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ガラクタの学園  作者: 夕霧湖畔
第三部 襲撃の魔女編
57/211

03.運命に挑む

「力が欲しいなら、私に忠誠を誓いなさい。」

「「「…………。」」」

 全員がグラトニーに冷たい目線を向けた。


 おかしいな。今皆が無力感に苛まれた最高のタイミングだったと思うのに。

 忠誠を誓ったサンドライトすら物凄く自己嫌悪に陥る(おちい )姿を見ると、流石に何か間違えたという事くらい気付く。はて原因は何処だろう?


「いや。出来るのは分かっているよ?けどそっちじゃないんだ。」

「出来るの?!」

 一人だけ知らないパトリシアが驚く。ジュリアン他全員が気まずく顔を逸らした。

 まあ別に興味無いなら良いかと後を追おうとすると、慌ててジュリアンが手を掴む。


「ま、待った!グラトニーは今何しに行く心算だった!」

「勿論教師ナイトメアを殺しに行くわ。」

 何を今更と首を捻るが、周りはアヴァロン以外同じ意見の様だ。

(あ。話が終わるまで空気になってるね。)


「本気か?教師ナイトメアには君だって大分お世話になっただろう!」

「そうね。敵に回るだなんて残念だわ。」

 何を言いたいのかとジュリアンに向き直ると、当の本人は言いたい事を整理している。


「えっと。大事なのはホラ、教師ナイトメアが悪い人じゃないっていう事なんだよ。

 あの人は俺達全員に親身になってくれたし、今も俺達を巻き込まない方向で話を進めようとしてくれている。」

 ふむ。良く分からない。


「殺すのを思い止まる理由には、ならないのか?」

「勿論。だって敵よ?殺さない理由が分からないわ。」


「あ、あなた本気で言ってるの!?」

 激高(げっこう)して詰め寄ろうとしたパトリシアをサンドライトが大慌てで抱き止める。

「待った!駄目、それは絶対駄目よパトリシア!」

 理解出来ないというパトリシアとは裏腹に、サンドライトの表情は蒼白だ。


「向こうはジュリアンに任せて!先ずはあなた!

 今のあなたは先生とジュリアンどっち!グラトニーは今先生の味方って思った!」

 ジュリアンが慌ててグラトニーの肩を掴み、先ずはこっちで話そうと強く頼む。


「えと。あのだ。その。グラトニーは先生を説得すれば味方になってくれると思うか?」

「機会があれば勧誘くらいするけどまぁ無理ね。

 時間も無いし。」

「時間?」

 何故そこを聞くのかと思ったが、ああそうかと一つの可能性に思い至る。


「もしかして気付いてないのかしら?

 あなた方がどう思っていようと、教師ナイトメアの話は禁忌の主が復活した後よ?

 禁忌の魔女の復活を阻止出来るのは私達だけであって、教師達はもう間に合わない。」


 皆が一斉に驚き今までとは違う切羽詰まった顔でグラトニーに詰め寄る。アヴァロン以外。

「待て待て待て!それ大事!今直ぐ説明して!」


「いや学園長は目的分かってて手を出さないんでしょう?

 あの埋伏の魔女が教師達を足止めしたからここへ来たんであって、今から教師達の戦いが終わるのを待って、事情を説明して目的地に向かって貰うの?

 普通に教師ナイトメアが用を済ませるわ。」

 その為に今まで暗躍していたんだし、と首を捻る。何処に疑問が。


「待て!じゃあグラトニーはどうやって行く心算だった!」

「さっき地図を見た時に場所を覚えたわ。勿論行き方も把握しているわよ。」

 グラトニーの言葉に皆揃って顔を覆う。流石に意味が分からないのでアヴァロンに視線で解説を求めるが、傍観続行を笑顔で返事される。


「す、済まないグラトニー!戦う前に教師ナイトメアを説得させてくれ!

