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ガラクタの学園  作者: 夕霧湖畔
第四部 教頭失脚編
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第五章 決闘祭 01.初日

 決闘祭当日。

 決闘祭のルールは学園長が粘り、殆ど変わらなかった。


 教師が審判を務め、殺害などの行為は事前に阻止される事も在り、

 降参は勝者が認めるか、敗者が意識を失うまで。呪文道具に制限無し。

 が。ダンジョンはあくまでモンスターの出現しない、ランダム衝突のための会場となり特製の決闘場が用意された。


 参加者の様子は複数の教室に用意された大型鏡にリアルタイムで投影され、非参加者がその様子を見物出来る。

 詰まり余りに非道な行為を行った場合は、後の学園生活に差し障る事になる。


(ま。無能人相手にそんなの気にする訳無いわよねぇ。)

 一日最大十連戦とあったが、詳細は不明のままだ。会場に合わせた装備を用意させないための配慮だという。


 意外にもグラトニーの知り合いは大体参加した。

 しかも四、五学年は殆ど全員参加したため、かなりの人数になっていた。

 参加者は全員中庭に集まり、開始の号令と共に、順次それぞれの門の前に並んで順番に通路に入っていった。


 決闘祭ダンジョンの何処に転移するかもランダムなので、入った順番で有利になる事は特にないというが、グラトニーは門の先頭に並ぶ事になった。


「待った!ランダムなのに先頭に並ばせるのはおかしいでしょう!?」

 転移先に細工があると言っている様なものだとジュリアンが抗議したが、学園長が会場に用意された舞台の上に煙を上げて出現し、それは無いと否定する。


「何故なら最初の接続先は、今から決めるからね!

 ルーレットを回してどの門がどの会場に転移するかが決まるよ!

 外れエリアには私が一体だけモンスターを放っておいた!自由にして良いよ!」


「「「おまッ!」」」

「さあ目覚めろ!迷宮宝具【山河社稷図(さんがしゃしょくず)】よ!」


 教師達が総立ちした瞬間。会場に並んだ全員の足元に太極図の様な魔法陣が現れ、立ち位置に関係無く会場内全員の周囲地面が揺らぎ、景色が曖昧になる。

 地面の図柄だけが鮮明で、外周の呪文陣だけが動かない。足元は最早図形が分からない程の速さで回転し、高低差も不鮮明になって互いの距離が拡がり消えた。


 当たりの景色は山中と渓谷(けいこく)瀑布(ばくふ)と森が、全て入り混じって近くに全てがある様に錯覚すると同時にどれもが遠くに見えて視界が暗転する。

 コレの何処がルーレットだというのやら。

 並ばせた意味自体が全く無かったではないか。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 超大型鎧芋虫の咆哮(ほうこう)が響く会場に居たのは、アヴァロンだった。

 対戦相手は余りに出現位置が近過ぎて、何も出来ずに鎧芋虫に踏み潰された。まあ柔らかい胴体部分だったので運が良ければ死んで無いだろう。


「ヒャッハーーーッ!!今日のディナーは決まりだぜぇ!!」

「あ。放送事故かな。」


 学園長の呟きが誰かの耳に届いたか否か。

 大好物を目にしたアヴァロンは生きたまま(かじ)り付いて踊り食いを始め、鎧芋虫が会場中を暴れ狂う。


 鎧芋虫だけは一騎打ちのルールと無関係に移動出来る仕様になっていたので、鎧芋虫が息絶えるまで同じ会場に転移した学生達は次々と巻き込まれ強制リタイアとなった。


「いやぁ、ぶっちゃけ割と大人しい奴を賑やかしの障害物として放り込んだ積もりだったけど、生きたまま食われたらそんなの関係無かったね。」

 取り敢えず教師達は、全員学園長に殴りかかってから審判に戻った。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 周囲から誰も居なくなったところで暗闇が治まり、幕が晴れるように空へ消えていく。

