04.勝利の剣
荒れ狂う炎を獣達が撒き散らす。
『バルログ』や《ヒドラ》と言った大型の魔物達の攻撃を避けながら、四人は空と地上の両面で飛び回って駆け回り。
絶え間無く増え続ける魔物達を削りながらアマンダへの反撃を繰り返していた。
「うぉおおおお!『起きろ』!そして『噛め』!ハイ!返り討ちぃ!」
口のある大鉄球を取り出す序でに《ブラックドッグ》を潰し、そのまま燃える大男バルログに噛み付かせたポートガスだが。アマンダの投げた《戻る槍》が鉄球を粉砕する頃には既に複頭毒蛇ヒドラの影に隠れていた。
『お前ホント逃げるの上手いな。』
喋る天馬こと《ペガサス》のクロフォードが背中の青年の手綱捌きに呆れ返る。
「うるへ~~、逃げ回るしか出来ない相手としか戦ってねぇんだよ!」
言いながら空飛ぶ円盤こと鴉の魂を宿した丸鋸、『円ノコ鴉』を放り投げて味方の援護と敵の足止めは忘れてない。
散財と引き換えだがある意味で一番活躍しているのは、間違いなく彼だろう。
「舐めるなクソ餓鬼ぃ!」
「ひぎぃ!」
薙ぎ払う炎の帯【燎原反】を躱しつつ、でポートガスが一番狙われ続けていられるのも彼の巧みな反撃と、絶妙な視界に入り具合によるものだ。
「ちょ、遠過ぎ!『眠れる砂土竜、爪を砥げ、轟き群れて突き進め』!」
『壁砂嵐』の呪文で辺りの炎を掻き消しながら、サンドライトが仲間達の移動範囲を確保し、適時様々な手段で盾を作る。
「仕掛けるぞパトリシア君!
『数多の首よ、蛇鱗の皮肌、包んで被れ』!」
「『爆ぜろ六番、十二番』!」
翼となっていた白マントを更に硬質化した刃に代えて、急降下しながらアマンダに迫るのはストラードで、足元の呪符が『氷柱』に戻り上からの注意を削ぐ。
本来であればジュリアンが斬り込む位置に、今はパトリシアとストラードが代わりを務めている。
「しゃらくさい!」
まるで怪力の呪文が懸かっているかのように【錘】を振り回して『氷柱』を弾くが、直前で身体を捻ったストラードの刃が擦れ違い様にアマンダの背中を裂く。
舌打ちと同時に血飛沫から『ブラックドッグ』が増えて血が止まり、炎に炙られると傷口すら見えなくなる。
パトリシアが追撃に放った『氷柱』はあっさりと弾かれた。
増える魔物達は適時減らし続けているが、一進一退と言うには学生側に回復手段が乏し過ぎた。
時々紙飛行機や紙包丁が一同の致命傷を防いでくれるが、オルガノンの手を煩わせる程に稼ぐべき時間が伸びるのは全員が承知している。
だがそれでも多少の傷では全く止まらず、何より全く魔力の尽きる気配が無い、消耗しているかも定かじゃない相手と戦い続けるのは気力が削れる。
だがそれでも、自分達はジュリアンを矢面に立たせるために来たんじゃあないと言う強い思いが、彼女らを突き動かしていた。
「『繋げよ雪娘、凍らせ凍れ』!」
「おいパトリシア!お前一旦下がれ、魔力が先に尽きるぞ。」
眉を顰めて口を開こうとするパトリシアを遮り、天馬を寄せたポートガスが小声で確認を取る。
「それ例の奴だろ?準備早められるか?」
「ん、呪文だけに集中すれば。タイミングはこっちで良い?
