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ガラクタの学園  作者: 夕霧湖畔
第四部 教頭失脚編
70/211

02.進化する授業

 薬草学。

「昨年の単位で最低限の基礎は終わりました。

 後の単位は魔法薬作りも進めますが、基本は知識量を示すためのものとなります。

 ので二学年は、料理魔法を中心に授業を進めていきます。」


 ガタリと周囲が腰を浮かせたのは、ついグラトニーから呪詛が漏れたからだ。

「へぇ。私実は、料理にだけは拘りがあるのよね。」


「その様ですね。魔法世界では料理は栄養、長期保存と食事時での演出に主眼が置かれて発展しました。

 ですが無能世界では味に対する拘りが一部地域を中心に物凄く発達しているとか。

 出来れば私にもあなたの知る料理を教えて頂きたいですね。」


 本気の顔で返されあれ?と返答に困っていると、もう一度「教えて頂きたいですね」と繰り返されたのでつい、じゃあ今度の補講にでもと約束してしまう。


「き、教師マタハリ!無能人に深入りするのは良くないと思います!」

「研究者には無意味な拘りです。」


 ゲテモノ食いは薬学を発展させますとまで断言されると、生徒一同誰も反論が思い浮かばない。というより、互いに不安を(にじ)ませて視線を交わす。

「では基本と呼ばれる料理魔法の種類を並べます。」



 『保存』薬草や料理を一日間、魔法をかけた直後の状態を維持する。但し生活防水や汚れ除去、熱変化対策程度。


 『保温』指定した範囲内の温度を指定した温度で固定する。低ければ凍り、高ければ燃える。揚げや煮込みには使えない。というより揚げという料理法が無い。


 『遊泳』空中か水中を一定の速度で動かす。状態や速度に気を使わないと、料理が型崩れしたり崩壊する恐れがある。


 『舞踏』様々な食材を回したり跳ねさせたりさせて、踊りを連想させる動きを維持する料理魔法。動きを複雑にするほど持続時間が減る。

 踊って見せる為には動きに加え形状も大事。


 『循環』液体や粘体を特定の順路を通過して流し続けるための料理魔法。経路の複雑さには限界があるが、範囲内の保温効果がある。


 『弾力』食材の弾力を増減する。液体には不可能だが粘体は可能。

 食感を変えられるが強度に影響は無い。


 『転味』別の食材の味を移す。調理済みの味と調理前の味は別扱い。

 元々の味を抜かないと混ざり、抜いた味は他の食材に移さないと術が切れた時に()()()()()()()()()強引に戻る。

 混ぜたり移した味は術を維持せずとも維持されるが、腐敗まで防がない。



「この中で五つ習得出来れば二学年の単位は八割問題ありません。全て修得出来れば十割です。

 適性があるので全修得を目指せとは言いませんが、料理上手と呼ばれたいなら五種獲得は必須ですね。


 薬草学に料理魔法が含まれる理由は、これらが薬草管理や調合に応用出来るからです。なので此処で単位を落とすと、三学年に薬草学の専攻は出来ません。」

 ある意味で薬草学最大の壁になるという。


「生徒グラトニーは、補講の際、向こうの揚げ物に付いて詳しく説明を求めます。

 成績で贔屓(ひいき)は出来ませんが、そちらの料理をより詳細を説明して頂ける程ご褒美(ほうび)の呪具は豪華になると約束します。

 具体的には私秘蔵の【手の平薬草園】の譲渡(じょうと)も視野に入っています。」


(((が、ガチな奴だコレーーーーっ!!!)))

 教師マタハリの表情からは一切の迷い一つ見出せない。というより完全に真顔。

 邪魔をすると本気で呪われそうだと感じた同期達は、この件に対し一切の中傷や妨害を控えようと固く心に誓った。


 後日。パソコン内から取り出した幾つかのレシピとお古の料理本を提供し、グラトニーは揚げ物の実演と説明だけで何とか勘弁(かんべん)して貰えた。

 尚【手の平薬草園】は栽培実験用の呪具として、想像以上の本気性能だった。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 防御学。

 初日の授業に二学年一人残らず出席し、例年の閑散(かんさん)振りを知っている教師ムーンパレスを驚かせた。


「せ、先生!二学年で作る呪具で呪詛に対抗出来る物があるって本当ですか?!」

「ん?ああ、あるぞ。……そうか。成程な。」

 切実だな、とムーンパレスが納得して額を抑える。


「あら。なら私は教室で肩の力を抜けるって事かしら。」

「「「待って?!」」」


「……せめて二学期以降にしてくれ。それなら成績悪い方が問題で良いから。」

「止めてくれないんですか?!」

「防げない程度なら授業受けるだけ無駄じゃない?」


 せめて防御学中だけにしてくれと懇願(こんがん)され、しょうがないなと承諾したのだが。

 何故か同期に、ビクビクしながら疑いの視線を向けられる。何故だろう?


