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4.アップルパイを楽しむ。

 

 寮の食堂。鳥の声が聞こえてあさだなーって思った。眠気で語彙力がぽーんしてる。


 ぽーんってなんだ。


 自分でもなんでそんな風になったか理解出来ない様なそんな感情を抱きつつ、朝の眠気の残るぽやー、っとした感じの頭を覚まさせるべくパンを口に運ぶ。


 ……うん。おいしい。


 朝食を一人でぽやーってしつつ、優雅(見た目だけは)に食べていると、隣にエルゼが座ってきた。


 隣に来たエルゼが、まるで獲物を見つけた猛獣の様なオーラを放っている。


 正直怖い。


 ……ランダムイベントのエルゼ引いたのか。



「ねぇねぇ、プリシラ、貴女ってアルバン様の事……………好きなの?」


 好きなの? の所で顔の凄みが増した。絶対に逃がさん、という乙女心(鋼の意思)を感じる。


 怖い。


 恋の噂が大好きな彼女はたまーに食事中に襲撃してくる。


 特に何も影響は無かったはずだから適当に終わらせれば良いか。


「そんな事無いよ?」


 えぇー、っとエルゼが不満そうな声を出す。


「私達の間ではかなりお似合いに見えるから応援したい、って話が多いわよ」


 あいつとお似合いなんて心外だ。


「少なくとも、私は何も思ってないけどね」


 ……そういえば、この評価って殺した後ってどうなるんだろう。考えてなかったなぁ。


 なんて思いつつ、コーヒーを飲む。ちょっと熱かった。


 朝と熱いのは苦手だ。


 ▲ ▽ ▲ ▽


 ……チュートリアル君のイベントは、初日に起こしたやつを含めて、告白イベントを起こすまでに3つイベントがある。結構少ない。


 ……本来は好感度を上げる為のイベントが必要なんだろうけど、そこは素と装備合わせて魅力95のステータスの暴力で突破だ。


 何回もあの顔を見てたら、ぶっ殺しそうになってくるからね。


 ヘラヘラしてる顔がうざいから。

 他の攻略対象の方がまだマシかもしれない。ただし一人除く。


 まずはイベント二つめから。


 このイベントは作法の授業に参加して、チュートリアル君に…………あー……うん……殺したくなってきた。考えるの止めよう。


 私は作法の教室へ出発した。



 ▲ ▽ ▲ ▽




 私は二列目の中央ちょっと右寄りに座る。


 ふぅ。開いてて良かった。


 この席は今からのイベントが起こるとき、私が使うので、確実に空いている筈だけど、心配だったので、少し早めに来てみた。



 ――そのせいか、凄い勉強を頑張ってそうな人ばっかり居る。


 皆、一心不乱に教本と紙を交互に見つめ、何かを紙に書いている。……徹夜でもしたのか、机に突っ伏している生徒まで居る。



 ……頑張ってるんだなぁ。



 いつも『私』の中で見ていた、授業の光景とは違う、静かな教室。


 それは何故か、特に面白い事も無いのに、輝いて見えた。


 復讐への期待から来るワクワク感とは、少し違うけれど、その光景から感じる何かは、私を惹き付ける、何かがあった。



 私は、暫く、自分のやるべき事を忘れるほどその光景に見入っていた。



『―――――――――な。』


 突然、声が聞こえた。小さいけれど、確実に聞こえた。


 ―――何だ?今の声は。



 辺りを見回す。

 誰も、喋っていなかった。


 皆が手元に目を向ける中、焦ったように辺りを見渡す私だけが周りから浮いている。


 とりあえず、精神を落ち着けて、前を向き、席に座り直す。


 ――今の『声』は、人間の声では無かった。でも、道具屋の店主の様な悪寒を感じる声でも無い。


 何処か、こちらの反応を見て楽しんでいる様な感覚がする、店主の声が纏う雰囲気とは違う。


 厳かで、頼りにしたくなる。 ……例えるなら、そんな感じだった。


 ……来た!



