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ガラクタの学園  作者: 夕霧湖畔
第二部 平和な学園編
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第三章 旧校舎の魔女 01.紙の魔女の新たな課題

 鏡の魔女ラビリスの協力を得て、夜間であれば禁書庫への来訪は容易になった。

 エーテル球を貰い常時訓練が可能となった分、他の学生達と差が付いたのは感じても、現状維持で淑女の会の三人に追い付けるとは思えない。


「というより、半ば軍事学校みたいな位置付けなのに、丸で子供騙しの様な魔法しか使えないのは不思議でしょうがないのよね。」

「そりゃ入学したては魔法を使えない子の方が多いもの。

 逆に言えば、今はその程度の時期って事よ。一体何が不満なの?」


 今やっている事は、人間大の超巨大エーテル球を他の大中小様々なエーテル球と同時に浮かせながら、隙間を潜り抜けて来る紙飛行機を避ける特訓だ。

 最初こそ高出力を安定維持するのに手間取ったが、今は死角から飛んでくる紙飛行機を察知するのにとても苦戦している。


 因みに漂っている紙飛行機の数は丁度百、襲ってくるのはその内十前後か。

 つまり当たり外れを視覚外から来ても察知出来るかが重要な訳で、これもかなり贅沢な特訓の類だとは理解している心算だ。


「だって今命を狙われたら普通に攻撃力不足、防御力不足で負けるわ。」

 発動具限定なら盾や槍もあると分かったのだから、武装したいのは人情だろう。


 いやそんな物騒な人情無いから、と否定されて深々と溜息を吐き。

「そもそも、貴女の考える強力な魔術って何があるのよ。」

 無いから聞いている、ではない。これは講義の一環だろう。

「そうね。一度に使う魔力消費の大きい魔術、かしら。」


「言っちゃ悪いけど、幻の霧で複数の剣を出せれば攻撃魔術としては十分な殺傷力があるし、現段階でもあなたの魔力と物量は破格よ。

 ある意味で後は複雑な操作や手数を増やすしかないの。」


「変化の呪文は無いの?」

「闇雲に外見だけ変えても駄目よ。正直ケイロン家の『無手』は十分に破格。

 更に『亡霊騎士』まであれば、変化だけで今のあなた以上の力を振るうのは無理ね。」

 既に今現在で、並の学生の域じゃないと、断言される。


「成程。詰まり、私に一番足りないのは複数の呪具を扱う技術なのね。」

 プラスアルファ。それに相当するものが無い魔術師は決して強くは無い、という話になるのだろう。実際今オルガノンが飛ばしている紙も魔導書という呪具の一種だ。


「あら良く分かっているじゃない。

 その通り。碌に呪具を作れない魔法使いは、それ相応の力しか発揮出来ない。」

 教師達が適性の無い分野は金で何とかした方が良いと教える理由は、生計を立てる事を優先しているからだという。呪具を作る材料費が普通は稼げないのだ。


「上を見るなら一分野だけの秀才じゃ駄目。複数の分野の知識を足して、新しい技術知識を自分で探し出せる程に多芸になりなさい。

 そもそも魔女は、研究過程で道を踏み外せる程度に優秀なのが条件なのだから。」


「でも。それだけじゃないわよね。」

 煙に巻いた心算かもしれないが、そうはいかないと同時に飛来している紙飛行機をエーテル球が狙い落す。

「ッ!!」


「魔法世界には様々な生き物、更には人の手で生み出された魔法生物が存在する。

 未だ殆ど入っていないけど、秘密の森には数多くいるんでしょ?

 彼らを閉じ込めておく本当の理由、そもそも学園が防衛拠点として有益な訳。更に禁忌の魔女がわざわざ手勢を率いて学園を攻略しようとした訳。

 呪具作成に必要だからじゃないかしら?希少生物達の肉体素材が。」


 そう。それこそが真のプラスアルファ、外部電力ならぬ外付け魔力の存在。

 そして魔力性質の変換、呪文省略の種。

 グラトニーの指摘に若干の躊躇後、深々と口元を殆ど動かさずに溜息を吐くという器用な真似をしながら天井を見上げて結論を下す。


「……そこまで気付いているなら、下手に惚けない方が良いわね。

 その通りよ。優れた魔物素材を発動具に加工する、それこそが一流魔術師の条件。

 一流魔術師の魔術を使いたいなら、まず見合った素材を手に入れる必要が合る。」


 け、ど。と強くオルガノンは無表情に凄む。多分凄んでいる。

「自分で作った発動具と他人が作った発動具なら、魔力のロスも精度も桁が違うわ。

 だから私があなたに発動具を貸し与える事は無い。」


「要は自分で発動具の元を狩って来いって話よね?」

「違う!というより、あなたが求めているのは魔女対策でしょう?

 なら、早い内に他の魔女を味方につけてしまいなさい!私達は一枚岩であなたに協力をしている訳じゃないわ!」


「あら。やっぱりあなたには潜伏中の魔女の見当は付いているのね?」

 諜報能力に一番長けていると言っていた彼女の縄張りが、図書館内だけではあるまい。

 敢えて聞かなかったのは、消耗した状態でもう一方を相手したくなかったからだ。


 その問題を指摘すると、又も溜息を吐かれる。

「見当と目途は、ね。折角だから次に味方に付ける場所を指定してあげる。

 旧校舎の魔女は、茶会の魔女と呼ばれているわ。あなたの持っているハッカ飴も魔女の特色に由来しているなら、彼女以上の専門家はいない筈よ。」

 案外あっさり見つけてくれるかもね、と話を締めくくる。


「大体にして、手加減してくれそうな魔女に勝てない奴が、見つかったら殺しに来るであろう魔女と戦おうって言うのが生意気なのよ。

 生意気してくれた弟子に、今度は今から飛ばす紙飛行機全てを打ち落とし続けて貰おうかしらね。」

「げ。」


 勿論その巨大球は浮かせたままよ、と追加合わせて百の紙飛行機が一斉に狙い定める。

 少なくとも彼女に勝つのは先が長そうだ。


 百の紙飛行機を同時操作するコツ。超練習するw

 全部プログラムとか、実はパターンがあるとか一切無しの、イメージ精度だけです。

 魔女の中では圧倒的に才能も魔力量も足りず、教師達とも良くて五分。

 なのに知識と経験だけで教頭相手に互角の勝負が挑める人です。

 教育者としては人格含めて魔法世界最高の人材ですね。

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