 無理だったら俺も覚悟を決める!皆は無理をしなくて良い!」


 振り向いたジュリアンにポートガスが叫ぶ。

「今のを聞いて傍観なんか出来るかアホーー!最悪(きんき)の復活とか恐ろし過ぎるわ!」

「そ、そもそもあなたが行くのに付いて来るなとか納得する訳ないでしょう!」

「それじゃ皆行きましょうか!ええ今話している時間も割と惜しいですから!」

 あ。何か皆一致団結した。これが運命に導かれるって奴かな?


「それじゃ全員箒に乗りなさい。道中は私が全部蹴散らすから。」

「「「あ。はい。」」」

 出来るんだ、という表情で全員が箒を取り出す。




「あ。ジュリアンはこの《浮き盾》に乗ってさっきの剣の仕様を確認してなさい。

 呪文か何かある様だったら出る前に試し切りするわよ。」

 グラトニーの勘が正しければ恐らくはナイトバロンが使っていたという発動具だ。

 ぶっつけ本番で試す前に効果を把握出来るならそれに越した事は無い。



 こっそりと『生命探知』の呪文をかけ直し、グラトニーを先頭に箒で階段を上る。

「『幻の霧よ、剣を模れ、空を舞い続けろ』!」


 《浮き盾》二つの内一つはグラトニーの前方に飛ばし、ジュリアンは盾に跪く様に剣と共に現れた箱に有った、注意書きと思しき手紙を読み続けている。

 『幻の剣』十本が宙に留まり、先程の『無手』や『亡霊騎士』は維持していない。両者は速さを重視して進むには不向きだ。


 扉を開けて進んだ先に、こちらに反応した魔物達を飛来する剣が次々と貫き倒れ伏す。

 目新しい素材候補にも遭遇しなかった以上、通り過ぎるまでの足止めで充分。

 止めを刺す手間も省いて次の階に到達する。


「グラトニー、君の予想通りだ。

 この剣は金剛獅子の剣と言って、三つの専用魔法が使えるらしい。」

「分かったわ。次の獲物で試し切りね。」



 念の為という口実で剣が誰にでも使えるか試させて貰った。

 が。結局グラトニー以外も試したが全員鞘から抜く事も出来ず、抜身の状態で受け取っても鞘が出現するという結果に終わった。

「いえ、朗報よ。だって教師ナイトメアが奪っても同じって事だもの。」


 剣の呪文は『怪力化』、『剣の変形』、『浄化の炎』。

「炎を出す呪文以外は直ぐに使えそうにないな。

 正直ちょっと、いやかなり加減が難しい。武器がすっぽ抜けそうになる。」


 ジュリアンがぶっつけ本番で使わなくて良かったと冷汗を掻いている間に、試し切りの最中に書いたメモを使い魔に結んで飛ばす。

 今はダンジョンを出た所で簡単な軽食と水を全員で取ったところだ。


 向こうも変身魔法の効果で魔物達に遮られなかったとしても、物理的な速度は大差無い筈だ。何より初めて見た魔女の瘴気に当てられたか、殆ど全員に疲労が見られた。

(ジュリアンとアヴァロン以外は戦力外かしらね。)


 アヴァロンもどの程度本気を出すかは分からない。教師に勝てるかも未知数だ。

 パトリシアは強化前のサンドライトなら多分勝負にならないが、今ならサンドライトの方が上。それでもジュリアン以下だろう。

 判断は本人に任せているが、無理をする必要が無い事は既にこっそり告げてある。


「じゃあ攻撃が通りそうな俺とグラトニーとアヴァロンが攻撃要員。

 残る皆は盾魔法で援護、まあ攻撃魔法は隙があったら程度かな?」

「…………あたしも?」

 簡単な作戦を立てたジュリアンに、戸惑い顔を浮かべるアヴァロン。


「いや。他の面々なら無理をするなって言うけど、アヴァロンは違うだろ。

 むしろちょっとくらい本気出せよ。今迄余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)の姿しか見てねーよ。」

 特等席で見物するんだろ、との指摘に渋々同意させられる。

(おお、何か新鮮ね。流石コミュ強?陽キャ?何だか忘れたわね。)


