表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラクタの学園  作者: 夕霧湖畔
間章三 アンデットパーティ
101/211

02.家探しでGO

 道中もそうだったが結界外の場所は、家の中といえども金品の類は殆ど残っていなかった。


 襲撃(しゅうげき)跡地としては不自然極まりないが、元々の土地は学園と同等かそれ以上の広さがあると判明した。となれば盗掘自体は一度ならずあったと思って良い。

(その頃は案外ダンジョン化してなかったのかもね。)


 まともに隅々まで調査してられないので、町の重要拠点だけを探すが。

「中心部が近付くにつれて、畑が増えて来たわね……。」

 庭付きの住宅が増えて来たのは、高級住宅街に入ったからだろうか。


 割と古風な大型邸宅もある。疑問を覚えつつも、慌てて作った筈の住宅街にこうも広々とした家が多いのはどういう理屈だろうかと首を捻る。


 地図は無いかと広めの邸宅に入り、避難用と思しき地下室に未だ生きている結界を見つけたので、新しい《魔鏡》を設置して今後の中継地点に決めた。


 軽食を取りながら魔女達に尋ねると、家屋ごと持って来たからだという予想外過ぎる返事が返って来た。

『元々古い魔法使い一族ほど定住せず、放浪生活を送っていたんですよ。

 安定して素材が確保出来るのは魔法薬だけです。呪具じゃない。』


 定住出来る程の素材が入手出来る様になったのは、魔法世界で魔法生物の繁殖に成功してからだという。

 その後も数多くの失敗作が野に放たれて、後に魔獣化したのだとか。


『勿論、逃がそうとして放した例は少数派で、殆どが研究者が(えさ)になったパターンだと言われてますが。

 中にはロマンだけを追求して飼育を考えていなかった例もそこそこいたとか。』

(ろく)でも無いわね魔法種族。」


 魔法世界の拡大の度に家を新築するのではなく、家そのものに輸送用の機能が備わっている方が多いのか。

「時々土地に妙な空白があるのは、家を持ち出した跡地な訳ね。」

 となると結構な住民が家を持ち出す間も無く逃げ遅れた事になる。


『そうですね。家が残っている方が不自然かも知れません。』

 幾つかの邸宅を探して中心部や要塞(ようさい)があると思しき区画に見当が付いたので、一度夜が明ける前に学園内に戻る事にする。


 〔栓の塔〕近くの魔鏡は翌日回収し、再びのトライ。

 この頃には恐らく名家のボディガードだったのか、甲冑を着た騎士にしか見えない亡霊ナイトゴーストに何度か襲われ、一つ二つ《封印石》に封じる事が出来た。


 【発動具】としては『鎧召喚』の呪文しかないので別の用途を考えよう。これが《召喚駒》に出来れば話は変わるのだが、大抵適性は片方にしかない。


 個性が強過ぎれば《駒》になり、体質が強ければ【発動具】になると言われているが、ドラゴン以外で両方に適合した存在は知られていない未知の分野だ。


 今回は外から観測するのは難しいのと、新しい呪装靴が完成したのでその実用性を実感するために、民家の屋根を走り、跳躍(ちょうやく)していた。


 呪装の名は《不転沓》。球体程度の浮力を発する魔法の鋼底靴で、足場が無くとも宙を踏める上、『耐火』『防水』『絶電』『反発』等を刻んである。


「危なっ。以前より多少は身軽に動けるけど、過信は禁物ね。」

 影からの凶刃を躱して電撃でナイトゴーストを吹き飛ばし、《封印石》に封じたグラトニーは息を整える。


 <武人刀>と<電撃砲>。手足を装備ごと刃に変え、拳から砲弾状に圧縮した電撃を飛ばす。先日『強欲』で習得した術式だ。

 呪詛起源であっても必要なのはエーテルなので、この二つは呪装や呪具の所為にして、日常で見せ札にするのも良いかも知れない。


 だが、多少効率的な動きは出来るようになったが、別段筋力や技術が上がった訳では無い。

 護身の質が上がったとはいえ、接近戦を克服(こくふく)したとは言えないだろう。


 新装備はもう一つあるが、こちらはグラトニー作では無い。

 《七曜の首飾り》と言って、七不思議の魔女達が作った金細工の首飾りだ。

 首元正面に宝石類に紛れた小さな水晶球が七つ付けられており、全てが魔女達が所有する自前の水晶球と繋がっている。


『箒には劣る、と言いたいところだけど。どっちかと言えば毒沼とか直に立てない場所を想定しているのかしら?

