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ガラクタの学園  作者: 夕霧湖畔
第八部 学園防衛編
173/211

04.傀儡の陣

 〔秘密の森〕の中は何時に無く朝霧が深く、夜明けになっても空は暗い。


 これは単に〔校舎〕上空にダンジョンが配置されているからだけでは無い。

 〔学園〕の天候は普段ランダムになっているだけで、本来は天候全てが完全制御下に置かれている。


 故に侵入者達の侵攻を遮るのに最も適した天候が曇り空であって、魔女狩り達が学園を奪還(だっかん)するか、今回の学園攻略戦が決着するまでの間。

 この曇天(どんてん)が晴れる事は在り得ない。


 霧が特に深い辺りにダンジョンがあるらしいと把握(はあく)した近場の魔女狩りは、情報共有序でに一時待機し、少し珍しくも十数名が合同で攻略するという、少数精鋭が身上の魔女狩りにとって珍しい選択をした者達だ。


『私の場合、ある程度まとまってくれた方が対処し易いんだけど。

 流石に多過ぎると困るわ。』


 結界に隠れ学生達の呪符攻撃を免れていた魔女狩り達は、霧の中に何かが動いたと気付き、一斉に武器を手に取り様子を伺う。


『行きなさい、『バルーンナイツ』。』

 傀儡子(くぐつし)の魔女クリスがダンジョンの中心から指示を飛ばし、人形達が動き出す。

 霧の中から現れたのは、数体の子供サイズの陶器人形。見た目は(びょう)だらけの鎧を着込んだ、玩具(おもちゃ)の様な騎士と言うべきか。


「初手はオレが試す!皆は警戒を頼む!

 『三つ子鼬よ、尻尾を振るえ』!」


 見た目のコミカルさに惑わされるようでは魔女失格だ。一番結界に近かった男が【鎌鼬の剣】を構えて、槍の様な突風が騎士を貫く。

 陶器は見た目通りの強度であっさりと砕けて。


「「「ぅおおおおおっ?!!」」」

 飛び散った鋲が矢の様に、一斉に周囲一帯へと飛び散った。

 先頭の一体に二体ほど巻き込まれ連鎖的に飛び散る鋲の数が増える。

 慌てて防いだ魔女狩り達だが、流石に一人二人は手痛い一撃を受ける。


「おい!無事か!」

「問題無い!『身代わり人形』が一つ砕けただけだ!」

 が。彼らは動揺し、忘れていた。進み出た陶器騎士こと『バルーンナイツ』は、まだ全滅した訳じゃない事を。


 そして()()()()の姿勢を取りながら至近距離に迫る陶器騎士を前に。

「ヒェ。」


 衝突音が目の前で止まり、空気が震える。

 咄嗟(とっさ)に取り出した『簡易城壁』によって危うく難を免れたのだ。

「せせせ、背筋が寒い攻撃をしやがる!」


「全員誰かの盾に隠れろ!近付かれる前に処理するぞ!」

 衝突音にビビる魔女狩りを横目に何人かの魔女狩りが『城壁』を出して、残りがそれぞれに魔法を放って破壊する。


「一応あれ、『幻の剣』でも破壊出来るな。

 一体何を考えてあんなの出したんだ?」

「お、おい!皆、周りを見ろ!」

 威嚇(いかく)目的にしては余りに脆い。怖いのも最初だけじゃないかと首を捻った一人の疑問に、慌てて周りを見回す者の声が耳に響く。


「は、挟み撃ちだ!例の死神っぽいゴーレムもいるぞ!」

 続々と森の影から姿を現す『バルーンナイツ』の上空に、両手鎌の死神ゴーレム《デスサイズ》が数体木陰に留まり一同に狙いを定める。


 此処に居る面々は既に全員が道中で遭遇し突破した相手なので、《デスサイズ》が遠距離攻撃専用のゴーレムだと承知(しょうち)している。

 当然狙いが『バルーンナイツ』の接近を手助けするためのものだと気付き、唯一の逃走経路である背後に目を向けてはたと気付く。


「ま、待て!全員下がるな!それが敵の狙いだ!」

 慌てて左右に盾を出した魔女狩りが一旦距離を取ろうとした仲間を止める。


「ああ?何でだよ其処で挟み撃ちにされる方が不味いだろうが。」


「おかしいだろ!何で敵は最初から挟み撃ちにせず前から小出しにしたんだよ!