 辺り一面は石畳の床と、丁寧に切り揃えられたまるで庭園の様な緑の壁に囲まれた通路の中だった。


 頭上には青い空が広がっていたが、道幅は極めて狭く息苦しい程だ。

 両腕を振るうのに支障が出る程は狭く無いが、槍使いは恐らく困るだろう。

 隙間風というには広々と突風が吹き抜け髪が少し乱れるが、風にたたらを踏む様な強さは無さそうだ。


 左右には短樹の壁が広がっており、進むと予想通りと言うべきか、幾つもの分かれ道があり、率直に言って巨大な迷路のようだった。

 グラトニーが軽く箒で浮かび上がると、樹木の上端と同じ高さに不可視の天井があり、予想よりも遥かに狭く、到底戦い易いとは言えない環境だった。


(というか、正面ブッパが正義にしかならないんじゃないかしら?)

 実力とかがものを言うには通路幅が狭過ぎる気がする。正面から殴り合うのには問題が無くても、飛び道具を躱すには狭過ぎる。

 一応現在手持ちの発動具は三つとも全て持って来たが、内一つは温存したい。


(いえ。厳密には三つじゃなかったわね。)

 人形呪具に関しては全種を出さなければ手の内を把握し切れまい。

 今回は試し切りも兼ねて人形呪具を封印し、【人形発動具】二種と【巨人の左籠手】に【化け猫の胴甲】のみで闘う心算だ。


(『嫉妬の緑目よ、祖は我が眼、息吹御魂一つ見逃すな』。)

 口元を袖で隠しながら歩き、『生命感知』の呪文だけをこっそり唱える。

 【緑目の腕輪】は『金縛り』を使う気は無い。


 単なる不意打ち対策なら、一見してバレる心配も無いだろう。

(正直、新しい何かを開発する時間までは無かったのよね。)

 何人かの生命反応を感知したので、取り敢えずそちらへ近付ける方を目指すが、手持ちの武力は護衛を闇討ちした時と変わってない。


(上位学年とどれだけ渡り合えるかは未知数だから、当たるならなるべく早めに当たりたいものねぇ。)

 だが、中々近付かない。何故か皆、ある程度近付くと避けるように動く。


 それでも一人、妙に走り回っていた誰かが脇道から飛び出し。

「あ。」

 同期の少女と視線が重なった途端、周囲の景色が変わっていた。


「へぇ、成程。

 こんな迷路で一騎討ちになるのかと思ったけど、こういう仕組みなのね。」


 周囲は一面、講堂の半分くらいの大きさの石造りの広場に代わり、天上は真っ白な薄く明るい空に変化していた。


 恐らくは此処も異空間。疑似的に作られた魔法世界で在り、天上もどれだけ上がれるのか怪しいものだ。

 試しに石を拾って投げてみれば、二階建てよりはギリ高いくらいか。


「ひぃ!む、無能人?」

「ああ、果物。」

 確かレイリースの取り巻きその2。


「何でよ?!わたしはチェリーよ!」

 そうそう、というかこっちの世界にはサクランボが無いのか。


「何でも良いわ。一応聞くけど、勝てると思ってる?」

 茶髪の少女は平たい胸を張り、呪装でも無いのに煌びやかな改造ローブから取り出した、二本の杖を両手で構えて宣言する。


「なめんじゃ無いわよ!そもそもこんな全校生徒に見物されてる中で、無能人相手に不戦敗なんてどっちみち破滅よ!

 わたしだって発動具の一つくらい間に合ったんだからね!」

 その心意気や由、とグラトニーは満足気に笑う。


「そう。なら遠慮無く試し切りさせて貰うわね。」

 さあお披露目だ、と腕輪から先ずは人形発動具【卍兵】を取り出し、四体を周囲に漂わせる。肩口からは化け猫が顔を覗かせ、小さくゴロゴロと喉を震わせる。


 が。異変に気付く。

 チェリーは何故か棒の様に硬直し、両手を顔の近くで杖を取り落として彷徨わせ。

 全身を震わせて口をガチガチと鳴らしていた。


「な、なま!なま、なま!なままままっ!生首!

 ひ、ひ、ひ、ひ、ひぃ!人殺しだ~~~~ッッッッ!!

 ごごごごごご、ゴメンナサイ生言いました!