『繋げよ雪娘、吹雪いて包め』!」
直ぐに意識を切り替え、サンドライトには自分の方から伝えると頷き更に小声で『小吹雪』の呪文を《槍》に注ぎ込む。
分かったと頷いたポートガスは、ストラードに向けて身体を傾ける。
二手に別れた後は《ペガサス》のシャロワンを大物達を引き付ける様に降下しながら、鮫型の壁を生やす『噛み鮫』で突撃を仕掛けたポートガスを援護する。
そのまま近くの『バルログ』に突撃を仕掛けながら思わず歯噛みした。
(駄目ね、私じゃあそこまで周りに気を回せない。)
状況を見て動く事は出来るが指揮などと言った、他人の行動を把握したり戦況の俯瞰までは中々気を回せない。
パトリシアは自分にジュリアンの代わりが務まらないのだと、つくづく思い知らされる気分だった。一時は何もかも足りないと言う焦りが心を苛んだ。
ジュリアンとの距離がどんどん離れていく感覚につい弱音を漏らした時。
『けっ。秀才様は出来る事が沢山あっていいよな。』
思わず顔面を殴り倒した後、落ち零れにはそもそもスタートに立てないと愚痴られたが、やっぱり悪いとは思えなかった。
流石に男としてデリカシーくらいはあるべきだ。
けれどまあ。
(ジュリアンの真似なんかしてたら、力になんて成れないわよね!)
「っ!『現身よ影よ、目覚めて映せ、型より出でて己を示せ』!!
『スケープゴート』!!」
退路をモンスターに塞がれて諸共潰さんと落ちて来る【九龍玲瓏塔】に、咄嗟に唱えた不思議な羊の毛に呑み込まれたパトリシアは、塔から少し離れた場所で毛玉から放り出された。
顕在召喚での『スケープゴート』は収納具の様に対象を仕舞い込む。
どんな攻撃でも一度は必ず躱し切れるのは有難いが、正直謎生態過ぎると思う。
けれどしかし。
(油断した!ちゃんと集中しないと、役に立つどころじゃないわ。)
『呪符』が造り出した木影に隠れながら、促される様に伸びて来た偽物の楼閣塔の影に避難させて貰って、倒れ込む様に息を吐き出す。
急激に吸い上げた魔力は術者の体に負担をかける。
縋る様に握り締めた新しいパトリシアの秘蔵呪具《吹雪の槍》は、その名の通り【雪娘】の呪文全てを蓄えて一度に解き放てる投げ槍だ。
既に『冷却』『凍結』『小吹雪』の呪文は注ぎ終えた。
使い捨てでは無いので『戻れ』と唱えれば何度でも再利用出来る。
今のパトリシアに出来る最高の切り札であり、別に全ての呪文を蓄えずとも解放出来る。だがあの熱量を前にそう何度も当てる自信は無い。
「『繋げよ雪娘、吹雪いて包め、凍えて縛れ』!」
改めて『雪崩固め』の呪文を注ぎ込めたので、残る呪文は『氷柱』只一つ。
規格外の魔力を持つグラトニーやジュリアンと違い、続け様に呪文を唱え続ける真似は出来ない。自分はこの槍の様に一歩一歩積み重ねるだけだ。
「『遥かなる鮫の王、祖は群れの主、眷属の猛威を振るえ』!!」
サンドライトが唱えた『激痛鮫』の群れが魔女アマンダの産み出したモンスターの群れを次々と貫き、魔女自身にまで届く。
本来であれば幻痛でしかない呪文だが、呪詛で創り出された魔物達は魔力の塊でしか無いらしい。より強い魔力であれば本物のダメージとして消し飛ばせる。
だがグラトニーと契約を結んだ彼女でも、あの呪文は中々連発出来ない。
グラトニーの傍にいたサンドライトの無力感はパトリシア以上だったと、先程はまざまざと思い知らされた。
自分は半端だ。努力も才能も苦労も悩みも。秀才なんて言われても結局は人一倍頑張った程度じゃ何も出来ない甘ったれだ。
(だからこそ!出来る事をやり逃している様じゃ、ジュリアンの力になるだなんて口が裂けても言えないのよ!)
「『繋げよ雪娘、凍らせ凍れ、降らせて貫け』ッ!!」
同じ呪文を一つにまとめるのは難易度が高い。
それが出来るなら最初から一つの呪文に延々と魔力を注ぎ続ければ良いが、実際には出力が倍になれば制御難易度も倍になると思って良い。
何より休息無しで注ぎ込める魔力が魔法二発分もある時点で、術者は同じ魔法を連発出来る計算だ。下手に一撃に賭けるより二連発の方が安定する。
だからこれは裏技。複数の魔法を数珠繋ぎにして一瞬だけ制御する秘術。
出力の限界は呪具強度頼みの非才の呪具だ。けれど自分にはこれが精一杯。
(貯まった!後は当てる為の隙を作るだけ!)