 そもそもあのゴーレムは指揮官が挟み撃ちする様に配置したものだろ?だったら敵の指揮官は()()()()オレ達の迷彩を見破ってたんだ?」


「あっ!」


 指摘されて思い至る。敵ゴーレム達はこちらに気が付いて集まって来た訳じゃあない。なら当然遠回りに包囲させた訳で、前から攻撃を仕掛けず背後から攻めればダンジョンの方に押し込まれる構図になった筈で。


「う、上だ!上から呪符が来るぞ!」

 迷彩が解ければ当然学生達にも発見される。切欠は明らかに最初の『バルーンナイツ』の攻撃が原因だろう。


「全員今の人数で突っ込むぞ!

 敵はオレ達が集まるのを待ってから挟み撃ちにしやがった!敵の目的はオレ達が数を揃える度に離散させる心算だ!」


 ここまで言われれば他の魔女狩り達も気付く。敵の目的は持久戦であって自分達をダンジョン入りさせる事じゃない。

 ダンジョンに()()()()消耗させ続ける事だ。

 実際彼らは、既に幾つかの消耗品を使わされている。


「おうよ!ダンジョン攻略に必要なのは数だけじゃねぇ!

 オレ達の実力を魔女に見せつけてやれ!」

 掛け声を上げて、守りが通じている内に次々と霧の中に飛び込む魔女狩り達。

 彼らの士気は決して低くも無く、油断もしていない。


『そうね。そうなるわよね。

 数人だったら迷わず撤退(てったい)を選んで、ゴーレムを減らす方を選んだでしょうね。

 数十人だったら迷わず防衛戦を選び、仲間を集めて物量で潰しにかかる。

 その人数が一番、こっちに都合が良いわ。』


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 霧の中を走る魔女狩りの一行は、直ぐに足元の違和感に気付いた。


 霧そのものは深く、しかし隣の仲間が見渡せぬほどの深さは無い。

 最初は普通に見えていた足元が雲に呑まれた様に隠れて、突風共に煽られた後に見えたのは今迄の様な草叢では無く、まるで山中高地の様な荒れた地面。


 草木はまばらで在り、違和感に気付いた一同は自然と足を止めて後ろを振り向くのだが、然程(さほど)進んでない筈の後ろは見渡す限りの荒れ地が霧に隠れるまで、明らかに霧に紛れて歩いた距離よりもずっと長く続いている。


