パワハラ幼馴染に租庸調を要求されたので、墾田永年私財法を制定するまで一揆打ちこわししかない!
最近、パワハラ幼馴染から交際を迫られる事案が多発しているらしい。
かくいう俺こと木下立夏も、俺がわざわざ3時間かけて作った蘇をぶんどって食っている幼馴染、河合香から、こう告げられた。
「立夏、私と結婚を前提に付き合いなさい! 交際するからには、米は毎年収穫量の1割を納めるのよ。21歳を超えたら労役か代わりの塩を納めなさい。当然、毎年絹と布も納めるのよ!」
「租庸調じゃねぇか! 大化の改新んんんん!」
香は昔からパワハラ体質で、幼馴染の俺に無理難題を押し付けてきた。
やれ、誕生日プレゼントに蓬莱の玉の枝が欲しい、燃えない服が欲しい、ってお前はかぐや姫かよって話だよ。
濃紫の冠が欲しい、と言ってきたときは、普通かな、と思って買ってやったが、違う、大徳の冠位が欲しいんだ、と言った時には何を言っているのかと思ったぜ。
おかげで冠位十二階をはじめとした歴史に詳しくなった。中学の歴史のテストは毎回100点満点中102点だったぜ。
「あんたに拒否権とかないのよ! ほら、私の彼氏になりなさい! 尻に敷いてあげるわ!」
香は断られるとは思ってもいないようで、ドヤ顔で交際強要関白宣言を続けた。
俺もなんだかんだで、香の言うことを聞いてきたから、こうなったのは俺ちゃんサイドにも問題がある。
だが、男女交際とはこのような圧力から始まるものではないはずだ。今断っても殴られるだけだし、とりあえず保留!
「拙者、突然のことにて驚いて候。明日の放課後には返事をするゆえ、しばし待たれよ!」
そう言って逃げ帰った俺は、親友のメガネの佐藤、ぽっちゃりの安藤に緑のSNSで連絡を取った。
(立夏):香から交際して租庸調を納めろと言われたんだが
(メガネ):僕も今日、マリーから結婚を前提として付き合えと言われたよ
(メガネ):うちはただの弱小パン屋だから、大手ケーキ屋のマリーの家とは釣り合わないと言ったんだ。そしたら、毎日アンタの家のまずいパンを食べるくらいなら、ウチのケーキを食べればいいじゃない、と言われたんだ。許せない。
雪月花マリーはメガネの佐藤のパワハラ幼馴染で、大手ケーキ屋「雪月花ケーキ」の社長令嬢である。縦ロールだが一周回って緑に見えるくらいの真っ黒な黒髪だし、家系図を8代前までさかのぼっても純日本人のくせにマリーが本名なのが解せない。
大手ケーキ屋だからか、昼食も毎日パンケーキを食っている。日本人なら米を食えよ。うまいんだぞ、米。
ピロリン
(ぽっちゃり):おいどんも鏡花から交際を申し込まれたぜよ
(ぽっちゃり):付き合っても変わらずビシバシしごいてやるけど、死ぬなよ、とか言われたんだが、どういうつもりだよ
(立夏):おまえの場合はいつもダイエットに失敗しているからだろうが
東雲鏡花は、ぽっちゃりの安藤の幼馴染で、安藤をダイエットさせて男前にしようと毎日しごいているパワハラ幼馴染だ。
いや、こいつだけはパワハラじゃなくて正当な理由な気がするな。まあ、安藤が嫌がっていることを思えば、パワハラなのか。
緑のSNSで会話は続く。
(立夏):しっかし、俺たち、同じ日にそろいもそろってパワハラ幼馴染から告白をされるとはな
(メガネ):そうだな。で、どうする? おとなしく尻に敷かれるか? 僕は嫌だね。うちのパンは最高にうまいんだよ!
(ぽっちゃり):おいどんは! 腹ぁいっぱい牛丼が食いたい! 鏡花から逃げられないとしても! ダイエットは嫌ぜよ!
(立夏):俺も租庸調は払いたくねぇな。現代日本の三大義務は、勤労、納税、子女に教育を受けさせるだろ。大化の改新んんん!
(メガネ):(「お、おう」のスタンプ)
(ぽっちゃり):(「お、おう」のスタンプ)
佐藤も安藤も引いてんじゃねぇか。
でもまあ、そうだよな。やっぱ男女交際ってのは、お互いを大切にするべきだよな。
(立夏):となればもう、圧政にはこれしかないと相場は決まってんのよ。そう、一揆・打ちこわしだ! 俺の物は俺の物、墾田永年私財法を制定するまで幼馴染に屈しない!
