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6-2.楽しかった。

前回の「ありがとう。」のプリシラ視点です。



書こうか少し迷いましたが、多分書いた方が良いかな、と思ったので。


後は今回も後書きが長めです。

 さぁて、きちんとチュートリアル君も来て、この別の攻略対象が居るのを見てショック受けてくれたみたいだし。


 チュートリアル君とその他の攻略対象の好感度が両方一定以上だとチュートリアル君かその攻略対象か選ぶイベントが発生する。


 ……チュートリアル君の好感度が上がりやすいせいだろうね。


 これを発生させれば、後は告白(さつがい)場所へ一直線だ。


 ……ああ。楽しみで楽しみで仕方ない。 今日だけはいつもの気に触る攻略対象の動きも気にならない。


 本当に楽しみな事の力って凄いよね。 それ一つで嫌な事を全く気にしなくなれるから。


「それでは、この後に約束があるので。色々教えて戴き、ありがとうございました」


「おう! それじゃあな!」


 うっさ。でも許す。――今の私は心が異常なまでに広い自信があるぞ。


 赤髪の青年に別れを告げて、元の場所に戻って来た。


移動する時にちらっと水鏡に映る自分の顔を覗きこんで見る。


……めっちゃくちゃ笑顔じゃん。


 ちょっと表情筋緩みすぎてやばい。 ちょっと表情作る練習しとこ。


 ……一時になって、再び約束の場所にチュートリアル君がやって来た。


「……やあ、すまない。 待たせたね、プリシラ」


 おお、すっごい。 いつもの殺したくなる笑顔が完全に消えてる! ……『私』の行動では無く、私自身の行動でそうなったんだと思うととても感慨深いね。


「こんにちは、アルバン様 。 ……どうされましたか? お体の調子でも悪いのですか?」


 心の調子が悪いんだろうけどね。 実際はどう言う風に思ってるんだろう。 ……うん、よく分からん。ねぇねぇ、教えてよ。


「……何でも無いよ」


「そうですか…… 無理はなさらないようにしてくださいね?」


 まぁ無理してても、してなくても今日死ぬという結果は変わりないけどね。


「……わかったよ。それじゃあ、行こうか」


 チュートリアル君に連れられて色んな所へ行く。 まあそんなのはどうでもいいんだ。適当に終わらせる。


 それなりに時間も経った辺りで、やっと、私にとっての福音となる、その言葉がもたらされた。


「……最後に行きたい所があるんだけど、いいかな?」


 ……ふふっ。



 ▲ ▽ ▲ ▽



 貴族街の中央あたりにある森林に入って、奥へと進む。


 もう見慣れた道を進み、いつもの場所に出た。


 今までは、特にここに対して感慨は無かったのだけど、これからは思い出の場所になりそうだね。


 二人で切り株に腰掛ける。


「素敵な場所ですね……アルバン様? どうされました?」


 顔色を伺って(かんさつして)みる。


 その覗き込んだ顔には、苦悩の表情が浮かんでいて。


 ――――漸くだ。


「――プリシラ」


 ああ。あぁ……! この感情は何だろう。言葉にすることが出来ない、(ほの)暗い高揚感。



「………………なんでしょうか?」


 逸る気持ちを抑えて、どうにか台詞を喋る。


「僕は君にとって、友達なのか……それとも――」


 真っ直ぐに私を見つめられる。


「恋愛対象として……見てもらえているのだろうか」





 え? もうそんな好感度高かったの?

「友達ですら無いのだろうか」じゃ無いんだ。 びっくり。

 ああ、楽しい。予想を外されたのはびっくりしたけど、それすらも飲み込んで、この黒い高揚感は大きくなっていく。


 どんどんと増幅されていく感情。




 ああ、楽しみだ。ああ、もう我慢できない。ああ、早く――――――




「ふふっ」







 殺したい。






「――――がっ」


 空気を圧縮して方向性を持たせて解放、単純だけどやっぱり強い。発生した突風がチュートリアル君を吹き飛ばす。


 どちゅっ。


 無様な格好で地面に這いつくばった、そのゴミ(アルバン)を、剣程度の太さをした、氷の棘で地面に縫い付けた。




「つっ……何が……」






 え? ここまでやられといて状況の把握が出来てないって、ちょっと流石に私も笑っちゃうよ?