戦況を確認しようとして顔を出したパトリシアの視線がサンドライトと重なり、彼女は即座に頷いてポートガスとストラード先輩に仕掛ける旨を視線で伝える。
「『現身よ影よ、目覚めて映せ、型より出でて己を示せ』!『オクトパスタ』!
先輩お願いします!」
「うむ!『数多の首よ、御霊を束ねて、絡めて喰らえ』!『雪女』!」
顕在召喚された大蛸の幻獣が蛸墨を一面に撒き散らすと、辺りは魔法ですら感知出来ない煙幕と化す。だがアマンダは温いと叫びながら【反】を振り回した熱波で押し返す。使役獣全てが燃え盛っているからこそ出来る荒業だ。
「『縛れ』!『生えろサメ壁、大きく拡がれ』!!」
だがそこにサンドライトの不可視の腕、《空腕型》がアマンダの足元に手を付き彼女を囲む様に『包囲鮫』を生み出す。
「何?!」
鮫達の口元から伸びた一本の鎖が一斉に外に向けて引っ張られ、炎の中から現れた鎖が鋭い星形正九角形を描き出してアマンダの身体を拘束する。
彼女の体から噴き出した炎が鎖に吸収されるが、恐らくあの魔力封じは多分直ぐに破られる。けれど既に《槍》を振り被ったパトリシアは背後にいる。
『氷柱』の呪文を最後にしたのは、魔法と同じ感覚で操作出来るからだ。
自分の腕力頼みで投げたら流石に当てる自信は無い。だがこれなら、無言で投げても一直線に敵目掛けて加速させられる。
「バレないと思ったかよッ!!」
「『数多の首よ、御霊を束ねて、絡めて喰らえ』!」
手首と体の捻りだけで鎖を砕く【九華落雷錘】を振り上げたアマンダの腕を、五つの蛇頭と化したストラードの拳がロープの様に絡め取る。
舌打ちした直後のアマンダが捻った腰に《吹雪の槍》が突き刺さり、蓄えた吹雪が傷口から全身を一気に凍り付かせる。
「いっけぇぇぇ!!!!!」
「ぬぅガアアアアアッッッッ!!!!!!」
飛来する勢いを更に加速させるため全力で魔力を注ぎ込み、アマンダはガチガチに凍り付いた身体で槍の柄を掴む。
「だっしゃあっ!!!」
その顔面をポートガスの《鉄球ヘビ》が撃ち抜いた。
的確に顔面サイズで投擲された鎖鉄球がピンポイントで命中。流石に貫通こそしなかったが頭蓋骨が割れる音がゴシャと響き、手の力が緩み。
上下を分断しながら《吹雪の槍》が貫通した。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「今よ!」
上半身が宙を舞ったアマンダを見て、オルガノンが即座に全ての楼閣塔を再建し【誅仙陣<千羽織砂上楼閣>】を再起動する。
「あァ?!」
迷彩が失われ即座にこっちの居場所が看破されたが、今のアマンダが身体を再生させるより結界が完成する方が速いと確信出来る。
まさか彼女達が此処までやってくれるとは思わなかった。
あの状態で身体を再生するには『鮮血変化』で肉体を繋げるのが一番早い。上下に千切れて凍り付いた、あの全身を繋げて再利用する方が、だ。
心の中で喝采を挙げながら結界を再建し続ける傍ら、隣のジュリアンは既に剣を抜く姿勢に移り、鍵を開こうとしている。正に理想的なタイミングだ。
「『紫電の霊鳥よ、雷鳴貫け、凶兆を叫べ』ッ!!」
空に稲光が弾けた。
アマンダが空に掲げた【九華落雷錘】に、辺り一帯に放電が走り吸い込まれる。
上半身のみのアマンダが使える片手に呪詛を滾らせ、即座に【錘】の中に落雷を装填し圧縮する。その一撃は【九華】の名の通り、九発に増やした落雷を全て一撃に束ねる一撃必殺の秘宝具だ。
不安定な体を背中から弾け出た翼で安定させて狙うのは、結界を担うオルガノンでは無くジュリアン一人。
(流石、要所で狙い処を間違う様な真似は無いって事か。)
【勝利の剣】を抜き放ったジュリアンは、即座に鞘から手を放し両手で剣を握り直す。溢れ出した膨大なマナは、一瞬で魔力酔いを起こしそうな濃度に跳ね上がり緑の光の波となって可視化する程に高まる。
「こ、これが……っ!」
アマンダの『眷属』達が次々と弾け飛び、パトリシアを始めとした仲間達が次々膝を付いて地に伏せる。
「し、鎮まれぇぇぇ…………ッッッッッッ!」
ジュリアンの脳裏には、今【剣】に出来る全機能情報とその出力安定に必要な魔力負荷が一度に襲い掛かっていた。
その力は全知にすら錯覚し、不可能は無いとすら思えた。
(世界の……上書き?物理法則の干渉?何だコレ……?どういう事だ?