 森を抜けるのに箒を遠慮する理由も無い。高々と飛び上がり、誰も居ない校舎に着地すると、躊躇(ためら)わず中に入る。

「教師はもう先に行っているのかしら?」


 多分無理だと口を開こうとしたところへ、使い魔が戻って来た。

『す、済まん。今から教師マタハリに強めの薬貰ってくるから、何とか時間を稼いでくれ……。』

 伝言、終わり。教師ドロテア、今峠が終わった直後らしい。


 全員が複雑な表情で顔を見合わせた。

「えっと。先に話しを聞きましょう、レイリース?」

「ちょっと!?今のタイミングで声をかけるの反則じゃない?!」


 皆が一斉に物陰から出た所のレイリースを振り向き、お互いにお見合いを始める。

 多分今声をかけようとしたと思ったのだが、どうやら違ったらしい。

「待て先に行くな。絶対今、彼女の用はグラトニーにあったからな?」


「いや。何か面倒で。」

 ジュリアンに首根っこを掴まれ、まあ良いかと向き直った。

「それで?今私達は急いでいるんだけど。」


「それは今の教師ドロテアの呻き声で嫌になるほど察したわ。

 そうだとは思ってたけど、あなた達元凶の所へ行くのよね?私も連れてって。」

 レイリースの表情には確かな怯えと、同時に覚悟。これはと思い笑みを浮かべる。


「私達は今回の黒幕である仮面の魔女を倒しに行くところよ?

 教師と一対一なら多分誰にも負けない。精々教頭か学園長くらいかしら。」


「……ええ。当たって欲しくなかったけど、多分魔女絡みだろうなとは思っていた。

 あなた達にとって下らない事かも知れないけど、私はこれでも自分に誇りを持って生きて来たの。でも駄目。今傍観者を選んだら、多分私は一生逃げ続ける。」


「それは悪い事かしら?勝てない相手に挑むのは賢い事じゃない。

 敵を殺せないなら、敵を作らなければ良いのは道理だわ。」

「……あなたがそれを言うのね。じゃああなたは何故戦いに行くの?

 あなたなら絶対勝てると思っているの?」


「そんなの関係無いわ。敵がいるからよ。

 私は敵を殺したいの。殺せないのに生きている意味が分からない。

 あなた達は違うんじゃないの?」


(まるで違う生き物を見ている様な目ね。いや、本当に違うと思ってるのかしら。)

 恐らくその通りなのだろう。多分グラトニーは仲間意識という感覚を知らない。


(多分この子は、残酷という言葉の意味すら他人の感情、付属物止まり。

 種族や文化が違うっていうのはこういう事だ……!)

 何が貴種だ、魔法使いだ。こんな化け物染みた人間を馬鹿みたいに無能人等と同じ型に当て嵌めた。貴種同士だって純血と雑種に分けて間違い探ししているのに。

 グラトニーから見た魔法種族は、さぞ滑稽(こっけい)な猿に見えているに違いない。


「違うわ。私だって殺せなくても良いから生きていたい。

 でも、それでも嫌なものはあるの。死人の様に生きたくは無いの。」


「へぇ。……そういえば、あなたを本気で部下に勧誘した事は無かったわね。

 いいわ、来なさい。それともし本気で何か叶えたい願いが出来たなら、それを叶える為の契約を結んでも良いわよ?」

「「「?!」」」

 グラトニーの言葉に唾を呑み込み、レイリースが有難うと手を伸ばす。

 少し驚きながらグラトニーも握手を返す。成程、これが心境の変化という奴か。

 グラトニーは学校に通うのは初めてですが、情報収集はしていたので変な言葉の理解をしている時があります。ですので明確に何年に魔法世界に来たとかは敢えて決まってません。

 当時スマホがあったのか無かったのかも不明。パソコンは有りますし使えますが、ひょっとしたらスマホとパソコンの境界が無い時代の可能性も。

 ですが、敵か信者かしか居ない環境に居たので、他人と言う概念に対する理解は半端です。

 敵、信者(全滅済み)、その他。という視点でその他を今観察中というイメージです。

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