 だとしたら、踏ん張りが利く時点で性能は十分ね。』


「理論上は水上でも走れるわ。まあ只の便利グッズね。」

 浮遊の際弾力が生じるのは嬉しい誤算だ。お陰でちょっとした跳躍補助になる。色々欲張った試作品だったが、現状で完成とした方が良さそうだ。


 魔女達は水晶球を通して会話が出来る上、正面であればグラトニーと同じ光景を見る事が出来る。後通信を繋ぐか否かはグラトニーに選択権がある。


 《保身の指輪》と同じ探知妨害機能こそあれど、常に付けられる呪具では無い。

 だが今回の様に彼女達の知恵を借りたい時には便利だ。


 因みに今回から紙の魔女オルガノンも参加する事になったが、何かの作業中だったらしく時々席を外している。


 尚、【古代鮫の骨包丁】の方は持って来てこそいるが、使う予定は無い。

 アンデットに痛覚は無いし、何より道が狭い。


(後処理もちゃんと進めないとね……。)

 発動具の方は終わったが、不要部位の片付けは終わっていない。部下任せにすると人数が少ないので下手したら年単位の仕事になる。それなら捨てるべきだ。


 現実から目を背け、じゃない。思考を周囲の観察に戻し。

 <電撃砲>で新たに現れたスケルトンを撃ち抜き、使い勝手に満足しながら道無き道、屋根の上を進む。


(単発とはいえ、『幻の剣』以上の威力が詠唱不要というのは美味しいわね。)

 肉体にダメージこそ出ないが蓄電は腕、射出は手に限定される。

 元が魔物の能力再現という制限上、現状では改善出来ない反面、砲弾化せず放電するという応用も利く。


 元の魔物には出せない出力もグラトニーなら可能なので、小型封印石程度の発動具と同等以上の威力が出せた。


 中心部と思しき近辺で再び大邸宅に入り、ここにも生きた結界と幾許かの財産があったので再び《魔鏡》を置いて、セーフハウスとしての活用を考える。


『ねぇ。もしかしてこの家、隣の部屋に隠し部屋があるんじゃないかしら?』

「あら。ひょっとしてこの家を知っているのかしら?」


 オルガノンが奥歯に物が挟まった様な物言いで口を挟み、多分と答える。

 確信は無いのだろうとエーテルに隠された扉を解除し、中に入ると書斎(しょさい)と思しき小部屋が確かにあった。


『あぁ……。そこの左の棚、上から二番目の引き出しの中に当時の地図があるわ。

 現在位置も大体分かった。教えるから私の使い魔を出して。』


『て事は、あなたが禁書庫に来る前に来た事があるの?

 でもあなた、七番目の封印に関わったって言ってたわよね?』

 不信感を露わにラビリスがオルガノンへの口調を荒くする。


『七番目に関わる事は契約に反するわ。けれどそうね。

 私が禁書庫に縛られたのは、31年前。

 当時は吸血鬼化を解く手掛かりを求めて潜入し三学生になった頃ね。ここが陥落(かんらく)したのも丁度その頃。多分、この家の持ち主が死んだのもね。』


 贅沢を言うようだけどと、隠し部屋の物はそっとしておいて欲しいと頼むオルガノンに、他の部屋を自由にして良いならと約束して。

 食堂に地図を置き、現在位置を確認する。


 すると、不意に地響きの様な音が響いた。

「……?」

 まるで馬蹄(ばてい)に囲まれた様な地鳴りが続き、小刻みな振動が屋敷を揺らす。


 地下一階に上がっただけで煩い程に大きくなった地響きに、敵襲なのは間違いあるまいと階段を目指す。


『その部屋に入って。二軒先にある侍従一族の家の地下室に繋がっているわ。』

「えー?」

 正面突破したかったのに。その為に今『生命探知』を使うのを控えているのに。


『……その家に回収して欲しい思い出の品があるの。

 何処にあるか分からないから、壊さないでくれるなら呪具を一つ進呈(しんてい)する。』


 助言かと思ったら下心もあったらしい。オルガノンの頭痛を堪えて良そうな声にまあ良いかと指示を聞き入れ、隠し通路を開けて進む。

(別に改めて突っ込むのは有りな訳だし。)