「話を戻すが、防御学の授業は専用発動具を使った新呪文の習得と、授業で習う呪具の中から五種を完成させる事。

 このどちらかを果たせば進級出来るが、難易度が低いと思わない方が良い。


 何故ならこれらの呪具は基本的に魔物素材を用いる物が多いからだ。

 授業単位には魔物素材の獲得法、その知識も含まれているが、極論知っていれば出席は不要だ。」


 ムーンパレスは一同の疑問に当然と胸を張り久々の教師らしさを満喫する。

 臨時で他の仕事の片手間でやる授業と、担当教科として受講内容を考える講義は、また違った味わいというか、遣り甲斐があるようだ。


「諸君らが切望する呪具は《破魔の指輪》と言って、魔力による障害、精神干渉、呪い等に防御力を発揮する指輪シリーズの一つだ。

 あくまで耐性向上程度の効果に留まる。


 破壊されない限り効果が続く、永続型という分類の呪具だ。別名軽減型だな。

 指輪シリーズは指輪が一番手頃に作れるだけで、指輪型に拘る必要は無い。」


 他の指輪シリーズは主な物として《退魔の指輪》《硬化の指輪》《保身の指輪》があるという。それぞれ一つは作っておきたい。特に《保身の指輪》。


(自身への監視、探査を無効化する指輪。装備中は『千里眼』や『過去視』の術を無効化出来る。

 より強力な呪具による補助を得れば突破出来るが、突破した場合は指輪が砕けて必ず所有者に監視が察知される。


 反面、探知側は指輪を砕かない限り、察知出来ない以上の情報を把握出来ない。

 とても欲しいわね。多分学園長にもなると例外もありそうだけど。)


 学園長なら対象外になる探査術もあるかも知れないけど、一般教師からの探索が防げるというだけでもとても有り難い。


「防御呪具は、耐性系と対応系に分かれる。

 対応系としては《蛇魂縄》や《亡霊煙玉》が有名だな。」


 《亡霊煙玉》は教師ナイトメアが使っていた奴かと思い出す。確か対象を追尾する煙幕だが、煙玉なので大した時間は続かなかった筈だ。

 どうしよう。全部使えそうで欲しい物ばかりだ。


「防御学も課題とテストさえ達成すれば、余った時間を全単位ダンジョンの単位と交換出来る。

 この辺も防御学が(おろそ)かにされがちになる理由なんだが、諸君らには関係無い話のようだな。」


「「「はいっ!!!」」」

「あら?」

 同期達が心を一つにして頷いた。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 再びの呪文学。

 先日の件で塔ダンジョンの一つが使えなくなったが、元より今日は変身術の訓練を行う予定だったので影響は無い。

 因みに完全変身は呪詛抜きには不可能な、かなり難易度の高い魔法だという。


「但し化け猫、猫又や化け狐は怨霊の類でね。例外的に近い事が出来るけど、基本変化の魔術は錯覚させる呪文の事だと言っていい。

 変身出来るのは四足獣までだね。肉体の変形を裏技無しにやった人間の五感がどうなるかを考えれば、理由の察しは付くよね?」


「?」

 全く分からないが、他の生徒達は納得したらしい。

「二学年で習う変化は『部分変化』と『外見変化』の二種だ。

 発展版は三学年で習うが、まあ両者の時点で大分難しいからな。魔法の杖で出来る最高難易度の呪文と言っても良い。」


 動植物になら変身する魔術も無いでは無いが、こちらは『変身薬』という実は瓶メインの魔法薬を使うか、《変化の杖》と言った呪具のサポートが必須となる。


「要は外見だけなら難しいだけで、どうにかはなるんだ。

 ただ体質や特性、頭の中を再現する変化術は不可能だと思っていればいいよ。

 変身魔法って言うのは外見の偽装であって、内面の変化では無いんだ。」


(成程。その別人格を再現するために必要だったのが《仮面》の呪具だったと。)

 そして適性の無いサンドライトは逆に《仮面》の自我に支配されかけた訳だ。


 とは言えその完全変身が可能な『仮面の呪詛』を吸収したグラトニーにとって、変化の魔術は無いに等しい難易度だった。

 勿論事情を知らない同期達は、当然のようにドン引きしていた。


 あっさり暇になったので、序でに前々からの疑問を聞いてみた。

「ねえ。どうして学園にはこれ程の魔物や幻獣が繁殖(はんしょく)出来るの?

