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ガラクタの学園  作者: 夕霧湖畔
第四部 教頭失脚編
65/211

序章 饗宴の胎動

 新章開始。

 後書きで前部までの補足解説をしているので、ネタバレ?嫌いの人は避けて頂ければ。

 とは言え、先の展開に対する話では無いのでご安心を。単に別視点から振り返った前部の話です。

 故人の墓所と名付けられた、今は廃棄され、忘れ去られた魔法世界がある。

 島一つ分ほどの小さな世界であり、元々ここは文字通り故人を(しの)ぶための墓所として築かれた場所が〔魔女の饗宴(ワルプルギスのよる)〕の結成によって切り離された世界だ。


 世界維持の結界には相応の魔法使い達が必要であり、死者が増え続ける状況下で墓地に回す余力など無かった時代。

 ここは時間の流れと共に自然消滅すると思われ、既に失われたとされている一つの世界。

 今の此処は、禁忌の魔女の信望者の祭壇だ。



 表向きは今も朽ち続ける、廃墟の残滓(ざんし)だ。

 しかし実態は内部空間を拡張され改造され尽くし、一時は禁忌の魔女が用意したセーフハウスの一つとして活用

 今は〔魔女の饗宴(ワルプルギスのよる)〕達の総本山兼、隠し宮殿として使われている。


 その最深部、円卓の上層階に位置する〔饗宴〕達の個室。

 盲目の魔女ハイネはその立場と肉体的理由から、殆ど宮殿から出る事は無い。

 それは彼女の容姿だけの問題ではなく、存在を秘匿すべき立場だからだ。


 普段殆ど何を考えているか読み取れず、感情を露わにする事の無かった彼女が、ここ数か月の間に幾度も堪え切れず大笑いする姿が目撃されるようになった。


「素晴らしいわ。全く以って素晴らしい。

 早ければ今年中。ええ間も無くですとも、主殿。

 もう間も無くで、復活出来る。」

 窓ガラスに拳を軽く打ち付け、肩をくねらせて堪え切れずにもう一度。


「人形と言い羽衣と言い、実に良き働きをしてくれた。

 ああ、一番の貢献は疑いようも無く仮面だったか。」


 埋伏がああも醜態(しゅうたい)を晒したのは予想外だったが、元々それほど重要な役は与えていない。

 別に軽んじた訳も無い只の結果論だが、正解だったとしか言いようが無い。


 事実如何に人形が予想外に優秀だったとは言え、学生三人に完封されたのは如何なものか。

 本来であれば文字通り学園陥落か半壊は可能な実力はあったというのに。


「ええ本当に。仮面が居なければ全てが遠のくところでした。最後は減点ものですけど、あなたの動機がそも。ええ、これは使う側の問題ですとも。」

 肝心の伝令は受け取った。必要な情報も揃った。惜しむらくは警戒網に楔を打ち込めれば今後の布石として最高だったが、そこはまあ。


「そうよね。我が主復活のために、敵戦力の上方修正くらいの慎重さは必要ね。」

 あそこには人形もいる。埋伏は別に油断した訳では無いからこそ、予定を一年早めるよう頼み込んで来たのだ。過小評価だけはいけない。


「主の魂を部分的にでも奪われたのは戴けませんが、それだけの甲斐があったのは認めましょうか。

 あれはこちらの予想を遥かに上回る逸材でした。」


 禁忌の魂、その記憶や中枢部分は伝言として宮殿に帰還した。

 太刀には残滓と呪詛しか残っていないが、他の誰であろうが吸収など出来る筈も無い。


 円卓の間に入ると、早速羽衣が妙に腰が引けながら皮肉を口にする。

「随分とご機嫌のようですね。

 我らが主の魂が、完全な帰還を果たせなかった筈だと聞いておりますが。」


 ええ全く可愛らしいものです。彼女の忠誠はただ主にのみ。

 ですがそこまで浮かれていたでしょうか?


「問題ありません。いずれは主の元に戻るものです。

 むしろ主が完全な力を取り戻すために、最適の養分となるでしょう。」

「そ、そうか。盲目殿がそこまで喜ばれる成果だったとは思いもせなんだ。」


 あら煉獄(れんごく)まで。思わず頬に手を当て、はしたない程口元が歪んでいたと気付く。

「失礼。どうやら浮かれ過ぎていたようです。先輩方の前で御無礼を。」

 一瞬で表情を整えられた円卓の魔女達は、流石に戸惑い顔を見合わせる。


(うん怖い。不気味にも限度があるってはっきり分かりますね。)

 あの狂犬な煉獄が目に見えてたじろぐのも当然の凶器、いや狂喜だった。


「で。昨年の計画は早まりましたが、今年も前倒しで構わないのですね?」

 仕込みを考えれば折角の混乱を使わないなど真っ平だ。

 煉獄の質問が今の狂笑から話を逸らすためと気付いている羽衣の魔女リリスは、一も二も無く同意する。

「そうですね。混乱が想定以下とは言え、来年に延ばされると正直厳しいです。」


「ええ、分かっております。実際予定は多少前後しても、預言自体にズレが生じたとの報告は上がっておりません。

 今後の予定は全て、予定を一年早めたものと考えて下さい。」


 禁忌の魔女が〔魔女の饗宴(ワルプルギスのよる)〕と呼ぶ集団は、あくまで禁忌の魔女が直接言葉を交わし、実際に手足と認めた彼女達魔女だけを指す。

 しかし屈服させた魔法議会が建前として振りかざした看板を禁忌の魔女が否定しなかったのは、今日のように魔女以外からの情報を得るためだ。


 世間では禁忌の魔女は力任せの享楽的(きょうらくてき)な存在の様に語られているが、実際の禁忌の魔女は極めて用心深く、様々な布石を散りばめて行動する苛烈な存在だ。

 配下には寛大(かんだい)さも見せるし、傲慢(ごうまん)にも豪放にも振る舞う。


 けれど決して、甘えや敵を許す存在ではない。

「お頼みします、一同皆々様。早ければ今年、概ね来年。

 我らが禁忌の主様の復活は、学園の陥落を以て産声となるでしょう。」

 本日2話投稿、前編です。

 仮面の評価の割に埋伏の扱いが辛いのは、呪詛出力が一桁近く違うからです。

 本来の計画では学園全体を調査しつつ、学園全体に根を伸ばしながら秘密の森を半壊か壊滅させるまでが任務。教師の壊滅は流石に無理だろうから半壊くらいで離脱する予定。

 仮面は裏事情を調査するサブ、痒い所の補佐程度です。


 が。蓋を開けてみれば埋伏が「何か潜伏最中からもうヤバい」と危機感を訴え、大丈夫かと思いながら一年前倒しを許可したら、学生四人に完封。

 絶句しかけた所に仮面が「予定は全て完遂しました」と埋伏をグラトニーに討たせず禁忌の魂も大分消耗したとはいえ伝令付きで送還。墓守の解放も確認出来ました。

 墓守の件を踏まえると裏切りの可能性もあっただけに、グラトニーや運命の子周りの現戦力評価付きと考えると十分禁忌寄りという評価。むしろ不測の事態だからアリで。


 コレ結果的に一年前倒しになっただけじゃね?という結論で盲目さん笑いが止まりません。

 盲目さんの諸々は二年編から判明していきます。

 2021/10/4 ミス発覚により微修正。

※失礼しました!一部修正前のデータのまま更新してました!

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