第一章 呪法学園カーズ 01.到着
扉を開けると異世界だった。
「まぁ!まさか森の中に続いているなんて。」
「怒らないで下さい。入学者は大勢いるんで先ずは駅へ向かわないと。」
道は何処にあるのかと思ったが、スカウト女が鈴を鳴らすと駅が来た。
「これは驚きね。でも効率悪くない?」
「えっと、入学者は推薦と希望の二種類がおりまして。
推薦が揃ってから希望者の当選数が決まるんです。なので機材を受け取って寮で数日間過ごして頂きます。入学式はそれからです。」
「成程。じゃあこれから機材を受け取る店に向かうのかしら。」
「いえ、時間に成ったら店が来ます。」
「だから効率悪くない?」
店がパンクするんじゃないだろうか。
「店の数は無限に増えますので、その辺は特に。
詳しい説明は現地で行いますが、お立場は御承知ですか?」
立ち話をしながら待つくらいなら椅子も増やせと思うが。
「ええ、呪法学園は五年制で魔法使いになれば卒業出来る。
但し早ければ三年だったわよね?」
「はい。但し無能世界と呼ばれる魔法の使い方を知らない世界の者が五体満足で卒業した例だけは御座いません。無能世界出身の学生は今でもいるんですけどね。
理由は単純。魔力の知覚を魔術に頼るので、術が暴走し易いんです。」
「五感しかないあんたらと六感を持つ俺達、どっちが優秀か分かるだろ?
だから無能世界の連中は等しく無能人、多少の才なんざ関係無い。所詮卒業出来ない程度の連中だからな。」
「ふうん、それで?」
スカウト男が不快気に鼻を鳴らす。
「理解出来ているのか?お前は在学中ずっと無能人として見下され続ける訳だ。
帰りたい逃げたいって言っても卒業するまで出られないぃあ!
あぅ!ぁ!ぁ!あ!止めて、痛さが絶妙で新しい扉が開けちゃう!」
即止める。流石にコレに付き纏われるのは嫌過ぎる。
「あの、何故?」
スカウト男が腕を捩じられながら腰を突き上げる様に怯むスカウト女。
「姐さんって言ってた時の心境を思い出させようとしたのよ。
死なないなら痛みでトラウマを刻み付けるべきでしょう?」
今のは太腿に不可視の針を突き刺し続けた男の反応だ。
「人だって差別する。人だって苛める。なら対処法も変わらない。
恐怖を刻み付ける。どっちが弱いか知るだけよ。」
但し変態は除く。というかテメー、その顔既に扉開いてるだろ?
「成程。覚悟は最初から十分の様ですね。」
「ええ、最悪死なない事に恐怖させればいい。
そもそも私、魔力を知覚出来ないのかしら?」
「あの!やっぱりコイツに魔術教えるのは危険だと思うんですけど!」
(同僚が変態だと知ってしまった私は、今後どのような顔で仕事を続ければ?)
(諦めろ。若しくは扉を閉じろ。嫌ならどっちかの記憶を消せ。)
「(参考にします。)あ、早速到着したようですね。」
店で受け取った鞄の中には魔法の杖や水晶、教科書が入っていた。
「そう言えばノーパソは使えるのかしら。」
「ネットは使えませんが、電力を何とか出来れば恐らく?」
なら持って来て良かったか。まあ予備充電器に電気を溜められるかだろう。
「あ、出口は裏口からです。学校に繋がっています。」
「もう効率は突っ込まないわ。」
店の外は森に繋がっており、扉が閉じると店ごと消えた。
正確には森の畔で、目の前には湖が広がり、橋で繋がる城があった。
「あら、城の塔の上で手を振っている女の敵そうな優男は誰かしら。」
グラトニーの質問に遠くの優男がショックを受け、スカウト達は何で見えるんだと口を噤む。
妙な沈黙が続いている間に優男が数人掛かりでリンチを受け、塔の屋根を突き抜けて爆発する。
「あれ何?」
「汚い花火、じゃない校長です。
教師達の制裁を受けた様ですので注意して橋を渡りましょう。」
幸いにも道に何かを仕掛けたという話では無かったらしく、問題無く目的の寮に付いた。
「では寮の案内は寮母さんになります。質問も彼女に。」
「彼女。」
受付から覗く蛸を見る。
「オネェでも彼女と呼ぶじゃないですか。ともかく我々の案内は此処までです。
それでは失礼いたします。」
スカウト女が足早に、スカウト男は若干名残惜しそうに橋の脇に消える。
「さて案内と説明をお願い出来るかしら。」
「オスです。こちらの紙を参考にお願いします。」
やたら可憐な声で入寮のしおりを渡された。しおりの地図、寮の平面図の一室には花丸が付いている。ええと。
「……お名前は?この花丸の場所が私の部屋になるのね?」
「はい。ただ今は個室ですが、在学中は二人部屋に移り、基本変更されません。
あたしの名前がオスです。でも性別は有りません。」
「……魔法世界の住民だったわね。了解したわオスさん。」
寮の中は普通のビジネスホテルよりは広かった。風呂場とトイレが別室なのは大事。けれど隣に台所を並べたのは許せない。せめて風呂場を隣にしろ。
「あら、テレビがあるのね。コンセントで充電も出来る……。」
ぐらとにーは狼狽えない。先ず入寮のしおりを確認し、コンセントやテレビが自分の知る常識と同じ物かを確認する。
「テレビはこの世界の番組しか無いのね。
で、コンセントは食事にする種族もいるためのもの、と。」
並行世界だから物理法則は同じで、元の世界から持ち込んだ電化製品は使えるらしい。
使用料はかかるので、家電を使うと食事時のグレードが下がり、嫌なら追加料金を払う方式になる。買い物は入学後まで不可、食事もルームサービス推奨。
「流石に同じ名前の別料理が出ると困るわね。」
となると試す方が先で、自炊は当分不可か。
入学式は三日後、地味に辛い日々では無かろうか。
2021/9/23 改行スペース他微修正。




