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ガラクタの学園  作者: 夕霧湖畔
第一部 入学編
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03.授業開始

 通称地獄の歓迎会から一夜明け、本日から授業が始まる。

 グラトニーと同室になったのはアヴァロンだ。本当は別人だったが同室だと判明した途端に相方を恐怖で気絶させた者同士、急遽部屋割りを変更されたのだ。


「あらアヴァロン、つまみ食いは行けないわ。」

 寝ぼけ眼で夜襲を仕掛けて来た新入生の腕に噛み付くアヴァロンを窘め、一旦廊下に転がしてから先輩に引き取って貰い、二人で食堂に向かう。

 尚メイザー先輩は青褪めた顔で生死を確かめていた。


「あらあら犬臭い!無能人の癖に恥ずかしげも無く食堂を訪れるなんて!」

 食堂に来た途端、例の巨乳金髪少女が大きな声で注目を集める。


「そう言えば今朝の襲撃者も犬だったわねぇ。」

「半獣人。純血なのは間違いないけど、ちょっとマズかった。」

 お陰で目は覚めたと口直しを所望するアヴァロンに、災難ねぇと同情する。


「え?いや、食べた?……えっと、何を?」

「夜にナイフ持って来た先輩よ。フォークを用意しなかったのは手落ちよねぇ。」

「あたしだって美味しい人を食べたいよ~?」

「あらあらそうよね、御免なさいね?」


 ふと視線が合った巨乳少女は犬人男と違い、とても肌が綺麗で柔らかそうだ。

 考えている事が伝わったのか、彼女は名乗りもせずに悲鳴を上げて逃げ出した。

「そう言えば誰だったかしら?」

「ケイロン家の長女レイリース。純血第五位の名家で、多分美味しい子。」


 やっぱり?と思いつつ食堂で注文を済ませて、普段の食事は本人曰く雑食というアヴァロンと、未知の食材の意外な美味しさに舌鼓(したつづみ)を打つ。

 皆がテーブル一つ分以上距離を取り、家では久しく無かった快適な食事を終えて移動する。


 授業は各教師ごとに全てのスケジュールが発表されている。

 授業内容には番号が振られており、各授業ごとに設定された課題を時間内に熟せば完了で、最低九割の番号を受講した者が学期末の試験を受けられる。

 合格すればその学期は単位獲得だ。


 同じ授業は繰り返し受講しても良い。

 試験で合格すれば授業に出席してなくても合格となる。殆どの授業は学期内に二周以上繰り返されるので、早い生徒は次の学期の授業を受ける事も出来る。


 但し、最初の一回だけは全ての授業を受ける必要があり、新入生は全員、寮を問わずに一度は顔を合わせる事になる。




 呪文学。教壇に立ったのは、片眼鏡にマントの似合う紳士だ。


「改めて自己紹介しよう。我が名はユエル、呪文学の教師だ。

 先ず初めに、呪文学とは何か。君達は予習してきているかね?」


「はい!全ての魔法に必須の呪文、その意味を覚え、実践する教科です!」

「不正解。魔力を呪文で制御し、安定した発動を促し体系化したもの。

 それが魔術だ。呪文が必須なのは魔術に限る。

 魔法には魔術に限らず、暴走状態の魔力、体質による制御も含む。」


 一般的な魔法使いが使うのは全て魔術。故に魔術と魔法を同列に扱うのは厳禁で、呪文学で習うのは魔術のみ。


 呪文の文字一つ一つの意味を覚えた後は実践。様々な魔術として発動する呪文の数々を学び、特に変化の術と飛行術を使えない魔法使いは卒業出来ないという。

(ま。文字は全て覚えたから、後は魔術を試せればいいわね。)




 防御学。教壇に立ったのは赤毛の屈強な男だった。


「入学式で説明した通り、防御学の教師を務めるナイトメアだ。

 防御学とは、全ての魔術、魔法に対する対抗手段を学ぶ授業だ。


 選択式になっているが、本音を言えば諸君が魔法使いを目指す以上、全員に単位を取って欲しいと思っている。

 理由は単純、上に行けば行くほど命に係わる授業が増えるからだ。

 断っておくが、この学園を生きて出た者に防御学を疎かにした生徒は居ない。」


「教師ナイトメア、ですが防御学は必須科目になっておりません!」

 先駆者(パイオニア)の生徒が抗議の声を上げる。


「その通りだ。事実卒業には必須の科目じゃあない。

 だが事実、防御学を学ばなかった生徒に卒業生は居ない。折角だから寮長や教師にも色々聞いてみろ。」


 魔力に対抗する手段は魔力に限るという。但しそれでは高魔力の持ち主に対抗する手段が無いので、術の弱点や抵抗力のみを高める手段が開発された。

 それが防御学の基礎であり、後は実践(じっせん)なのだとか。




 魔道具学。灰色の髪を伸ばした不健康そうな半眼の美女だ。


「魔道具学教師マルガルだ。

 無能に費やす時間は無いからやる気の無い奴は来るな。」


 魔導具学はその名の通り、呪具や魔法薬等を作る教科で、魔力量の過多が製作物の上限に関わる才能ありきの分野だという。

「かと言って、魔力さえ多ければ才能があると勘違いする奴がいる。

 そういうのは無能と相場が決まっているがな。」


 魔法薬は魔力の性質操作、微調整こそが最重要、呪具に至っては魔力圧縮が一定以上を常に維持する必要があるという。


「加えて魔力と一口に言っても、マナとエーテルの違いがある。

 マナは自然依存で素材からの抽出が必須だ。精霊もマナで出来ている。

 エーテルは生物依存。魔術はこれを用いるが、マナと違い天然で属性が宿っていないので、ここに呪文が必要となる。」


 魔法薬はマナを用いるか、エーテルを変化させる必要がある。

 呪具にマナを用いる手段は秘術と呼ばれ授業では習わない。エーテルの制御必須の授業だ。


「いずれも通常の状態では目に見えないから、違いを感覚で把握出来る訓練が必要になる訳だ。これが出来ない奴は、この授業を受けるだけ無駄だと理解しろ。」

(目に見えない、ねぇ。果たして本当かしら?)