「狼狽えるな。ここは既にダンジョンの中、それだけの話だ。

 それよりも周囲の視界が利かない、不意打ちと分断を警戒しろよ。」


「いや、オレの秘術は集団戦に向かない。

 ここからは単独行動をとらせて貰う。」

 リーダーを務める魔女狩りの言葉に抗弁(こうべん)する様な発言だったが、彼は何一つ疑問を持たずに分かったと頷き、ならと軽く全員を見渡す。


「なら単独行動向きの者は此処で散開だ。

 敵には魅惑の魔女がいるという話もある。次に会った時は呪詛に汚されてない証を立てて貰うぞ。」


「分かってる。そっちもな。」

 頷き合って数人が散る。実際魔女狩り同士でも奥の手を秘するのは珍しくない。

 それは魅了や洗脳を得意とする魔女は案外居る為だ。とは言え、大抵の場合は呪詛だろうと呪いだろうと簡単に無効化出来る。


 その手の対策が最も豊富なのが魔女狩りであり、大抵の場合洗脳系の呪詛を持つ魔女は、魔女狩りにとってカモだ。


 だから問題は魅了に頼らない魔女であり、それ以外の戦力への警戒だ。

 十人を切った魔女狩り達は、先程のゴーレム等に警戒しながら奥へ進むが、一方で少し首を捻る者が現れる。


随分(ずいぶん)広いな。ダンジョンを利用した結界術は此処まで違うのか?」


 普通の結界術は大きくても庭付き民家程度、豪邸と呼べる規模は稀で、戸建てや教室程度の広さでも不思議は無い。

 だが少なくともこのダンジョンに障害物は多少の岩がある程度で、迂回(うかい)の余地も余り無い。並の規模であれば十分端から端に辿り着く距離を歩いている筈だ。


「不味いな……、ループ型の結界かも知れない。」


 前と後ろが繋がっているなら闇雲に歩いたところで同じ場所を回り続けるだけでしかない。だが同時に散開した筈の仲間達と遭遇しないのも気になる。

 だが一旦立ち止まった事で、彼は自分の迷いが杞憂(きゆう)だと気付いた。いや、気付かされたと言って良い。


「うん?何だこの風、霧が押し流されてぃ……、…………。」

 絶句する魔女狩りは、風の中心部を向いている。

 周りの魔女狩り達も彼の素振りに疑問を持ち、そして次々と同じ様に絶句する。


 霧が押し流されていたのは、それが彼が、いや()()が大き過ぎたからだ。


 溢れる程のマナを蓄えて、そこに立ち尽くすのは霧の巨人。膨大な霧が雲の様に集まり人型となり、周囲の霧を掻き分けながら、一歩一歩と近付く程に風圧を強め岩肌の地面を露出させながら。

 申し訳程度に凹んだ目元と突き出した鼻、開くのかも分からない一文字の口。


 身も蓋も無い言い方をすれば霧で出来た全身のあるモアイ達が、ゆっくりと彼ら魔女狩り達へと迫って来た。


「ぶぶぶ、ブロッケン?ああ、あ、あの人型の霧の幻獣だっていう、発動具の素材になるアレか?あれなのか?」


「そそそぉそ、そぉんな馬鹿な。あの大きさはギガース並だぞ。

 ブロッケンにギガース並の奴なんている訳無いだろォ?」


「はははははは、そんな諸君に朗報(ろうほう)だ。

 あのサイズのギガースは学園の何処を探してもいやしないぞ。オレは昔、噂に聞く長老ギガースから逃げ延びた事があるが、多分倍くらいあるな!」


 彼の渇いた笑いは実の所正しくは無い。その巨体は良くて四階建てのビルに届くかどうか、倍は無い。手足に胴回り太さならまあその通りだろう。

 だが集団で現れるという恐怖が記憶以上の脅威として彼を恐怖に陥れ(おとしい )、何より並の巨人では届かない位置で拳を振り上げる姿が、彼のトラウマを更なる恐怖で上書きしてみせると言わんばかりに。


『ボ。』


「「「ぎぃぃやぁああああああああああ!!!!!!!!!!!!」」」


 吹き抜ける霧の冷気と共に、衝動的な恐怖が全力で彼らを走らせ、散開させた。

 散った魔女狩り達には後続の霧の巨人が狙いを定め、歩み寄りながら拳を握る。


「『眠れる砂土竜、爪を砥げ、轟き群れて突き進め』ッ!!」

「『罪悪の梟首よ、夜啼きの叫び、悔悟の鉤爪を振るえ』ッ!」


 砂嵐がボディブローの様に霧の巨人に突き刺さり、不可視の鉤爪(かぎづめ)がその腕と頭部を引き裂いたのを皮切りに、鎌鼬や氷柱など、様々な呪文や呪具が巨人の体を突き抜けて霧散(むさん)させるが。


「ですよねっ!!」

 殆どの攻撃が分厚いマナに阻まれ、例え体を引き裂いたとしても直ぐに元の形を取り戻して拳を、足を蹴り上げる。


「不死身の巨人とか反則過ぎだろう!」

 これが幻獣ブロッケンなら全身を吹き飛ばせるし、核もある。

(いや待てよ?核はあるのか?)