 他に此処までの規模で素材を取り続けられる場所は無いって聞いたけど。」


 グラトニーの質問に、周囲の生徒達も口々に同意し話に加わる。

「その辺は魔法史一学年の授業でやる筈なんだが……。」


「やらなかったわ。

 学園の歴史は魔法史全体と関わりのある所だけやるって話だった。」

「ああうん。今はそうなのね。」


 呪文学教師が魔法史学の領分に口を挟むのは抵抗があるのか、ドロテアは暫く悩んだ末に。生徒達が全員集まったのを見て、諦めて溜息を吐いた。


「じゃあ簡単に説明するが、元々秘密の森周辺は学園長の私有地だったんだ。

 んで、現在より少し離れた位置の魔物素材の産地に学園が建造された。

 魔法の失伝に危機感を覚えた魔法議会が、後進育成のために建てたってのが学園創設の経緯なんだけど……。


 ぶっちゃけるけど、当時の学園長が他所様の為に、森から魔物を出さないための結界を張ったと思う?」


「昔の学園長が善良だった夢を見たって良いじゃないですかーっ!」

「顔に騙されるな。楽に死ねんぞ。」

 女子生徒の叫びを一蹴し、話に戻る。


「まあ、外に出たなら無関係とか平気で言いそうだよな。」

「惜しい。もっと質の悪い事に、侵入者排除の罠だけがあったんだ。

 今と違って学園周りには町もあった。今より世界の数も少なかったしね。

 討伐しようにも私有地に逃げ込まれたらどうしようもない。しかも色々揉めている間に逸れの集団が流れ込み、学園にかなりの被害が出た。」


 流石に魔法議会も現学園長の討伐止む無しという方向になったが、当時未だ私人だったダーククロウ側から謝罪を兼ねた妥協案として、素材を必要としている学生達に間引きをさせればいいと提案してきた。


『結界を張ったからって一人で中の管理をしろとか冗談じゃ無いね。』

 との主張に当時の魔法議会も理解を示さざるを得なかったという話だ。


 何せ私有地の管理等は当時でもグレーゾーン。法的な問題もあった。

 そもそも魔法議会自体が法的な問題を明確にするための組織だ。この場合後出しジャンケンをしているのは魔法議会側になってしまう。


 それで初代秘密の森管理人という体で、ダーククロウが私有地を貸し出す形で決着を見たのだ。


「で。魔物を間引き易い形に土地そのものを改造したのが現学園のダンジョンだ。

 魔女の襲撃もあって今は学園専用の世界と化している。」


 因みに昔の町は廃墟となり、放置されている間に学園内でダンジョン化しているという。

 ダンジョン難易度はCランクだというので、今度行こう。


「当初只の学園と呼ばれていたけど、今の学園長が着任する際に改名したんだ。

 時期は三百年くらい昔。確か禁忌登場前の平和な時代、学園が生徒数増加を理由に規模拡張したタイミングだったかな。」


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 現状三人目の師である紙の魔女オルガノンの授業は、授業というより特訓だ。

 だが二学年の最初の授業も超えた事で、そろそろ次の段階に進んでも良い頃合いだと頷いた。


 禁書庫で基礎練として毎回行っている、《エーテル球》を動く紙の的に当て続ける訓練を終えたグラトニーに、オルガノンは用意した椅子に座るよう告げる。


「天文学の授業はもう受けてないって話だったけど、そっちは鏡から教わっているのよね?」


「ええ、低かった適性が急に上がったら不自然でしょう?