「ふふふふっ………ふふふはっ……」



 ああ、笑いが漏れちゃた。まぁどうでもいいや!


 楽しいことは、存分に楽しまないと。


 名状しがたい高揚感に近い感情がぶわっ、と体全体に広がる。



「うふふふ………………ふふふっ」



 その高揚感が広がって行くごとに、楽しくなっていく。何故かは分からないが、とにかく楽しい。楽しくて楽しくて楽しくて楽しくて!


 感情がどんどん昂って行く。


 もう、止めることが出来ない。





「ふふふふっ……うひひっ、うひゃっははははははははははははははははははははははは!!」



 遂にその感情は、体の外に溢れかえってしまった。


 それは、私の喉を震わせて、空気を震わせて、私の心を震わせる。


 止めようと思っても、止まらなくて。ただ、ひたすらに笑い声と共に感情を吐き出し続ける。


「は……? え……?」


 ああ! なーんか言ってる! おっもしろい! 何言ってんだろー、あいつ!


「ひひっ……ふぅ……」


 笑い声でも放出仕切れなかったその衝動は、言葉という形に変わり吐き出され始めた。


「いやぁ、この瞬間をずうっと待ってたんだよ。この場所で殺してみたいって、何度思ったっけなぁ! この場所、音も聞かれづらそうだし、最っ高だよねぇ……」


 どんどん表情が弛んでいく。

 ああ、せっかく表情を引き締めようって頑張ったんだけどなぁ、無駄だったかな?


「……たし、かにここは良い、場所だが……」


 ああうん、君が何言ってるかよくわかんないけどここが良いとこだってのは理解してくれるんだ?


「そっかそっか。君もそう思う?本当に、本当に……悲鳴(こえ)が漏れない場所ってのは良いよっ、ねぇ!」


「ーーがっ?!」


 彼の体に氷の棘(ぼひょう)を突き立てる。

 チュートリアル君、ここで眠らせるってね。


 あぁ…………良い悲鳴だなぁ…………! もっともっと聞きたい!


「ねぇ。 何で? 何でなのか、私知りたいんだ。」


 私は足を棘に乗せて、そう問う。


 慎重に足の方向を決めてっと。しっかり踏まないと刺さらなさそうだし。



 ――――えい。



 ぐちゃっ。


「ぎっ…ぁっ……ああぁぁっ!」


 そんな声で鳴かないでよー。 楽しくなって歯止めが効かなくなるじゃん。


「ひひっ…… ねぇ。ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ!! なーんでたった数回話すだけで、私がが恋人だと思えたの? 本当に訳がわかんない!

 会って数日でデートの誘いをする奴なんて他の五人の中にも居ないよ?

 馬鹿なの? ぶっ殺されたいの? そうだよぶっ壊したくて堪らなかったよ本ッッッ当にね!」


 あははっ。


 あははははははははははっ。


「……何回も、何回も何十回も何百回も見たんだけどね、私、恋をされる理由がずーっとずーっと、わからなかったんだよね。教えてくれないかなぁ!」



「つっ……ぐぁっ」


 棘をグリグリ。楽しい。 体が小刻みに震えてるのが見てて楽しい。


 もうなんでも楽しくなっちゃってるなぁ。壊れちゃったね、わたし。うふふっ!


