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ガラクタの学園  作者: 夕霧湖畔
第三部 襲撃の魔女編
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02.純血たち

 淑女の会。

 今後のアリバイ作りも兼ねて【呪具人形の魔導書】を見せると、カーリーは本を掲げて驚きを露わにした。

「まあ!これ幻の魔法傀儡子(くぐつし)クリス・クロノイドの魔導書、その原本だわ!」


「有名人なの?」

「勿論よ!誰にでも作れる専用呪具を産み出した発想の天才にして、当代最高のゴーレム使い!彼女が禁忌によって命を落としたのは正に時代の悲劇よ!

 クリス・クロノイドは存命ならば魔法世界の歴史を動かしたかもしれない偉人よ!」


 今度音声を記録する呪具を用意しておこう。

 前にジェンドから買い取った撮影呪具《撮影鏡》はこの場に置けないのが悔やまれる。

「カーリー様は現クロノイド家とも親交があってな。

 彼女の作った人形を幾つか所有している、まあファンという奴だ。」


「けど実際凄いですね。呪具というものは優れた物ほど魔法耐性の高い素材が不可欠。

 なのにこの魔導書は素材すら魔法として産み出せる低コスト。」

 ガトレスとメフィレスの二人も、興味深げに魔導書の中身を読み耽る。


「へ~、本当に全部魔力だけで賄えるんだ。

 噂には聞いていたけど、これを見ると軍勢なんて異名も冗談に聞こえないわね。

 あれ?専用発動具って何かしら?」


「ああ、二学年以降は魔物素材を加工して自分専用の杖、発動具を作るみたいね。

 これは魔物素材抜きで作れる発動具の解説よ。」

 レイリースの疑問を補足する形で発動具の話を口に出すグラトニー。


 あらもう辿り着いていたのね、と敢えて専用呪具などとぼかして告げたカーリーが小首を傾げる。

「それを全部見れば当然辿り着くわよ。

 後原本って言ってたけど、これ複製出来るの?」


「ええ勿論。普通の魔導書は独自の秘術加工を施して秘密を守るものだけど、この魔導書の特徴は極めれば複製が容易な術式だけで作ってあるの。

 魔法使いにとって革命的な発想なのよ?専用発動具の技術開示だなんて。」


 ドームハウスどころか文字通り邸宅が買える金額を提示されたが、割と奥の手になる本なので流石に断った。尤も、価値を知っていればそれも止む無しの名品の様だ。



「で?何か話したい事があるんじゃないの?」

 会合の帰り、自分達の部屋に向かう途中。

 二学年の三人と別れたレイリースの暗い顔に、グラトニーの方から話を促す。


 周囲に人影も無く、暫く逡巡(しゅんじゅん)した後、意を決して口を開く。

「ねぇグラトニー。あなたは純血の歴史を聞いて、どう思ったの?」

 おや。もしかしてそれを悩んでいたのか。


 だとしたら聞く相手を致命的に間違えている。

「魔法世界の住民が無能世界からの難民かも知れないって話よね?

 それならあなた、勘違いをしているわよ?」


「か、勘違い?」

 心を読まなくても分かる。レイリースは先祖が同じと聞いて純血主義に迷いが出来たのだろう。無能人差別は悪い事なのでは無いか、と。


「ええ。あなた魔法世界と無能世界で戦いになったら勝てないだけだと思ってない?

 だったら間違いよ。勝てるのは局地戦だけ。戦えば必ず負けるの、最終的に。」

「な!」

 感情的に反発するが、口元に指を立てて声を抑えさせる。


「良く思い出して?一対万、百人殺したって千人殺したって戦争は終わらない。

 全員殺さずとも支配すればいい?服従させればいい?誰が、どうやって?

 一人で何万人を管理する気かしら?無理ね。到底足りない。どこかで暗殺されて終わりよ。

 そもそも管理出来る程近付けば、魔法使いの勝因、距離の利点を失ってしまうわ。」


 種族戦争、民族戦争じゃ無ければ全滅させる必要は無いだろう。

 だが貴種と無能人、魔法を使える者と使えない者。敵が味方に裏返るには、戦争の前提や原因に差別以外の要因が必要だ。


「難民かも知れない。それは即ち、負けた後かもしれないという意味よ。

 対等になったら負けるのは純血達だとしても、あなた達は差別を止められるかしら?」

 レイリースの顔色は白く、歯が鳴り続ける程に足が、全身が震えている。


 難民。楽園。自分達だけの世界。

 箱庭の外は地獄だと相場が決まっているのだ。

 何と残酷な話だろう。自分達の優位が、才能が絶対のものでは無いという証拠の前で、自分達が少数派、弱者の側であると自覚するのは。


「助言が欲しいのなら、純血や雑種、無能人という枠組みに拘るのは止めなさいな。」

 力があるのは安心だ。優れていれば誇らしくいられる。

「力が欲しいなら与えてあげられるわよ?けれど、私が誰彼構わず力を授けて回る、聖人君主の類では無い事は、ちゃんと知っているわよね。」




 グラトニーが立ち去った後の廊下で、レイリースは震える足で自室に向かった。

 失敗した。相談するんじゃなかった。相談するなら先輩方にすべきだった。


 グラトニーが求めるのは強者だ。それも吹けば飛ぶ風見鶏では無い。

 命を投げ出しても後悔しない、断固たる心の強者だ。


 自分が弱者の側だと思い知らされるとは思わなかった。

 自分の手が、足が、才能が、血筋が。

 自分の頼りにしていたものがこれ程頼りないとは思わなかった。


 そうだ。何故アレに相談しよう等と愚かな事を考えたのか。

 アレが一度足りとて生まれを呪っただろうか。弱さを恥じただろうか。


 禁忌の魔女。戯れに世界の一欠片を滅ぼした悪夢。

 きっと、あの怪物と、トテモ良く似ているに違いナイ。


 クリス「いや、開示して困らない情報しか公開してないし……。」

 クリスは芸術家扱いされている技術屋ですwカーリー様ですら理解がある方という体たらくw

 レイリースは間違いなくエリートの優等生です。

 そしてグラトニーはバグ枠視点で、特に裏表関心無く、割と真面目に相談に応えました。

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