03.秘密の最深部を目指して
(……良かったのですか?彼らにあんな大盤振る舞いをして。)
ラビリスとの会話を思い出す。
(あら。その大盤振る舞いは今年限りよ?二学年にははした金。
伊達に英雄の子だったりしないもの。正直見違えたわ、過小評価してた。)
「『嫉妬の緑目よ、祖は我が眼、息吹御魂一つ見逃すな』。」
呪文を唱えると暫くの間、辺り一帯の魔力や生命力、熱量を感知出来る様になる。
【緑目の腕輪】はグリーンアイの感覚を再現する発動具になるらしく、消費魔力を増やして効果時間や範囲を増やす事は出来ない反面、文字通り死角が無い。
(今しか着せられない恩を、出来る限り高値で売っただけ。布石よ、後日の。)
(失念しておりましたわ。大型など魔女であれば作れて当然の代物でしたね。)
範囲内に敵影は無く、数人が近付いてくる気配があった。
人数を確認し、全員揃っているのを把握しながら近づくのを待つ。
(今大事なのは、彼らの前で大手を振るって《封印石》を使える方よ。)
本来秘密の森に入る許可が下りるのは、発動具を作れる二学年以降。
ジュリアンが焦る理由は今一分からないが、この件に魔女が絡んでいるなら早めに起爆させたいところでもある。
向こうがジュリアン以外でも構わない可能性は十分あるのだ。
夜の闇に紛れて森の近くに来た一同の前に、グラトニーが姿を現す。
(『ねぇ学園長、門の前に運命の子達と呪詛娘が来たんだけど。』)
(『ああ。そっちは見過ごして構わない。予言通りだよ。』)
一人パトリシアとか言う同期がジュリアンの手を握りながらグラトニーを睨んでいるが、グラトニーにとっては睨まれる方が多いので気付かない。
「さて、確認するわよ。
あなた達が先頭に立って森の迷宮に挑み、私は命の危機に陥るまで手を出さない。
あなた達が倒した魔物素材はあなた達の物、私が倒した素材は私の物。
ここに入っている封印石は自由に使っていいわ。
但し大は小を兼ねるけど一度使ったら再利用は出来ない。
私はあなた達の倒した素材の内、二つを自由に選べる。それが報酬。
何か質問は?」
収納鞄をジュリアンに投げ渡し、中に数十個の封印石があるのを確認して噴き出す。
「最深部の素材もあなたの物になるの?」
不満気なパトリシアの見当外れな物言いに、思わず軽く笑ってしまう。
ジュリアンはパトリシアの警戒心の訳が分かっているのか、何故か及び腰で止めようとする。他の面々はアヴァロン以外は戸惑い顔か。
「あなた達だけで倒せるなら、候補から外して構わないわよ。
いるって保証は特に無いけど、その程度は御祝儀扱いで譲ってあげるわ。」
そこでふと、補足し忘れに気付く。
「ああ、相手の魔力量が多過ぎる場合は封印失敗するけど、その場合再挑戦出来るわ。
容量少ない方から試すのがお勧めよ。後元気な時は無理だから、何らかの方法で相手を弱らせないとそもそも通じないから、その点は注意ね。」
「……随分詳しいのね。もう試したのかしら。」
警戒心というより不信感か?まあ敵意というには何か違うようだが。
「あら何か勘違いしているわね。私も今日、試すのよ?
それと大型が現れる回数はそこまで多くないらしいから、期待し過ぎないでね?」
手持ちの収納具を見せつつ皮算用を指摘すると、悔し気な顔で口籠る。
「それじゃ、そろそろ行くわよ。」
使い魔のふくろうを頭上に飛ばして旋回させながら、門に触れてエーテル錠を開く。
感覚共有なら兎も角、簡単な監視なら命令だけで充分だ。
「それじゃ行こう。」
グラトニーに促されたジュリアンが頷いて気を引き締めると、皆も頷き合って後に続き隊列を組みながら森に入る。グラトニーは今回真ん中だ。
一見グラトニーが護衛されている側に見えなくも無い。
片や。常人では視認出来ない遠目で様子を伺っていた羽衣の魔女リリスは、一同が森を進む様子を監視し続ける。
「全く。まさか使い魔を遠隔操作出来るとはね。」
素顔が気取られたのは予想外だったが、その程度で侵入が出来ない訳じゃない。
仮面ほどの質の高い変身が稀なだけで、魔女にとって変身能力のある呪詛は割と良くある普遍的なものだ。
羽衣の魔女自身も、羽衣に封じた死者の姿を自由に纏う事が出来る。
短期の潜入ならこれで充分学園の警戒網を掻い潜れるのだ。
尤も、毎回別人を用意せねばならないのは手間だが。
今回に至っては、森の魔獣を羽衣に封じて監視を続けているが、どうにも気取られたとしか思えない動きをされる。
「……成程、使い魔は見せ札でしたか。
どう考えても他にこちらを把握する手段がありますねぇ。」
(一定距離に近付く度、使い魔がこっちに近付くのは、その距離なら邪魔しないって意味ですかね?
私を罠に嵌めるなら懐に閉じ込めてから襲うでしょうし。)
実際現在の距離であれば、必要かはともかく介入は難しい。
探索自体は順調に進み、遂にジュリアンが秘密の森のダンジョン、その入口に到達して呪文を唱え、中に入る。
「まぁ鍵は閉めていきますか。こちらとしても問題はありませんが。」
樹の洞に入ったのは確認したので、呪符型の使い魔を放ってその場を離れる。
使い魔呪符の利点は使い捨てになり、一度放てば伝令元を負えなくなる点だ。
「さあ、こちらは予定通りです。後はお任せしますよ、埋伏の。」
元々、リリスの役割は此処までだ。
パトリシア視点。ライバル?に札束で殴られた時の心境を告げよw
パトリシアは顔的に中の上、可愛いとか言われても美人とは言われない性格美人タイプ。
多分ジュリアンへの嫉妬量は、彼女が性別問わずモテるタイプなのも大きいですw




