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ガラクタの学園  作者: 夕霧湖畔
第一部 入学編
16/211

第八章 仮面の魔女 01.次の七不思議

 制御出来ないから見逃されていただけで制御出来るなら魔術と同じだと教師ドロテアに説教を受けた後。

 グラトニー達は食堂で、前学期振りに全員顔を揃えた。

 呪詛は漂っていないのに、例によって例の如く誰もグラトニー達の傍には近付かない。例外といえばジュリアンとアヴァロンと――。


「何でわたしが常識係続行なのよぅ。しかも皆も何か余所余所しいしぃ。

 グラトニーに手を出さなかったのはケイロン家としての方針よ?

 この扱いはおかしくない?」


 泣きながら自棄食いするレイリースに詳しく聞くと、ケイロン家としては学園長の肝煎りで呪詛を操る時点で役満であり、本当に無能人であるかも疑わしいという判断らしい。


「あ~。そりゃアヴァロンに庇って貰ったからこっち側扱いになったんだろ。」

 ジュリアンの言葉に硬直した彼女から視線を移し、巻き込んだお詫びにと腕に噛み付くアヴァロンに、何か変わった感じは無いかと確かめるグラトニー。


「何というか、大分味が円やかになったね。

 後普通にしている時は呪詛どころか魔力も漏れなくなった。」

 知らない人が見たら間違いなく無能人にしか見えないね、と蕩け切った顔で牙を抜くアヴァロン。


「そういえばジュリアンはこっち側扱いされてないの?」

 さっき運命の子扱いされてたけど、と聞き返すと微妙な顔で首を振る。


「中立というか、いざって時は自分達の味方だって思われている感じだな。

 一応先駆者(パイオニア)寮だしこの場の皆が意識していないだけで、寮内の繋がりは皆が絶対って思っているくらいには重いんだぜ?」


 この学園の寮は表向き適正に合わせて相談しやすいように定められたとは言われているが、事ある毎に寮単位で比較されるため、最大の目的は互いを競わせるためというのが暗黙の了解だ。

 実際食堂でも他寮生と食事を取る者は稀だ。


 尚食堂は学年別に併設されているが、三四学年は同じ食堂。五学年は最大人数にも関わらず他の学年と食堂が同じ大きさでテーブル数まで同じだとか。

 競合相手を並べ、更に格差を見せつける辺り実に悪意が透けている。


「で、その《水晶球》は魔力で浮いているんだよな。

 てことは魔力を糸状にして流しているのか。」

 呪詛については表向き、学園街で買った呪具を使っている内に段々とコツを体得した事にしている。

 魔女達との繋がりは今の所隠しておきたいが、アヴァロンに隠し通すのは多分難しいだろう。今も薄々魔力の増量を察しているっぽかった。


(まあ基本黙っていてくれるようね。別に魔力まで奪われる事も無いし。)

 吸血でも若干魔力を吸われているが、グラトニーが以前教師ユエルに用いた魔力簒奪の力と違い、休息で回復する程度のものだ。

(当時は何となく出来るでしかなかったけど、あれも呪詛の一種だったのね。)


 墓守の魔女サンドラの器を吸収し、臣従した鏡の魔女ラビリスと紙の魔女オルガノンの二人に弟子入りした形となったグラトニーは、自分が呪詛を操る呪具として完成した事を既に把握している。


 実の所呪詛の漏洩を防げるようになったのもそのためだ。

 今も一時的に遮断出来る様になっただけで、本来は周囲に呪詛を振り撒き続ける方が正しい生き物だったのだ。

 言わば呪詛はグラトニーにとって呼吸同然であり、魔女との相違点は未だ不死化不老化が済んでいないだけでしかない。


(通りで学園長が気に入る訳よね。

 教師ドロテアは即魔女死すべしって考え方じゃないみたいだけど、現状一番バレてはいけない相手。味方の振りは続けないとね。)


 となれば今一番邪魔なのは、仮面の魔女になりそうか。


「ところで、サンドライトって子が言っていた七不思議の件、進展はあった?」

 ジュリアンは既に会っているだろうと思ったら案の定。


「ああ、残念だけどあれから時間も無かったしな。

 例の零番目の噂が一番の進展だってさ。」

 まあ学園外に出ていては劇的な進展も望めまい。


「それなら一つ気になる場所を見つけたわよ?