(メガネ):何言ってるのかよくわからんが、幼馴染には屈しない同盟をここに結成するということだな
(ぽっちゃり):米騒動! 米騒動! あ、腹減ってきた。牛丼食いに行かね?
(立夏):おけ
(メガネ):じゃ、駅前のとこに15分後で
こうして、俺たちはパワハラ幼馴染たちに対して、一揆・打ちこわし同盟を結成した。
牛丼は並を食った。
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翌日、クラスの男子に話をしたところ、マッチョの小島、シリアルキラーの不動、貴公子の大道寺も昨日、それぞれのパワハラ幼馴染から告白されて保留にしているそうで、打ちこわし同盟は全部で6名となった。
もうこれ、あれだろ。女子側で一斉に告白しようぜ、みたいな打ち合わせがあったやつだろ。
全員で圧力をかけて既成事実を作ろうとしてくるだろ。
そんなこんなで放課後になり、香を体育館裏に呼び出した。打ちこわし同盟の奴らとその幼馴染たちも一緒だ。
「で、立夏。こんなに人を集めておいて、どういうつもり? 未来永劫私の尻に敷かれることをみんなに知られたいの? ドМなの?」
「うるせぇ、俺は香の関白宣言なんか拒否だ拒否! 俺は、俺たちは自由なんだ! 一揆だ! 打ちこわしだ! 墾田永年私財法を制定するまで暴れてやるからな!」
「そうだそうだ!」
「そうだそう……え?」
シリアルキラーの不動と貴公子の大道寺が加勢してくれたが、やはり租庸調を要求されたのは俺だけだったため、男子(特に大道寺)も女子も困惑を隠せていない。
マッチョの小島は我関せずといった様子で、フロントダブルバイセップスのポージングをしている。こいつ基本筋肉にしか興味ないんだよな。
「とにかく、俺たちは女性陣が態度を改めるまで、反抗を続ける。暴力だろうが、金の力だろうが、政治的権力だろうが、俺たちは屈しないぞ」
「おいどんたちの米騒動ぜよ! ということで男子! 牛丼屋行こうぜ」
「おけまる」
こうして、俺たちの一揆・打ちこわしはスタートした。
「ククク、たまには友と牛を食すのも悪くないな」
シリアルキラーの不動は思春期の病が治っていないので、たまにこういうしゃべり方をする。シリアルキラーという呼び方も不動の自称であり、本当は虫一匹殺すのも躊躇する心優しいやつだ。
二日連続でも牛丼はうまいぜ。
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翌日、パワハラ幼馴染たちの横暴、暴力、泣き落とし、セクハラ、女子全員を味方につけたヒソヒソ話にめげることなく、俺たちは幼馴染の命令に歯向かった。
「うおおおお、これが俺たちの一揆だあああああ」
3日連続(今日は朝に寄った)の牛丼屋で入手し続けた割りばし(未使用)をバキバキ折って香を威嚇するぜ! 牛丼屋にマイ箸を持参した甲斐があるってもんだ。
「うおおおおお、これが俺たちの打ちこわしだあああああ」
佐藤が昼に食うために背負ってきた、実家の超ロングフランスパンをバリバリ折って食ってやがる。
お、見た目の豪快さにつられて、周りの男子がフランスパンをもらいに行った。まじうめぇ、放課後寄るわって話をしている。佐藤の営業力の高さよ。
「ぶひいいいいい、これが俺たちの米騒動だあああああああ」
ぽっちゃりの安藤は、アニメでしか見たことのない山盛りのご飯をガツガツ食っている。わざわざ炊飯器ごと持参していただけある。
お前は少しダイエットしろ。
マッチョの小島、シリアルキラーの不動、貴公子の大道寺も、それぞれに幼馴染に反抗した。
こうして、俺たちの一揆・打ちこわし作戦が1週間続いた結果、彼氏が奇人変人と言われるのが嫌だったのか、幼馴染たちは高圧的な態度を改めて、普通に接してくれるようになった。
ま、これならいいかってことで、打ちこわし同盟の面々は幼馴染と和解、それぞれに男女交際を始めた。
なお、ぽっちゃりの安藤は、この一週間で増えた体重くらいは元に戻せと、他の11人の男女からダイエットを強要されたことをここに記しておく。
とっぴんぱらりのぷう!
投稿するならこのタイミングしかないかな、と思って勢いで書きました。
★★★★★下さいとかおこがましいので、評価入れる場合は★☆☆☆☆くらいにしておいてください。
「文字が書いてあった」「蘇つくるのマジ大変だよね」「牛丼っておいしいよね」「ウホウホホウホウホウホホ」みたいな感想くれても喜びます。