この剣は一体何が出来る?!)
唐突に理解する。これは世界の創造だ。結界と言う名の異世界の召喚だ。
(【世界核】に出来る全ての事象を、部分的に切り取って呼び出せるのか!)
今溢れ出しているマナは、【世界核】に内包された一つの世界に存在する全てのマナ、その一欠片だ。そしてマナを取り出すだけでなく、最初から完成した術式として、異世界で再現出来る全ての物理、超常現象を魔法として持ち出せるのだ。
(こ、こんな剣!扱う人間の性格一つで簡単に世界が滅ぶぞ!?)
まさに勝利の剣だ。世界一つが丸々武器なのだ。質量、魔力、情報量。全てにおいて人の身で叶う筈が無い。抵抗一つ出来ずに終わるだろう。
今起きている余波は、皆を圧し潰し始めているマナの濁流は、剣の力の万に一つすら届かない。全ての力を振るえば文字通りこの〔学園世界〕を破壊出来る。
これは武器として使うなら、常に全力で抑えながら戦う以外に選択の余地は無い秘宝中の秘宝。兵器として使うには余りに危険な代物なのだ。
(いや待て!未だだ!まだ何かある筈だ!)
何せこれは父が剣として実際に使っていたものだ。
そこまで考えて、不意に気付く。
(じ、時間が、止まってる……?)
今この場で誰も動いていない。飛沫も土煙も、炎さえも静止画の様に空中で静止しており、空では放電ごと静止したアマンダの上半身が見える。音は無い。
いや、それは自分もだ。動こうと思えば動けると確信出来るが、理解する前に動くのは危険だと本能で気付く。
(超加速モード?思考加速空間?それが今起きている現象なのか?)
膨大な情報の中から無意識に剣を扱うのに必要な知識を手に入れる時間を欲していたと気付く。いやコレ無意識に出来て良い事か?
――現状が後体感七分続くと過負荷により制御を乱す程の頭痛が発生する?
(ヤバイって!コレ時間かけた分だけヤバい奴!
剣!剣!何か武器の範囲内で扱える何か!ッあった!!)
――おまけモード…………って、だよねぇッッッッッッッッッ!!!!
どうもこの剣、剣の名前自体がギャグらしい。形は何でも良かったから格好良い形にしただけで、名前も剣の機能もお遊び程度。剣として使う奴は馬鹿扱い。
一応マナを引き出す機能と使用者の肉体保護を目的とした術式だけがあるという武器使用自体が想定されていないとしか思えない、欠陥術式だけがあった。
勿論異世界再現なんて代物がある以上、他に戦闘に応用出来そうな術式はあるのだろうが、少なくとも戦闘用として区分されている術式はほぼ二つ。
(装備者の肉体情報の記録と自動緊急蘇生だけとか馬鹿じゃねぇの!?)
使い続ければ使用者が狂うとしか思えない。いや、父が底抜けに能天気だったからこそ正気を保てていたのだろうか。そりゃ不死身扱いされる訳だ。
けれど実際、戦うのならそれだけで十分だ。
(全肉体情報保存!マナ出力を術者上限に設定!)
