えないからと、専用の指輪を用意してくれたわ。」

 いい仕事したと、とても満足げに鏡は語った。


「取り敢えず内装を確認して、皆には試運転に付き合って貰いたくて。」

 腑に落ちない顔のグラトニーに従い、全員が次々と中に乗り込む。


 窓は目と口の中のみ。しかし外部の様子は水晶で確認出来るよう各座席背もたれに付いている。操縦席一つに二列十人座席。外を監視する専用席もアリ。

 後ろには狭くとも四人が寝れる折り畳みベッド付き。小さな机はドーム系ハウスを固定する為の専用机だ。形状問わず置けるよう、固定用ロープ付き。

 最高効率を徹底追求したと、魅惑は額を拭った。


「「「馬鹿じゃねぇのかな?」」」

 最初に乗った潜水艦よりも少しだけ大きいだけで、この空間。

 試運転は問題無く、本当に問題無く他の鮫に紛れる事が出来た。


 鮫は基本同種族は襲わないというのは実際に泳いで確認した結果だ。

 少しだけ滑空して適当に旋回して割と直ぐに戻った。

 結論から言って、潜水飛翔船《天壌鮫》は最高の完成度だと言って良いだろう。


「「「君が持つ以外無いんじゃないかな。」」」

 ここに置く潜水艦は普通の物限定と固く、固く約束させられた。

 必要経費はグラトニーも知らない。

 本日3話投稿、後編です。

 グラトニーによる新作発動具クッキング、それとオチです。

 完成品は、アホ程魔力を注ぎ込んで作ったので性能はガチですw

 サメは何度でも蘇るwサメ映画はニ作三作しか見てないので、サメ映画ファンと仲良く出来る自信はありませんw

 間章は全部、違う方向にはっちゃけたグラトニー強化話です。

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