 お願いします殺さないで下さいぃ!!」


 ちゃんと言葉になったと思ったらまともに何を言っているのか分からず、全力で跪いて土下座するチェリー。文字通り震える頭を地に擦り付けている。

 土下座文化、こっちにもあったんだ。いやいや。


 何を言いたいのかと思って周囲を観察するため【卍兵】を動かすと、チェリーは腰を抜かしたまま背中を引き摺り、全力で卍兵から距離を取る。

 目は全ての卍兵の間を右往左往し、グラトニーにすら気を配れないでいる。


(あ。生首ってこれ、死体の首だと思っているのか。)

 【卍兵】は曲刀四本を円盤に装着した大型手裏剣だが、円盤部分には視覚共有の為に顔を付けている。

 形状に意味は無いので、只の仮面に目を入れただけの手抜き物だ。


 だがグラトニーは意識していないが、今『傲慢』という恐怖を振り撒く呪詛を、普段は抑えて自重している分、肩の荷を下ろす感覚で解き放っていた。


 《破魔》の指輪があれば防げるとは言え、一つ程度では完全ではない。

 背筋に以前との違いが分かるほど慣れた呪詛から、少しでも遠ざかろうと距離を取って迷路に迷い、対面した時点でチェリーの覚悟に割と亀裂(きれつ)が入っていた。


 そんな冷静さの欠片も無い心情で、明らかに生きてそうな呪装に睨まれ、顔だけが並び刃を光らせていれば。


(コレクションにはなりたくないコレクションにはなりたくない!)

 である。


「あ~……。じゃあ何か財布か呪具を何か寄越しなさい。

 それで降伏を認めてあげるから。」

 大した呪具を持っていなかったが、まあ面倒なので良しとした。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 だが如何に同学年と一年としか会わなかったからと言え、五戦殆ど不戦勝ではストレスが呪詛に現れるくらい機嫌が悪くなる。


「はは!ここで無能人に出会えるたぁオレにも運が巡って来たぜ。

 おい、金目の物出して服全部脱ぎ「『刻め描爪、群成せ積もれ、諸共に引き裂け』。」」

 そこに態度のデカいカモが来た。


「いげぇ!ちょ、やめ!駄目!持ってかな「『暴食よ』。ぃぎやぁあッ!!」

(((う、うん。ま、まあ自業自得だし。自己責任が、ね?)))

 観戦者一同、心の棚を作る。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 取り敢えず四人の参加者は概ね無能人とくれば何をやっても許されると思っていたようなので、身包み剥ぎながら半殺しにしておいた。


 と言っても半数以上が呪具数個徴収しただけだし、何より学生の財産なので金額面では程々にしかならない。

 むしろ敵対者の発動具を砕き、廃人同然に魔力を奪い尽くした方がよほど成果と言えるだろう。


(まぁ、所詮木っ端の魔力では知れているけど、成果と言えば成果よね。)

 昼過ぎに辿り着いた休憩エリアは完全個室空間で出来ており、期間中は他者との接触は不可能になっているようだ。


 但し通信用の《魔鏡》が設置されており、知人が参加者に残っていれば連絡を取り合う程度は出来る。が、グラトニーから取る気は無い。

 観客も個室入りした学生は撮影対象から外れるので、見たい参加者が合格したら席を立ち易いように配慮されているらしい。


「牢屋同然なのはワザとかしら?」

 結構、いやかなり狭い。トイレには仕切りがあるが、ゴミ箱同然だ。

 ベッドが隣にあるので使えば確実に臭いだろう。


 そんな事を考えながら、ベットに置いたスノードームの中で、気紛れに少し豪華な夕食を取り、室内の様子を使い魔に監視させながら魔力を結晶化して保存する。

 明日までに回復する魔力分の消費を追加の人形作りで過ごして床に就いた。


 知人ではパトリシアとサンドライトがリタイアしたが、ピオーネとポートガスが残ったのは意外だった。ジュリアンは順当に、といったところか。

 本日2話投稿、後編です。

 これが普通の主人公だったら劣悪な環境に置かれ、苦汁を舐めながら差別されている環境に糊口を凌ぐでしょう。

 でもグラトニーに通じるかと言えば否ですw

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