「な、なあアンタ!ちょっと良いか?」

「何かしら、運命の子さん。」

 席を立とうとしたところで、近くの席の金髪少年が呼び止めた。


「や、止めてくれよ。オレにはジュリアンって名前があるんだ。

 自分がよく知らない事で好き勝手言われたくないぜ……。」


「へぇ。確かに私も運命の子なんて言われても分からないわね。

 それでそのジュリアンさんは、何故私に声をかけたのかしら。」


「!ああ、いや、実はオレ孤児でさ。実家が魔法と無縁だったもんで、周りと何を話して良いのか分からなかったんだ。

 んで、あんたが魔法の無い世界から来たって聞いて、話が合うんじゃないかって思ってさ。」


 急に落ち込んだと思ったら妙にテンションが高くなったジュリアン少年は、赤い瞳を輝かせて手を伸ばす。


「で、出来ればアンタと友達になりたい!駄目かな!」

(((い、言った~~~~!!)))

 ざわり、と既に大多数が逃げ出した教室の空気が変わり、皆が教室を覗き込んで逃げ遅れた数人が驚愕する。


 ジュリアンは俯き気付いていないようだが、周りの視線は既に勇者、英雄を見る眼差しだ。

 何コレ余所がかなり面白い。


「構わないわよ?なら折角だし、次の教室に向かう間にあなたが何故運命の子と呼ばれているのか、教えてくれないかしら。」


「あ、ああ!勿論さ!

 あ。と言ってもオレも実は又聞きで、オレを家から連れ出してくれた人から聞いた話になるんだけど、それでも良いか?」


「ええ構わないわ。そう言えば一応名乗っておくべきかしら?」

「ああ、そっちは構わない。恐怖の権化グラトニーって噂になっていたよ。

 その癖本人と話した奴って誰も居なかったんだ、酷い話だろ?」

……わぁ。じゃあ何も気付かずに話しかけてきたのか。


 因みに期待の周囲は拳を振り上げて無言で英雄誕生を讃えた後、グラトニーの噂が話題に上った時点で全員逃げ出した。残念。

「グラトニー?次の教室へ行かないと。」

 入れ違いに戻って来たアヴァロンの言葉で我に返ったジュリアンと共に、改めて彼女の紹介をしながら次の教室へ向かう。




 今から約十五年前。禁忌の魔女と呼ばれた存在が魔法世界を半ば支配していた。

 あらゆる邪法禁呪に手を染めて、数ある魔法世界の丸々一つを滅ぼし消滅させた最強最悪の存在。


 しかし全ての魔法使いが屈した訳では無く、カーズ学園長ダーククロウを始めとした数多の有力魔法使い達が団結して立ち向かう中、遂に英雄と呼ばれた魔法使いナイトバロンが相打ちで禁忌の魔女を討ち取り、魔女の魂を封印し勝利を収めた。


 だが同時に禁忌の魔女は二十年以内への復活を予言しており、その禁忌の魔女への対抗手段を探した時、十人以上の腕利き占者達が揃って同じ予言を引き当てた。


 それが運命の子。運命の子が、究極の魔女を討つという予言だった。

 運命の子は十年以上を魔法知らずに過ごすと記され、やがて期限が近付くにつれ予言は一人の子を指し示す様になる。


「それがナイトバロンの子で、孤児として親戚に引き取られた英雄の息子。

 オレの事だったのさ。」

 豚カツを食べ切り、ジュリアンが話し終える。

 結局当日は時間が取れず、翌日の昼食時に揃って話を聞いていた。


 平然とした顔を見るに、やはり彼は何も気付いていないらしい。

 食堂で周囲の生徒達が遠巻きにしている訳を、単に無能人を差別しているからだと思い込んでいる。憤慨(ふんがい)を露わに周囲に視線を走らす。


(ねぇアヴァロン。あなたも何も感じていないのかしら?)

(ん。いつもチリチリしているよ~?)

 アヴァロン曰く、彼は引き出せていないだけでかなりの潜在魔力があるという。


「じゃあ英雄の子としては今の自分をどう思っているのかしら。」

「どうもこうも無いさ。父さんの話には興味あるけど、オレは面識が無いんだ。

 見ず知らずの相手の功績で褒められても困るし、実際のオレは他の連中の常識が分からない劣等生なんだ。


 加えて純血だの貴種だの雑種だの、しかも見た目人間かどうかもあやふやな相手よりもそっちの方が大事だってんだから全然ついて行けないぜ。」

「そこは同意するわ。」


 そもそも純血というのは才能が判明した古い家柄というだけらしい。

 魔法研究の結果異形化しただの、そもそも異世界からの移民だのまであるのに、名門一族の意義が全く分からない。

 魔力量だけでは駄目なのかと言いたい。


「単に引っ込みがつかなくなってるだけだと思うよ~?

 それにグラトニーを自分達より上にしたいとは思わないだろうし。」

「それはそうねぇ。」


 いのち危ないし。

「いや、そこ同意すんのかよ。」

 ジュリアンの突っ込みは聞き流した。

 初投稿です。投稿手順に苦戦中。

 色々試しているので後で修正するかも。

 2/22、ルビ修正。

 2021/9/24 改行スペース他微修正。

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