『――――――――――……


 再び訪れたその声。


 私はその何かを聞き逃すまいと、目を閉じて集中したが、その二回目の言葉は、途中で掻き消える様に途切れた。



 ガチャリ。と扉の音がして、騒がしい連中が入ってくる。


 その騒がしさではっと、我に返った。


 今はよくわからない『声』にかまけている場合では無い。


 生徒達が次々と入ってくる。まだ、チュートリアル君の姿は無いが、すぐに来るだろう。



 顔を作り直してから、イベントへ向けて、心の準備を始めた。




 ▲ ▽ ▲ ▽




「隣、良いかな?」


「あ、はいどうぞ、アルバン様」


 気持ち悪い笑顔を振り撒いてくるクソ野郎に、にっこり微笑んで迎えてやる。


「3日振りだね、プリシラ」


「そうですね、先日はありがとうございました」


「どういたしまして。 ……ふふっ、君は可愛いね」



 ……無心になれ。



「いいえ、そんな、私なんて……」



「謙遜することは無いさ。実際に可愛いと僕は思ったんだから」



 ………………………。



「そうだ、プリシラ、今度アップルパイの美味しい、良い店にでも行かないかい?」




 なんで会って三日目の奴をデートに誘ってんだ殺……


 ……………。


 む、無心……………… ああもう面倒だ! この気持ち悪い台詞、来るとわかってても我慢できない!



「……わあ! 楽しみです! 是非宜しくお願いします!」



 なんで選択肢の『私』も会って三日の男の誘いに乗るんだか。訳がわからない。


「それじゃあ、次の休日の一時位に学園の前で……おっと」


 そこで、救いのように授業開始の号令が掛かった。


 いや、正直もう限界だった。はぁ。………こいつとデートかぁ………辛い。



 授業中もめっちゃ話し掛けてきた。にこやかに笑いながら返しつつ、この場面ならどう殺すかシュミレートをする。


 殺す想像するのは割と楽しかった。


 次もこれで乗り切ろう。


 ▲ ▽ ▲ ▽




 そんなこんなで休日、チュートリアル君と一緒に貴族街の一角にある店に行く。


 店内は爽やかな感じで、甘ったるいコイツの雰囲気を和らげてくれているような気がした。ありがたい。


 運ばれてきた丸いアップルパイをチュートリアル君に見立ててカットする。気分は解体ショーだ。


 みーぎみみ、ひーだりみみ、くーち、みーぎめ。


 めっちゃ楽しい。



 食べやすいサイズになったアップルパイを口に入れる。


 軽く焼かれているリンゴを包むサクッとしたパイ生地に、リンゴの砂糖煮が甘さと少しの酸味を加えている。


 アップルパイ、美味しい。こいつが居なければもっと楽しめただろうになぁ。


 殺したらまた来よう。



 アップルパイをせっせと作業の様に口に運んでいると、大体半分位食べた位で話しかけられた。


 おい、喋っているとパイが食えないじゃないか、どうしてくれる。


 そんな内心の憤りを笑顔(かめん)の中に押し込みつつ、食器を置く。


「この店、好きなんだ」


「そうなんですか……このお店のアップルパイ、とても美味しいですね」


「そうだろう? 君も気に入ってくれたなら嬉しいよ」



 適当に話を合わせつつ、好感度上がる言葉を選択肢が本来あった場所で掛けていく。


 会話の間隔が開いた時を狙って食べる事で、どうにか完食することができた。


『私』って結構芸達者だったんだなぁ。私にとっては喋りながら食べるのは難しいよ。


 一時間ほど話した頃に、ようやく解放された。


 よく一時間も喋れるよなぁ。どこからそんな気力が湧いてくるのか、訳がわからない。



 これで三つ目。


 後は、ステータスを上げつつ、休日に他の仕込みをしてっと……



 結果、物理が+12、魔法が+9まで上がった。




 合計では、物理が17、魔法が14(装備で49)だね。

 今回は魔術中心で行こうか。うん。




 さあ、舞台は整った。



 チュートリアルの総仕上げ。始めていこうか。



増えた!ブクマ増えた!わっほほーい!


次回からはほんのちょっとだけチュートリアル君目線になります。


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