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ガラクタの学園  作者: 夕霧湖畔
第一部 入学編
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序章 スカウト

 音の無い夜の住宅街を男女二人が歩いている。

 これが色気のある話だったらどれ程良いだろうかと、女は我が身の不運を内心で嘆く。


「全く、何だって無能世界の無能人と俺達が会わなきゃならないんだか。」

 部下である男は至って普通の貴種であり、魔法を使えない世界の住民に対する極一般的な反応だ。だからこそ溜息が出る。


「気を引き締めなさい。我々がスカウトに向かうのは何時だって魔力持ち。

 そこが無能世界だからって変わりはしない。そして今回は今迄でもとびっきりの危険物よ。」

 魔法使いが無能世界でどんな危険があるというのかと男は首を捻る。


「分かって無いわね。事情は簡単に説明したでしょう。」

「ちゃんと覚えてますよ。(くず)の世界で屑の両親、まあ魔法を感じられない無能人だから、魔力の価値なんて分かり様がありませんが。」

 女が再び溜息を吐いたのに流石に男も眉を(ひそ)める。


「無料教育を受けられる国で真面に教育を受けさせない親。散在し犯罪者まがいの苦しい生活を続ける家庭。当然人格的に期待出来ないわね。

 けれどその魔力を感じられるあなたなら、そろそろ嫌でも理解出来たのでは?

 これはそんな生易しい次元の話では無いと。」


「理解はしている心算ですが、所詮無能人ですよ?

 確かにこの距離でも圧迫感を感じるのは尋常じゃないが、使えなければ意味が無い。

 そして我々は使い方を教える学園にスカウトしに行くんだ。」


「で?魔力とは知性体の精神力そのもの。隠し方を知っているなら兎も角、無能人が隠せる筈も無いわよね。この住宅街で、人の魔力を感じられる?

 元々住んでいた住民は全て逃げ出した、その中心地に我々は向かっている。」

「……マジっすか。」


「見えたわよ。相手が無能人だろうが我々はスカウトするのが仕事。

 入学に同意させるためにここに居るわ。」

「ええ、分かっておりますよ。」


 中古のボロアパートでは無い。空き家となった一軒家の一つのインターホンを押して、女は来訪を告げる。

「ごめん下さーい。お電話した学園スカウトの者ですが、今からお話宜しいでしょうか。」


 扉が開いて現れたのは、暗い表情をした銀髪の美少女だった。但し歳不相応に落ち着いた顔付きが、ともすれば五歳は年上に見せる。

「ええ、居るわ。まさか本当に来るとはね。

 余りに荒唐無稽(こうとうむけい)で適当に聞き流していたけど、妄想なら余所でやってくれないかしら?」


「そうですか。ですが実際あなたの周りでは科学で説明の付かない事態があり、あなたはそれを自覚している。

 当学園はあなたを高く評価しており、必要な知識も与えます。これはスカウトですので入学に必要な一切の金銭は要求されません。

 在学中の生活費は成績に応じて支給されますが、最初の一学期は無料です。」


(はぁ。胡散臭(うさんくさ)過ぎるけど、私に反論出来ている時点で既にある程度は説得力があるのよね。

 私も完全な制御は出来ていないから、本当なら悪い話では無いけれど。)


「面倒だな。証拠が欲しいんだろ、ホラ『凍れ!』」

 少女の足元に氷が生じるが、肝心の彼女自身には届かず、円形の空白が出来る。

「どうだ、分かったか無能……あん?」

 男だったものは途中で異常に気付き、赤い道路の染みとなった。


(……馬鹿。というか、こいつで危害すら加えられないってどういう事よ。)

「お見事。魔術は魔力を使ってある程度弾けますが、習わずに防げるのは普通は有り得ません。」


「ふうん、今のが魔術か。確かに手品じゃ無かったわね。

 あなたの提案に乗ってあげる。」

「有り難う御座います。ではこちらの書類に目を通し、このペンでサインを。」

「家族のサインはどうにもならないわ。」


「え?グラトニー?

 しかし、後で誘拐扱いされると……。」

 彼女の両親が失踪したという記録は無かった筈と首を傾げ、更に名前欄を見て二度傾げる。


「両親が中二気味で他の呼び方しないから本名は覚えてないわ。

 どうしてもサインがいるなら中へどうぞ?書けるとは思わないけど。」

「い、いえ。家庭環境が特殊だったのは把握しているので、十分です。

 では準備が出来次第出発しましょう。服は支給されますので極論着の身着のままでも構いませんが。」


「そう。じゃあこの鞄だけで良いわ。今から行けるかしら。」

 気が付けばいつの間にか鞄を担いでおり、指を鳴らすと家に火が付いて瞬く間に燃え広がるのを見て、女は呆然と家を見上げる。


「えと。行けますけど、生きていたのでは?」

「半日前まではね。私も忘れてたから、気付いた時には手遅れだったわ。」

「あ、はい。では今直ぐ行きましょう。」


「ささ、此方の扉をくぐって下さい姐さん。」

 血塗れの男が重厚な扉の横で土下座をしていた。


「あ。これが我々貴種と呼ばれる魔法種族が、魔法を使えない者達を無能人と呼ぶ理由です。

 我々魔法使いは不死身なんですよ。魔術で殺されれば別ですが、そもそも痛いですし、魔法でも百年くらい復活出来なくなる事は起こり得ます。」


「サーセン。もう逆らいませんので、何卒ご容赦を。」

「……まあ良いわ。さっさと行きましょう。」


2021/3/14 一律で誤字修正。

2021/3/21 一律で改行スペース追加。

2021/9/20 改行スペース他微修正。

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