転移トラック
俺の名前は、大和田巧。
長距離トラックの運転手だ。
運転している車は2トントラック。そのトラックの荷台には沢山の荷物を積んでいる。
近年、ネット通販の普及により大量の家具、家電等の多種多様な荷物がある。
大阪から出発して東京を経由してから福岡に向かう途中。
「ああ、眠い」
そういえば、過剰な労働環境ゆえに、只今高速道路をぶっ続けで21時間ほど運転している。
あと2キロメートル程進めば休憩ができるパ-キングの看板が見えた。
だが、休憩している暇はない。残り2時間半で目的地にたどり着かなければ苦情の嵐を食らってしまう。
俺は押し寄せる睡魔を我慢してトラックの運転を続けた。
そしてウトウトと目が強制的に閉じられ、俺は運転をしているにも関わらず眠ってしまった。
次に目が覚めた時には、辺りは明るくなっていた。
「しまった!」
俺は運転中のに眠るという重大な過ちをしでかしてしまった。
急いでフロントガラス越しに前を見た。
しかしそこは、先ほどまで走っていた高速道路ではない。
「これはどういう事だ」
俺の視界は眠る直前と打って変わって見渡す限りの草原だった。そして、その広がる地平線の先には白い煙が立ち上るのが見えた。村だ。
静まり返ったエンジンが再び唸りをあげた。俺がキーを回したからだ。
よかった。どうやらトラックは無事のようだ。
アクセルを踏んだ。
ここが何処だか分からない俺は、状況を確認しようと視界に見える村へとトラックを走らせた。
町の入り口に着くと町の住人たちがぞろぞろと姿を現した。
「バケモンだ!」
住人達は武器を手にそう叫んだのだった。
まずい。そう思った俺はクラクションを鳴らして威嚇した。
プッ、プッ、プー。
腰を抜かす村人達。
そして、それらをかき分けて出てきたのは立派な防具を身に纏った騎士のコスプレをしている者だ。
「何事だ」
俺はトラックのライトを点け、念のためにハイビームでそいつを照らした。
「ぐあああ。眩しい!」
騎士は驚きながら目を腕で隠した。