 落ち着いたら行こうと思ってたから、そっちが同行したいなら日付を合わせても良いけど。」


「え?何々、何かあったの?」

 キラキラ目を輝かせるレイリースに、内心そういうところだぞ、と思いながら他の皆に視線で確認を取る。


「勿論参加で。何か持っていくものある?」

「一応何があるか分からないから、エーテルを観測出来る何かと身を守る道具くらい用意した方が良いんじゃないか?」

 アヴァロンの問いにジュリアンが応え、序でにとどれの手掛かりか質問される。

「旧校舎ね。何があるか分からないから最低限自分の身は守れるようにね。」

 その後の話はトントン拍子で進み、数日で準備が完了した一同は夜中各自、それぞれに寮を忍び出る。




 一同は校舎の外から中庭を回り、講堂の通路まで来た。

 本来であれば鍵を盗み出すところだが、グラトニーは魔法の鍵の方が開け易い。というより大体開く。


「旧校舎っていうのは言わば、学園を要塞化する前に破壊された校舎を指すというのは聞いているわね?

 破壊された校舎自体は再建されたけど、要塞化のために魔法で撤去(てっきょ)されて仕舞われた後に今の新校舎を建てた。結局旧校舎はそのままになったわ。」


 ここまでは教師達なら誰でも知っている話。寮長などに聞いたなら噂以上の事は分からないだろうが、隠し事でも何でもない。


「では問題の旧校舎は何処に撤去されたか。

 思ったんだけど、魔法で小さく収納出来るのに旧校舎を遠くに置くかしら?

 私なら近くに仕舞っておくと思ったんだけど、で。ここを見て。」


 講堂のステージ脇、上には二階、待機用の一室。

 そして両脇の片側、用具室の中。

 山積みにされた荷物を退けた壇上の下に、エーテルで閉じた小さな扉があった。


「実はこの講堂、旧校舎時代と同じものを使用しているわ。」

 集まった生徒は預言者(プロフェット)寮からアヴァロン、レイリース。

 先駆者(パイオニア)寮からジュリアン、サンドライト。探求者(シーカー)寮からポートガス。

 グラトニー含めて計五……六人。


「……一人増えてない?」

 ポートガスの前で七不思議の話した覚えは無い。


「え?誰も誘ってなかったんですか?」

 サンドライトはレイリースを振り返るが、違うそうじゃない。


「あ、俺の事?それなら最初の授業の後の食堂で絶対あのパない呪詛の件話しているかと思ったらもっと面白そうな話してるんだもん。

 それとなく様子を見てたらお前ら揃って集まってるじゃん。

 これ、七不思議探検隊の集いだろ。俺も混ぜて混ぜて。」


 嬉々として手を振るポートガスに、溜息を吐いてまぁどの道引き換えさせる気も無かったなと結論付ける。


「確認だけはしておくけど入って何が起きても自己責任で、命が危なくても自分で身を守れる事が前提よ。全員準備させてから来てるから。」

「君は無能人と一緒に来て平気なのー?」

「報酬に薬草株買ってくれた時からマブダチです。」

「知らんわ。」


 明らかに面白がっているアヴァロンを尻目に、特に変更する理由も見当たらないと中に入る事にする。

 因みに扉の大きさは換気口並に小さく人が入れるサイズではない。


「『壁穴隙間風、秘密の扉、忘れ物は何処にある』。」

 グラトニーが呪文を唱えると、扉は見る間に階段以外の壁全体を埋める程に上下に広がり、一般廊下並の広さになる。

 扉の裏側は間違いなく今でもステージがあるのに、中は当り前の様に木製の廊下が奥へ続いていた。


「それじゃ中に入りましょうか。」

「ねぇ、呪文はどうやって知ったの~?」

 一番に後に続いたアヴァロンが、珍しく今まで触れなかった部分に質問する。

(成程。そういうスタンスなのね。)