 新教師殿は無能人を無視して授業を進めたがる様だし、都合が良いもの。」


 天文学は感覚的過ぎて適性が無い学生にとっては苦行にしかならない。

 どれだけ知識があって魔力が豊富でも関係無く、如何に感覚的に大量のマナを呪具に集めて自分の干渉を薄めるかという凡そ矛盾した作業が求められる。


 はっきり言って、エーテルやマナが見えるグラトニーの適性は桁違いに低い。

 目に見えて違いが分かるので、天文学に必要な無駄を完璧に排除出来るのだ。


「鏡のとの契約に、増えた血の従者達の影響ね。

 貴女の呪詛の本質は魂の加工で間違いないわね。あらかじめ言っておくけど、他の誰かにあなたと同じ能力を与えようとしちゃ駄目よ。

 相手が死ぬより酷い目に合うから。」


「別に構わないけど、理由を聞いても?」

 血の従者達の事はオルガノンに明かしてはいない。だがやはり気取られていたかと思いながらグラトニーは首を捻る。

 実際感覚的に何故か出来る気がしないのだ。理由があるなら聞いておきたい。


「魂を複製するだなんて言っても所詮は異物よ。

 魂を加工するのは契約者じゃなくて貴女で、契約で誤差を狭めて、魔力による複製を用いてすら、一度に五分五分以上の増量は自我を歪ませかねないんでしょう?

 自分の魂を切り貼りする能力なんて付け足されたら、契約に必要な正気が保てないわよ。」


「成程ね。」

(貴女にも同じ事が言えるんだけどね。)


 気付いていないのか、気付いた上でどうでも良いと思っているのか。

 本来魂の加工は外法中の外法。自分の自我の加工など正気の沙汰ではない。

 誰が自分の脳内を手で掻き混ぜながら、完璧な調整が出来ると思えるのか。


 既にオルガノンはグラトニーの過去を大雑把に把握しており、恐らく天然か人造かまでは分からぬものの、彼女が願いを叶える事に執着している事までは突き止めていた。


 能力も恐らく、大勢の生贄を注がれた結果の、恐らくは墓守の魔女に近い性質を持ち合わせているのでは無いかと推測を立てている。

 だが、それ故に完全に心を許す事は出来ていない。推測通りならそれは、禁忌の魔女が行った禁呪と同種のものだ。


 であれば、天然の結果とうそぶける程、オルガノンの心臓は強くない。

(〔魔女の饗宴〕は健在だった。なら、実験の引継ぎも可能だった?)

 オルガノンは内心を悟られぬ様に慎重に振る舞う。


 グラトニーは余りに多くの魂を取り込み過ぎている。一つ一つが万全な形でも危ういのに、聞く限り真っ当な術式での同化とは思えない。


 常人の魂が人の形をしていたとしたら、グラトニーの魂は手足内臓の数すら違う恐れすらある。加えて墓守を吸収し、今完成に近付いているとしたら。

 ならば現状は全身に顔やその一部が(うごめ)く、変形自在な巨人だろうか。


(禁忌の魂、その欠片を吸収した事は、本当に良かったのかしら?)

 集合意識によって生じた曖昧(あいまい)な自我に、強烈な個性が与えられたのだとしたら。

(……考えるだけ無駄、か。既に(さい)は投げられているわね。)