 オルガノンの事だから、回収する時を考えて安物でお茶を濁す事もあるまい。

 首尾良く別の地下室に出ると、馬蹄の音は殆どしない。


「鍵は?」

『無いわ。こっちは只の地下室だから、好きにして。』


 単に収まっただけかも知れないが、兎に角階段を走る勢いそのままに扉を蹴り飛ばして室内に躍り出る。

「おぐぅっ!」


 おかしな足応えの所為で思ったより跳び出せず階段傍に着地すると、揃って座ったまま逆さになった鎧騎士を、呆然と見つめる亡霊騎士達がいた。


 周りは天幕と篝火(かがりび)に囲まれ、空は雲に閉ざされた闇夜。周囲は家が消し飛んだ後の様で上の階どころか僅かな壁すら天幕よりも低い。

 何よりも。


「お、ぉお、ぉぉ……。」

 逆さになった騎士の股間には携帯用と思しき小さな椅子(いす)が突き刺さっており、やがて力尽きた様に鎧が縦に割れ、真っ二つに消失していく。

 喋るナイトゴースト?聞いた事は無いが、それより。


 恐る恐る振り向いた亡霊騎士達の顔は、全部が表情無き影が張り付いており。

 これは無い、これだけは無いと言いたげな。

 物凄く遣る瀬無い、悲し気な気配で揃ってグラトニーを見つめる。


『……ゴメン。流石にちょっと考えが足らなかった。』

「そうね。私も反省したくなった。」

 全員深呼吸して仕切り直し、敵味方一斉に武器を構えた。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


「敵将首ぞ!者共出合え!!」

 ナイトゴーストとは違い、自我を持つかの如き騎士達は一人が号令をかけて残りの数名が同時に武器を振るい突き立てる。


 全ての剣戟が【盾兵】によって阻まれるが、グラトニーは攻撃を見届ける前に宙へ飛び跳ねて天幕内の全員を視界に収める。


「『刻め描爪、群成せ積もれ、諸共に引き裂け』!」

 虚空から現れた無数の猫爪が騎士達とスケルトン諸共、まとめて引き裂く。


 天幕が倒れると同時、空に【耳目】と【卍兵】が舞い上がりグラトニーの周囲を視界に収める。そこには周辺一帯の屋根という屋根、路地(ろじ)、瓦礫の上。

 見渡す限りの死霊兵を率いて亡霊騎士達が(くつわ)を並べ、部隊を展開していた。


「出合え出合え!」「敵はあそこぞ!」「囲め囲め!」

 旗を掲げて馬を進め、隊長が空に槍を突き上げ。


「弓兵隊の一、二、三!撃て!!」

「歩兵隊の一、二!突撃準備!」

 屋根の正面と側面に陣取った骸骨兵が一斉に弓を放ち、立ち位置が微妙に違うが故に僅かな着弾差となって降り注ぐ。


「『盾』!『抉れ』!」

 間断無く防ぐ矢衾も展開された『障壁』を貫く力は無く、盾越しの視界も同時に備わっている。


 縦横無尽に暴れ回る六振りの顔付き円盤は薄い鎧を人骨ごと断ち切り、次々と跳ね飛ばし続ける。一呼吸で十、二呼吸目には二十か、否。投槍が弾く。


 視界内は案外少なく、脇道に逸れた途端に槍を構えた騎兵隊が現れ、好機とばかりに腰を低く槍を突き出し、一斉に馬を加速させる。

 槍が届く前に『猫爪』がまとめて引き裂くが、引き裂かれる前に弧を描いた二振りの槍が飛来し、硬質化した靴が斬り弾く。


「『暴食よ』!」

(おかしいわね……。自我が残るほどに強い個体だと思ったけど、騎士も兵士も武器すらも、瘴気の薄さは全然変わらない。)


 戦闘力には明確な違いがあるし、中にはナイトゴーストより手強い個体もある。

 『生命感知』の呪文は不死者だろうと魔力の痕跡があれば知覚する。


「いや、多いな!まだまだ『抉れ』!」

 数が多過ぎて、ざっとでも数えるには至らない。

 安く見積もっても数百は下るまい。


 それでも既に五十は倒したが、現状の成果は近場の屋根からの飛来物が減ったくらいで敵数に陰りはない。


「おのれ小娘!貴様の相手はこの、六芒騎士が受けて立とう!」

 馬上から高らかに槍を掲げる様は、明らかに無貌(むぼう)武装騎士(ナイトゴースト)とは似ていない。

 《妖刀》で受け止めた腕には痺れが走り、次の瞬間『暴食』で喰らい尽くす。


(今破裂した?!でも形状は吸収出来て……?)