「秘密よ。少なくとも今は未だ、ね。」


 皆が続々と後に続き、全員が入ったところで扉が消える。最後尾にいたサンドライトとジュリアンが慌てて扉のあった壁に駆け寄り拳を叩き付ける。


「そんな!扉が!」

「元々呼び出しているだけよ。ここで呪文を唱えればまた出てくるわ。」

 グラトニーが懐から小さなランタンを取り出すと、レイリースとサンドライトとポートガスの三人が慌てて荷物や腰に付けていた自分用を取り外す。


「『明かりよ続け』。」

 杖を指しながら呪文を唱えると、ランタンはまるで人魂の様に浮かび上がって術者の肩口を漂う。


 これは元教師ユエルの私物で魔法世界では懐中電灯の代わりとして普及している安物の呪具だ。

 普通に呪文を唱えると肩付近を漂うだけだが、杖にエーテルを通して呪文を起動させると時間延長や浮遊位置の修正が気軽に出来る便利グッズだ。


 三人が呪文を唱え、初めて見る目でランタンを眺めるジュリアン。

 皆がそれぞれに窓の外を確認するも窓は鍵も縁も全く動かず、自分達の姿と闇しか映さない。軽く叩くと音に異常は無く、ガラス製なのは間違いないらしい。

 空き教室を覗いてみるも、全体的に空気が古びている他は何も置かれておらず。階段状に並ぶ机と席も、中央にある教壇も殆ど今と違いは無い。


 皆が恐る恐る覗き回る程には昔に興味が無かったので、グラトニーは早々に近くの廊下の角を曲がる。

「おいおい、そんなに先に行くなって。危ね~ぞ……。」

 慌ててグラトニーを追うジュリアンに続き、逸れない様にと皆も後に続く。


「……って、ここ何処?」

 一面に開けた水晶の山、結晶の山。透明度の高い、見渡す限りの水晶片の山。

 周囲は淡く煌々(こうこう)と照らされて、全ての水晶が朧気(おぼろげ)に光を放つ。


 夕闇よりは明るいが、昼間には比肩しないだろう。ランタンの灯りなどここではまるで目立たない。

 床一面は一枚岩の様な半透明の水晶版。傷一つ無い平面に、瓦礫の様に水晶が生えて立ち並び、程々に広い障害物を形成している。


 迷路というには開け過ぎた此処は、間違いなく旧校舎の何処かではない。

 後ろを振り向こうが旧校舎の面影は、当然姿形も無い。

 皆が戸惑い、顔を見合わせる中でグラトニーは一人進み出た位置から振り返る。


「ここは『水晶宮殿』という名の秘宝の内部空間よ。

 旧校舎内で発動させた秘宝を外部から監視する手段は無い。ここに教師が駆け付ける事は不可能よ。」


 というより気付く事も無いだろう。精々が自室にいないのがバレるかどうかか。


「ね、ねぇグラトニー?それってどう言う……。」

「待て、レイリース。

 なあ、それって俺達をワザと閉じ込めたみたいに聞こえるぜ。」

 硬い表情で肩を掴み、グラトニーに近付こうとしたレイリースを止める。


「ええ。私、仮面の魔女の呪具を譲って欲しいの。

 対価は可能な限り叶えるけど、場合によっては力尽くになるから。」

 肩の力を抜き、仮面の様な笑顔で呪詛を解き放つ。


 ジュリアンが非難されないのは、元々立ち位置が反純血、実力主義の先駆者寮にいるからです。

 血統はナイトバロンの子で純血、但し家名は一族全滅により失われています。

 成績は現時点で平均少し上。しかもグラトニーの暴走後に口を挟み、仲裁の実績が前回追加。

周囲の内心「(お願いだジュリアン!君なら奴の暴走を止められる!)」

 期待されているのはブレーキであって、排除では無いのですw


 2023/5/12 改行スペース他加筆修正。

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