 慌てて他の魔女狩りが霧の巨人を引き裂く瞬間を逃げ回りながら観察すると。

「『罪悪の梟首よ、夜啼きの叫び、悔悟の鉤爪を振るえ』!」

 一瞬視界を掠めた霧の中の塊の様なマナを見つけ、霧散した体が元に戻るより先に無数の鉤爪が標的ごと周りを引き裂く。


「ぃよっし!全員敵をよく見ろ!体内にマナの核があるぞ!」

「「「ぅおおおおっしゃあ!!!!!」」」


 死中に活路を見出した魔女狩り達は歓声を上げ、次々と核を発見する。

 そこからは早い者勝ちだ。誰かが最速で唱えた一撃が巨大な霧の巨人を貫くと、巨人は悲鳴の様な風圧を撒き散らし、辺りの霧を吹き飛ばしながら砕け散る。



――開けた視界によって、()()()()()()数体の霧の巨人が全員の視界に入った。



 巨人に限らず魔女狩りにとっても遠い間合い。呆然(ぼうぜん)と立ち尽くした魔女狩り達にとって、近付いて来る時間は絶望から正気に戻す効果があった。

 良く見れば、遠くでも霧の塊の傍で光が輝き、他の魔女狩り達も霧の巨人と交戦状態に入っているのが見える。


「えっ~~~…………と。

 つまり、この霧の巨人が徘徊(はいかい)しているのがこのダンジョンの特徴なのか?」


 モシカシテこの巨人、()()なのだろうか。


 気付いてしまえば、確かにこの巨人は殴る蹴る以外してこなかった。

 核以外は殆どが其処らに漂っている空気を原料にしていると考えればコストは安いのかも知れないと思い至ると、理解出来ずとも納得出来るのがまた憎い。


 だが、現実は()()()()()だった。


 遠方から、まるで遠投用の鉄球の様に長い鎖が付いている様に見える()()()()が空を飛来し、天高く立ち昇って行く。

「ねぇあれ、何?」


 雷球が一定以上の高度、放物線の頂点に差し掛かったところで鎖状に尾を引いていた雷が一瞬で雷球に衝突し、魔法陣を描く。それは()()術式だ。

 霧の巨人を倒して周囲に遮る物の無くなった魔女狩り達に向けて、加速する雷球が敵の姿形すら見当たらない上空から一直線に叩き込まれた。


 その加速は空気を貫き雷鳴を(とどろ)かせる程に鋭く、一瞬で地面を吹き飛ばした。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 遠く遠く、緩やかな山岳の山頂部分。


 霧の中心に巨人なら簡単に跨げる、申し訳程度の城壁が囲んでいる何も置かれていない広場があった。

 その中心に二体の巨人が鎮座(ちんざ)していた。


 一体は霧に包まれ、その全貌ははっきりとは見えないが、遠くで一体の霧の巨人が討たれる度に、周囲のマナと霧を吸い込みまるで生霊の様に霧の巨人が彼の巨人を包む霧から別たれる。


 もう一体の巨人はと言えば、余り大きくないのか隣のもう一体の巨人の影に隠れているという事しか分からない。


 だが問題は、城壁の外を歩いている三体の巨人達だろう。

 彼ら三体は一つ目で、とても遠くを見渡せた。

 何故なら彼らは自然に存在するモンスターでは無い。()()()()である。


 とても巨大な、()()()()である。



 かつて傀儡子の魔女クリスは様々な形のゴーレムを研究し、建造していた。

 ゴーレムは機能を突き詰めると大型化か小型化のどちらかを辿る。利便性を追い求め多機能化させると巨大化し、扱い易さを追求しコストカットを進めると小型化して。どちらも複雑な自己判断が苦手という欠点は解消されない。


 であれば優れた知能を開発すれば良いだろうか?否。

 そもそもゴーレムに万能性を求める方が間違っている。

 確かにゴーレムは高額で手間がかかる。数を増やすのは難しいから全てを一体に任せようとするのは、まあ納得の流れではある。


 だがゴーレムに必要なのは本当に知性か?道具としての利便性では無いのか。

 ゴーレムは非力な者の代わりが出来る。体が大きな者の代わりが出来る。手先が不器用な者の代わりが出来る。

 つまり代替(だいたい)能力こそがゴーレムの利点では無いか?


