04.????
禁書庫。冬季休暇中。
オルガノンは未だ山済みの未整理禁書を、新しく追加される分から確認し、処理する。
古い方からやればと思うかも知れないが、新しい禁書は大抵下らない物が多い。
例えば『水虫増加を代償に腰痛を治す魔術』や『手を繋いだ男女が全裸の間、約二時間お互いの体を交換する魔術(戻れなかった)』等だ。
収納と分類の手間を考えれば、新しい禁書から整理する方が実に効率が良いのだ。
というかここ十五年間は、夜の禁書の比率が年々増加傾向にある。
これだけでも学園長に殺意が湧くのは当然では無いか。
「大体自分で処理出来るのに全部私に回すのが既におかしいわ。貴方もそう思わない?」
本棚に並んだ禁書の一つが床に落ちたのを見て、オルガノンが溜息を吐く。
「あの学園長は率先して禁書の処理を引き受けていると思うよ~?」
しってる。魔導書の処理は希少技能だが、今でも探せば百人くらいはいるだろう。
「あっちもそうだけど、出来ればあなたにもノックするくらいの礼儀は欲しいわね。」
開いた本から出て来た人影に向けて、オルガノンは視線だけ動かして解体を続ける。
「やだよ、監視されている扉を使って入るなんて冗談じゃない。」
理由は納得出来るが、乙女の部屋に入るのだから多少の配慮はして欲しいものだ。
「それで?今はアヴァロンだったかしら。
何の心算であの子達に関わるのか、私にも教えてくれると嬉しいのだけど。」
現れた人影は小首を傾げて、ああ成程と呟く。
「んっと。昔の名前を忘れたのはホントだよ?
目的も何も、今年は運命の子が来訪する預言の年じゃん。
下手すれば歴史の変換点を、間近で見物しないなんて嘘だよ~。」
有り得ない有り得ないと嬉々として語る。
幻獣魔獣どころか、生き物かすら不明なこの謎存在は、相も変わらず楽しげに笑うのだ。
「んでさ。
君が彼に何を言ったのか知らないけど、あたしの素性を気軽に話して欲しくは無いかなぁ~って。」
「話してどうするの。私はあなたに余計な手出しをして欲しくないんだけど?」
出来れば赤の他人として場外で傍観していて貰いたい。が、既に気付いた時には手遅れだったというしかない。まあ何が出来たかと問われると警告止まりなのだが。
簡単にジュリアンとの話を伝えると、それだけ?と逆に驚かれた。
「いくらあなただって、学園長と正面対決したらどうなるか分からないわよ?
私は正直、運命の子がナイトバロンの子を指す様に歪めた可能性を疑っているくらい、あいつのナイトバロン狂いは信用してないわ。」
「ああ。でも運命の子の預言って一つじゃないでしょ?
他の誰かの可能性なんて入りようがあるのってのも、一応聞いておきたいかなぁ。」
そういう事かとさり気無く取り替えた愛用の魔導書から手を放し、天を見上げる。
「有り得るわね。重要な予言はたった一つ。
他はあくまで運命の子を前提として占い直した、いわば答えの確認となるもの。
自粛の為と称し、先に最有力候補を広めてしまった時点で他の預言は前提情報を取り違えてしまっているわ。さながらトランプのジョーカーの数が増えるようにね。」
「あ~。基本ルールにローカルルールを追加する感じなのかぁ……。」
ま、いいさと適当に腰かけた本棚から飛び降り、床に落ちた本に足を踏み入れる。
「こっちも聞かれたり頼まれたら気分の範囲で手を貸すけど、出来れば傍観させて欲しいかな。
何であたしの素性は黙っていて欲しいんだけど。」
溜息を吐いて、面倒な要求をと微かな頭痛を振り払う。
「それは聞かれても答えるなって意味かしら。」
「適当に誤魔化してくれれば良いよ~?
聞いてくれるなら一度だけどっちかを助けてあげる。」
「そうね。その条件で構わないわ。」
それじゃあと影が消えた後の本を拾い、本棚に戻して最近多くなった溜め息を吐く。
「どっちか、ね。此処の防諜結界ももう一度見直そうかしら。」
人の訪れない筈の禁書庫で、何故こんなにやる事が山積みなのだろう。
本日投稿分、二話目です。回想編最終話。
全ての魔女は学園長と連絡が取れます。だから自分の陣地にはほぼ全員、念入りに防諜網を張っていますw張らないのは出来ない者だけ。
この件に関してだけは協力出来る者は全員連携しており、学園長すらバレずに監視するのは不可能になってます。
特に侵入対策はガチだけど、禁書はメッセージ用だと思って別枠にした結果です。