 暫しの逡巡の後で、オルガノンは意識を切り替えて話を戻す。

「率直に言って、天文学と呪文学では鏡、発動具と魔獣学の分野では傀儡子の二人の方が教師としては優れているわ。

 だから私が教えるのは薬草学と魔道具学の呪具、呪装中心になる。

 頃合いだから、私の魔導書を一つ譲ってあげるわ。」


 犯してもいない罪をでっち上げて裁く心算はオルガノンには無い。ジュリアン少年には是非とも頑張って頂きたい。それが誰もが幸せになれる道だから。


「《紙の魔導書》。確か、事前に記載しておいた呪符を魔力で一時的に複製出来る魔導書だったかしら。


 長所は複製と操作の個数制限が無い事、応用の幅が広い事。

 短所は上限が魔力と枚数次第な事、一枚単位の力は所詮呪符止まりという話だったわね。」


 が。呪符の一枚は溜め無しの『火花』の爆発を超えるし『火花』よりも早い。

 オルガノンが普段使っている飛行機や包丁などの攻撃手段もコレによるものだ。


「ええその通り。最初に言っておくけどコレ、貴女以上の火力は出せないわ。

 はっきり言って応用も才能も私より遥かに貴女の方が上だもの。」


 何を言っているのかと思わず呆れる。互いに全力を揮っていないとは言え、グラトニーがオルガノンに勝った事は一度も無い。


「そこが間違っているの。例えば私の包丁は貴女の《妖刀》以下の攻撃力よ。」

 オルガノンの長所はあくまで応用の幅と手数、練度だ。

 威力が低いから手数を用意して、扱える物が少ないから紙で作った。


 言ってしまえば全て一流の劣化版を手数と技術で補い続けただけで、一流の秘宝は扱い切れない事も良くある凡人でしかない。


「便利なのは間違いないけど、他に優れた術を扱えるなら私だって使うわ。

 貴女の場合、呪符や術式の補佐に使うだけにして、他は自前の魔術を使った方が良いのよ。」


 包丁だって別に折り畳む術式がある訳では無く、硬質化の呪符に遠隔操作で折り紙をして刃物型に折っているだけだという。


「……それ、折り畳む瞬間すら中々見切れないんだけど。」

「頑張れ。

 やってる事は今貴女がエーテルを操って折り畳むのと手順は同じだから。」

 強いて言うなら数百年単位での反復練習だけだ。折り畳めるまでに一年かけて試行錯誤を繰り返したと言うのだが。


「でも今はあなたもエーテルが見えるんじゃない?」

「段々とね。百年くらい過ぎて漸くよ、既に蝶を折れてるあなたとは違うわ。」

 成程。エーテルの動きが見えないと真似るのも難しいのか。


「今作った蝶を通信の呪符で繋ぐ事も出来るけど、使い魔の呪符とかを複製すると便利よ。呪符を全部登録しておくと、困った時にすぐ出せるしね。

 先ずは呪符の使い方に慣れる事。それと魔導書の作り方を習得して貰うわ。そうすれば《紙の魔導書》自体も直ぐに自作出来る様になる。」


 魔導書には防犯対策を組み込めるので、魔法使いには必須の呪具だという。

 授業を始める前に、ふと思い出した事を確認しておくか。


「そう言えば去年、ジュリアンがここに来てたのね。何故黙ってたの?」

「ん?……ああ。私達は訪れた相手の情報を他に漏らす事は出来ないわ。

 後、私達の事を他の人に話すのも禁止よ。それが番人達のルールなの。」


 おやと首を捻る。表情どころか気配にも揺らぎは無い。

「仲間内でも駄目なの?」


「グレーゾーンね。私達の所を探す時、一人で辿り着く方が難しいもの。

 元々相談している間柄で情報共有するなって言う方が無理だけど、他のグループに漏らすのは駄目。口が軽い相手に協力は出来ないわ。」


「その言い分だと、私とジュリアンは問題無い?」

 オルガノンは首を横に振り。


「私が話すのはアウトよ。あなた達が仲間じゃ無いなら同じくアウト。

 ダンジョンを潜るクランは九名以下なのは物量で弱い魔物を乱獲させないため。

 ダンジョン探索中は他のクランの立ち入りが制限されるでしょう?」

 話の繋がりは分からないが、取り敢えず頷く。


「授業の三人チームだと相性の悪いダンジョンを攻略するのは難しいわ。

 だから九人までは協力して良い。けど授業の一環として強い学生が全生徒を手伝うのは禁止されている。だからクランの変更は原則禁止。

……そろそろ察したんじゃない?」


「そうね。詰まり血の従者の殆どは只の知人でアウト。

 旧校舎に入ったメンツならクラン扱いでセーフだけど、数増やすなら九人以下に絞れって話ね?」


「後、こっちからは基本振れない話題。そこだけ気を付けておいて。」

 自分、アヴァロン、レイリースで預言三人。ジュリアン、サンドライト、パトリシアで先駆三人。探求ポートガスで計七人。


(あら。ピオーネを引き込んだら他の二人はアウトね。

 九人ギリギリは避けたいし。)


「レイリース辺りはそろそろこっちで鍛えたかったんだけど……。」

「いや絶対駄目よ?特に私はあなたの軍門に下ってないからね?」

 どうもグラトニーは余程特殊な立ち位置にいるらしい。


 自主的に到達さえ出来れば鏡の密室を用意出来るラビリスは誤魔化せるからと、自身のグレーな発言にオルガノンは頭を抱えながら助言してくれる。

 呪符の量産は思ってた以上に便利だったが、オルガノンは無表情が崩れる位に複雑な顔で合格を与えた。

 本日2話投稿、後編です。

 紙の練度は普通に非常識です。例えるなら、矢が届かない位置の的を射貫くとして。

グラ「超火力メガビーム。」

鏡「狙撃ライフル。」

傀儡「誘導ミサイル。」

紙「数百年単位で超練習して当てる。」

 くらい不思議。折り紙位なら努力で何とかなるけど、人に刺さる包丁作れるかと言われると、トリック無い方が絶対に不思議ですw

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