 時代は禁忌戦役の最中であり、必然的にゴーレムにも戦闘力が求められた。

 だが防御力なら兎も角、複雑な戦闘行為がゴーレムには向かない。魔女の超常的火力に対し、量産可能なゴーレムの耐久力は余りに(もろ)過ぎた。

(大量生産し易ければ良いのでは?)


 ゴーレムの物量を用意するのは【呪具人形の魔導書】とは比較にならない労力が必要だった。当然魔力で補うにも限度がある。

 只の魔法使いだった頃のクリスには到底(とうてい)不可能な代物だ。

(もう完成型を複製すれば楽なのでは?)


 ゴーレム型魔導書。まあ普通に頓挫(とんざ)した。発想が天才的で疲れていたし。

 こうなって来ると色々な形のゴーレムを量産して試行錯誤するしかない。クリスは失敗を承知で色々なゴーレムを試作した。


 百腕巨人【ヘカトンケイル】。複数腕の制御による作業ゴーレム、操作が複雑過ぎた。いっそ頭の数も増やせば良いのでは?

 まあ巨大な一つの頭脳にすれば良かったと思ったのは完成後。没。


 分裂ゴーレム【霧の眷属】。霧を材料にすればコスト最小限で済むのでは?形状維持の技術は完成したが、結界術式の中でしか維持出来ない。

 そんな狭い結界内で活用出来るゴーレム数、割と直ぐに揃えられるよね。没。


 百目巨人【アルゴス】。周辺観測用として戦場全体を把握出来る様に、大量の観測器を設置、眼球型を採用した。

 情報を統合するために球体化し、中にホログラムの様な形で収集した情報をリアルタイムで投影。これは呪具を量産する事で可能となり一応の完成を見た。


 でも外見は球体にして全体に無数の眼球を設置するので手一杯。戦闘能力無し。

 いや、まあ他のゴーレムの補助なら十分役に立つよね。保留。


……そろそろクリスも、自分が戦闘用ゴーレムの作製に向いてないんじゃないかと思う様になったが、元より自分は戦場に出てないし、半分隠居(いんきょ)状態だ。

 どうせなら思うがままに研究を続けようと開き直った。


 一つ目巨人【サイプロクス】。ブロンテス(雷鳴)、アルゲス(落雷)、ステロペス(雷光)の三体を作成。もう火力さえあれば良いじゃない。

 眼球に只管(ひたすら)雷雲から落雷を吸収し、集め続けて暫く秘匿(ひとく)放置。


 禁忌の襲撃を受け〔学園〕に囚われ、数十年振りに回収。溜め込んだ落雷は予定通りの性能を発揮してその機能を強化、改良していた。

 けどちょっと溜め込み過ぎて漏電(ろうでん)する様になった。


 絶電仕様の金属甲冑を急いで作り、安定化に成功。これで完成。一応悲願は達成したので【誅仙陣】の中に持ち込んだ。

 ここでグラトニーから一風変わった提案を受け、今迄ゴーレムに使った術式資料を譲渡。魔導書なので現本は手元にある。


(あれ?魔力強化された今なら今迄の失敗作、欠陥を克服出来るのでは?)

 グラトニーに相談し、マナをゴーレムに吸収させる力を願う事は出来るか。

 答えは微妙。ゴーレムでは無くクリスに吸収する力を与えるのは割と容易いが、魔女にマナ特効なのは変わりない。


『あ。じゃあマナを吸収出来て、ゴーレムに憑依(ひょうい)出来るモンスターを作る能力ならどうかしら?』

『成程、それなら出来るわね。』


 【影法師】。

 グラトニーとの契約で得た黒子型のモンスターを創造する力。マナを吸収出来て人形同然に遠隔操作出来る、以外の能力は無い。


 流石に操作抜きに維持するためには他の呪具や術式が必要だったが、元よりゴーレムに憑依させる前提で与えられた能力だ。

 ゴーレムに結界術式やら維持用の呪具を製造すれば事足りた。


(あ。戦闘用の失敗作ゴーレム、()()使える様に出来るわね。)