術式として放出出来るマナ出力を制限する事で、ジュリアンが制御出来る範囲に【剣】機能を抑え込む。
空間にヒビが入り、思考加速が終わる。
「消し、飛べぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
小細工は要らない。光の柱がアマンダの上下全身を包み込み、一筋の魔力奔流となって打ち砕く。
数秒。
地響きを上げ、空気を震わせて、外枠である【誅仙陣】が容易く軋み。
煉獄の魔女アマンダは、魂を粉々に砕かれて消滅した。
唯一強い魔力が込められていたが故に、一瞬で弾き飛ばされて地面に刺さった【九華落雷錘】だけがその痕跡を残す。
役目を終えた<千羽織砂上楼閣>、その全ての楼閣塔が紙吹雪と化して塵に消え形を失い、地面を埋め尽くす呪符も何もかも消えて無くなる。
残されたのは、一抱え程の一冊の魔導書だけだ。
「こ、これが魔法世界最高の秘宝【勝利の剣】の力…………。」
パトリシアが呆然と呟いた言葉は、恐らく全員の代弁だろう。
(うぉおおおお……。術者の上限って本当に限界ギリギリかぁ……。)
全身に走る痺れが収まるまで魔法が使えそうにない。今の内に最大出力を八割、基本出力を五割に設定する。今の十割設定はワンミスで術者が消し飛ぶ出力だ。
事前に登録さえしておけば、以後は術式として最初から扱える。
(うん。予想以上にヤバかった。
コレ本当に戦場での初期起動自体を想定して無いな。)
「あ~、取り敢えず全員の怪我を治すよ。
『オーラ』!」
立ち上がったジュリアンは、感覚を取り戻す序でに全員の傷を治して回る。
全員ギリギリまで魔力を使っているので消耗はかなりの筈だ。その表情を見ればもうこの後の戦いに付いてくる気が無いのは一目で伝わる。
特に呪具はかなり消費し、心許無くなっている筈だ。
「それじゃ、後の事は任せた。」
「おう。こっちはもう気にすんな。」
二人が気負わない様にと敢えてポートガスに声をかけたのだが、お前と言う奴はと苦笑されるあたり、失敗したかも知れない。
先輩に視線を向けると、力強く任せろと頷かれた。こっちじゃないか。
「……分かってるわ。ここで感情的になるほど馬鹿じゃないもの。
けど忘れないで。私達はちゃんと〔学園〕で待ってる。」
「そうですね。わたしは同行出来ませんけど、隠れるだけならどうにでもなるので皆とはここでお別れします。」
学園に戻るといつグラトニーと遭遇して契約に触れるか分からないのでと、軽く頷いて立ち去ろうとする。
「あ。じゃあその辺はオルガノンさんにお願いします。
あなた魔女じゃ無いので多分何とかなりますよね?」
ピシリ。
見慣れない者には気付かない範囲でオルガノンの表情が固まる。
(元々何処かで例の件は口止めしないと行けないし、それなら本人に話して貰えば一番早いか。)
軽い気持ちで手を挙げてそれじゃあと《グリフォン》を召喚して飛び乗るジュリアンだったが、オルガノンが返事をしなかった事には最後まで気付かなかった。
「あ。」
そしてサンドライトだけは知っていた。
教師マタハリを通して、妖精と言う希少存在と。
オルガノンが七不思議達に散々爆笑されていたという事実を。
「お、お~い!ちょっと待て!それはどういう事だ!
……ち、あいつめ。今のは割と重要そうな話じゃないのか?……って、そうか。
失礼した、紙殿。こういう事は、直接本人に聞くべきでしたね。」
何も気付かないストラードは姿勢を正して失敬失敬と、とても朗らかな顔でオルガノンの方を向き直った。
そしてパトリシアは口を挟めないでいるサンドライトに気付く。
「…………ええ。先ず最初に言わせて貰うけど、『ユニコーンの友』は隠し名の様なものでね?人前では言わないで欲しいの。」
※金曜日投稿です。土曜日も投稿予定。
パトリシア視点までは未だシリアスw
地獄への道は、善意で舗装されています。
現場猫たち「「「どうして……?」」」