 いや。明らかにナイトゴーストより瘴気は薄い。不自然極まりない。

「!『刻め描爪』ッ!!」


 背後に回り込んだ騎士を諸共に引き裂けば、不意に寒気が迫り【盾兵】で遮る。

『ぅぉおおおおオオオオッ!!!!』

 大剣が振るわれ掬い上げる様な薙ぎ払いの一振りは、割って入った『盾』の障壁ごとグラトニーを宙に跳ね上げる。


「な!<電撃砲>よ!!」

『キィェェエエエエッッッ!!』


 岩をも砕く雷弾を一刀両断に叩き潰したのは、一回り大きな黒馬に乗った一人の騎士。その特徴は馬と同じ、どちらも首から先が無いという点。

 正しく言えば、彼の騎士に限っては脇に兜を抱えていた。


「デュラハン……!こんな状況じゃなきゃ大歓迎なんだけどね!

 『無垢なる巨人よ、総身の無双を、我が身に宿せ』!」


 屋根の上に逃れて距離を取り、『筋力強化』の呪文を唱えたグラトニーは重厚な【古代鮫の骨包丁】を片手で構える。


 流石に此処までの大物が出てくれば、出し惜しみする余裕も無い。

 鎧をまとった軍馬が瓦礫を足場に、いとも容易く屋根の上へと駆け上り剣を振り上げるデュラハン。


「お見事!さぁ者共、我らが三将軍を援護(えんご)せよ!」

「ちぃ!」

 顔無しの巨漢の攻撃を弾きながら舌打ちするが、【卍兵】は周辺の雑兵を蹴散らすだけで手一杯だ。


 距離さえ確保出来ればと飛び退きながら抵抗を試みるが、三度屋根の上を跨いでも二人の距離感は変わらない。

 挽回の目途一つ立たぬ劣勢に、追い詰められている事を自覚するグラトニー。


 その時【卍兵】の視界を一瞬で通り過ぎた黒い影が、道中の亡霊兵達をまとめて薙ぎ払った。


 上がる土煙にデュラハンが気付き、警戒のために距離を取ろうと馬を引き。

「『刻め描爪』!」


 強引に猫爪を弾いたために、グラトニーから強制的に距離が離される。

 受け身を取った瞬間影が差し、黒影がデュラハンを切り飛ばしながら屋根の上に躍り出ると、漸くその朧気に揺らぐ姿を視界に捉える。


亡霊騎士(ナイトゴースト)?それも只の騎士じゃ無いわね、それこそ今のデュラハン以上。)

 黒い甲冑の騎士が、顔を隠したままグラトニーに手を伸ばす。

『奴らは直ぐに復活する!生き残りたいなら付いて来い娘!』


 声量は若干おどろおどろしく、気配を抜きにすればむしろ先程の六芒騎士とやらの方が余程人間らしい。

 だが呪いを撒き散らしながら人を助ける様な真似をする騎士は、とても興味深いと手を握る。


「エスコートには自信があるんでしょうね!

 『異形蜥蜴よ、啄め喰らえ、変幻自在の鰐頭牙口よ』!!」


 腐食の瘴気をまとった巨大な獣の頭蓋骨(ずがいこつ)がグラトニーの周囲を渦巻き、屋根の上から地上へと縦横無尽に粉砕する。


 そこら中で逃げ惑う悲鳴と抵抗の気配が響き渡り、六芒騎士の一人が被害と戦況報告を行う頃には、既に二人の影は欠片も無い。

「い、今のはまさか、煙幕代わりだったのか?

 我らの部隊が、文字通り半壊させられた大魔法だというのに?」

 地味に魔法生物誕生秘話です。つまり元ペットによる事故と家畜化の失敗w

 この町に出現するアンデットの数は、間違いなく町の住民や犠牲者の数よりも多いです。

 この辺はダンジョン化した結果、ゾンビやスケルトンと言ったアンデットは年々増え続けているからです。但し、時々何かの拍子に同士討ちしているので、そこまで増えては居ません。

 それとアンデットは知性も自我も無いし、言葉も喋れません。本能のままに暴れるだけの存在なので、どこぞの蛙や茶釜共は本当に希少例。

 実は自我がある存在はダンジョンで複製されないという裏設定があります。ダンジョンでは自分と相手の区別が出来ない存在だけが複製されるのです。

 ジュリアン視点だったら話が長くなる分、この辺も作中で気にしてくれたでしょうw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