 早速【誅仙陣】に持ち込むと、中は巨大ゴーレムだらけになる。流石に複数階層前提のダンジョンでは各階層の広さが物足りない。


 何より折角(せっかく)暴走気味にまで高まった、超遠距離攻撃の出来るゴーレムの長所が死んでしまう。流石に勿体無いと考えて。

(いっそ盤目上に並べて繋げてしまいましょうか。)


 別に結界同士を連結するのは難しくない。単に障害が減るし若干安定性が下がるので普通用いないだけで。何より敵にとっても通り易い。

 普通の魔法使いならば、複数層の利点は敵の分散だと言うところか。


 という訳で四マス菱形、中心を何処に置けば良いかに迷う。最終的に七マス全部を山岳にして、山頂に安くて広いだけの結界城壁を置くのが一番楽だった。


「あら?何というか、歴戦の魔女狩りにしては随分悲鳴が上がってない?」


 【アルゴス】の中で待機している傀儡の魔女クリス・クロノイドは長期戦に備えて内装を快適に改修している。


 元々《ドーム系ハウス》は学園に閉じ込められている間に幾つも作っている。

 この程度の改良は一日で終わる程度の手間だが、外の様子を監視している以上はダンジョン内で悲鳴を上げる様が、意識を向けるだけで詳細に確認出来る。

 まあはっきり言って、落ち着く環境じゃなかった。


 完全に無視するのは流石に油断が過ぎるが、まあある程度近付くまではオートで放置でも構わないかな、と設定を修正すると。


 今度は悲鳴が全く届かない。それもその筈、今ダンジョンに突入出来る魔女狩りの数は、四ダンジョンに分散している時点でさほど多くない。

 しかもクリスは数十人以上が集まるのを妨害している。


 当然ながら徘徊する巨人の数の方が魔女狩りよりも多く、しかも数はどれだけ倒しても減らない。兵力差は歴然だ。

 最初のインパクトが薄まるまでは、弱点探しすら覚束無(おぼつかな)い者達が続出しているのが現状である。


 先ずは逃げ回った魔女狩り達で、状況判断が共有されるかどうか。

 たった一人で巨人の群れを突破したがる馬鹿は、余程の実力者か只の能無しに限られる。そして能無しが生き延びるには、余りに敵が強大過ぎた。


「……あ、あれ?もしかして私、大分やらかしてる?」




 【誅仙陣<ティタノマキア>】。

 百腕巨人【ヘカトンケイル】から放出される最大数五十体、減る度に増産可能な【霧の眷属】ゴーレムが徘徊する超山岳広場型ダンジョン。


 霧に隠された結界内の様子は百目巨人【アルゴス】によって隅々まで一方的に捕捉され把握されている。


 更に超遠距離攻撃用一つ目巨人【サイプロクス】三兄弟の射程は、結界内全てを網羅(もうら)し、何より視認出来ない場所を【アルゴス】が座標指定する形で補える。



 巨人戦争の名に相応しい、最悪にえげつないゴーレムの運用法を構築した技術屋兼芸術家が暴走した【誅仙陣】最高難易度ダンジョンである。

※元旦投稿です。三が日連続投稿致します。


 プロジェクト〇~ゴーレムの限界に挑んで~w

 足音一つしない総数五十体の物理無効無限再生巨人が足止めし、km単位の遠距離雷撃が一方的に襲って来ますw尚、敵の盾は減らない模様。視界は敵にのみ明瞭ですw

 救いはあるよ?敵本拠地でしかリボーンしないから。尚、復活限界は無いw


 サイプロクス三兄弟はそれぞれブロンテス(雷鳴)、アルゲス(落雷)、ステロペス(雷光)という個体名は在りますが、性能差はありません。

 言うほど連発出来ないけど一撃の威力はかなりのもの。遠投なのは少しだけ溜めが必要だからですが、三人順番に投げてるので大した問題じゃあ……(目反らし


 全ゴーレムに明確な弱点がある欠陥品ですよ?

 傀儡子の魔女は良識を持ち合わせた貴重な魔女です。ただ。ええ、だた単に迷走した感覚系の天才肌というだけなのですw

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