初めての仕事
「私たちの仕事は死んだ人を次の人生へ導くことです」
さっきまで若干顔を赤くして動揺していたが、今の天使ちゃんは冷静そのものだ。これは仕事モードなのだろう。
私たちはこの雲の上の様な世界にある家にやって来た。
家がある!と初見では驚いたが、天使ちゃんにも家は必要らしい。
「この世界にも天候はあるんです」とのこと。「それに今は仕事で留守ですが、他にも天使はいるんです」
そう言って、他の家を指し示した。
そして、「私の名前はピコ」と教えてもらった。
ピコちゃん。名前まで可愛い。
「ここで暮らすと決めた以上はあなたにも仕事をしてもらう必要があります」
仕事ってどんな?
「私があなたにしようとしたことと同じことです」
それって死者の案内ってこと?
「そうです。他にも仕事はありますが、その説明はその都度させていただきます」
分かったよ。ピコちゃん。
「ピコちゃんって…千歳を超えた年上に”ちゃん”はやめてください」
顔を赤らめて!可愛い!!
「とにかく!あなたは仕事を覚えて天使を目指してもらいますよ!」
あ〜はいはい、天使を目指…え?
「天使を目指さないと、今のあなたみたいに身体がない状態が続きます」
え?え?あ!ほんとだ!私、今身体がない!
ピコちゃんが持って来た鏡を見て、私は自分の今の姿を初めて見た。
空中で揺れ動く炎。それが今の私の姿だった。
「なので、あなたの考えがさっきからダダ漏れなのです」
道理で喋ってないのに通じていたんですね!
「とにかく、私が仕事を今からします。だから、あなたは隣で見ていてください」
でも、私にした様に説明するだけでしょ?だったら私にもすぐ出来るよ?
「いえ、あなたは特別なのです。生前の記憶がない場合、文章化された記憶を見るしかありません。私がさっきやったみたいに。でも、本来なら、本人の言葉で聞く必要があります」
なんで?文章で分かるじゃん?
「確かに本人がやったこと、環境、人間関係はわかります。でも本人がどんな思いでやったのか。私たちから見て劣悪な環境だったとしても、もしかすると幸せだった。なんてことは割とあることです。本来は人の人生なんて他人の物差しでは測れないものなんです。あなたの場合は例外ですが…」
そこまで言われると寧ろ興味がある!私の人生だから当たり前だけど。
「とにかく、これからある魂の話を聞きに行きます。ついて来てください」