「ぁっ……がっ」


「えー。 答えてくれないの?まあ良いや。この棘もっと欲しいー? ――うんうんうんそうだよね欲しいよねほらあげるよッ!あははっ!」


 ほらほら、おかわりだよ。


 ひゅっ、という声が出ていて本当に犬みたい。別にこんな気持ち悪い何か、飼いたくも無いけど。


「何でっ……こん、なことを……?」




「――何でかって?」


 そういや、何でだっけ。

 取りあえず腕を組んで、考えてみる。


 ヴィルマが殺された事? いや、それは違うな。だって、それはコイツには関係ないし。


「……んー、何で、こんな事をするか、ねぇ…… 」


 目を閉じて考える。 ええと、うーん?


 んー……あっ。


「…………そうだ!」


 そうだね、なんというか、この答えが一番しっくり来る。


 しゃがみこんで、目線を合わせてあげた。 小刻みにプルプル震えている、その姿。可愛いなぁ。


 小刻みに震えてるのは痛みなのかな。 氷の冷気かな? それとも恐怖かな? ……話逸れちゃったね。


 ええっと、何言おうとしたっけ。……あー、そうそう。


「君って、何か食べる時に、何か考える?」


「……は?」


「聞こえなかった? ……君って、何か、食べるとき、考える?」


 一文節ごとに、区切ってはっきりと言ってみるも、反応が無い。


 ちょっと例えが難しかったかな。


「……んー、解りにくいかな。……じゃあ、起きる事でも良いよ。息を吸う事でもいいし、街を歩く事でも良いよ。若干違いはあるけどね。それで、何かする時って、何か考える?」


「……君は何、を言いた、い」


 聞いてるのはこっちなんだけどなぁ……。

 ……一々考えてたら話進まないな、進めよ。


「えー、答えてくれないのは寂しいなぁ。まあ良いか。 ……えっとね、解りやすく言えば、それと同じなんだよね」


 食べる時にその食材が何処から来たかなんて考えない。息を吸うのに、一々何か考えてる訳じゃない。


「殺したいから殺す。別に何か考えてる訳じゃないよ。 考える何かってむしろ有ったっけ。 あぁ、もちろん君を対象に選ぶ基準はあったけどね。」


 なんでぽかーんってしてるんだろう。 折角説明してあげてるのに。 聞いてよ。聞けよ。ねぇ。


「食べたいから食べるし、寝たいから寝る。街を歩きたいから歩く。あっ!そうだ!そうだ!そういえば―――」




 そうじゃん! 何でこんな簡単な事に気づかなかったんだろう!



「―――君も恋をしたかったからしたんじゃないの? 」


 分からなかった謎が解けるって、本当にいいよね! 本当にスッキリ出来るよねぇ。



「ああ! そうかそうなんだ! 教えてくれて、ありがとう!……じゃあ、これで用事は終わったし、もう君は必要無いね」




 あー、いい勉強になった。




「さようなら。殺しちゃってごめんなさい。あっ! 謝るんじゃなくて……感謝、だったっけ? ふふっ!」


 そうだったね。つい、癖がね。 ごめんごめん。



「さようなら。色々教えてくれて、ありがとう。」


 棘を全力で引っこ抜く。

 そうすると、そこから血がばーって出てきた。私の顔や服にも、赤い飛沫が飛んで来て、真っ赤に染まっていく。


 後片付けをやり(とどめをさし)ながら、感謝を伝え終わった所でふぅ、と一息吐く。


 遊んだ玩具(おもちゃ)は片付けないとね。 まぁそれは後でいいか。







 あーあ……本当に。







 楽しかったな!






あっちもいいけどこっちも好き。


これでチュートリアルは完全に終わりです。


……いままで見切り発車で来たんですが、そろそろプロットを纏めないといけなさそうな感じがプンプンしてきたので、ちょっとプロット纏めてきます。


実際に見直してみてここ分かりづらいなぁ、という所が結構あるんですよ。


……5月になるまでには確実に纏めてきます。

……出来るだけ早く再開するつもりですが。


エタるならエタるって宣言するので安心して(?)ください!


誤字報告、感想、評価宜しくお願いします!


……実際、ここが分かりづらい、って書いて貰わないと気付けないです、うん。

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