22.攻略と不穏。
宵闇コレ作品書き終えれたぁ……(マグネット)
……途中にとある物が再登場するんですが、これ、忘れていなかった人って、居るのだろうか。私はプロット見るまで忘れてました。
……翌日になりました。
という訳で、次の攻略対象とご対面。初回遭遇イベント、行ってみよう。
初回イベントの条件は、放課後に、学園の中にある、バラ園に行くこと。簡単。
……ただ、ちょっと校舎から遠いのが難点。
……赤い大輪の薔薇が咲く、入り口。そこに、バラの花を見ている、一人の男っぽい奴が居た。
異国風の、薄茶色をした髪。それを、肩近くまで伸ばしていた。
体は細くて、どこか女性的。……一言で印象を表すなら、華奢。
……なんだけど、流石は異国からの留学生。戦闘技術はめっちゃ叩き込まれていて、普通に強い。
そうじゃないと、異国からの留学生なんて簡単に戦争の引き金になりかねないし。
暗殺、毒殺、拉致。私が思い付くだけでこんなにあるよ。大変だね。
……さて、行こう。
「……薔薇、お好きなんですか?」
この台詞聞いて毎回思ってたんだけど、それ、見て分からない? 普通は分かると思うんだけど。
「……ああ。……本国の僕の家で、薔薇は、よく世話をしていたんだ」
めっちゃくちゃか細い、消え入りそうな声。あーイライラする。
……面倒臭いから、もっとはっきり喋れ。聞こえづらい。剣バカを見習え。……あれはあれで、逆に殺したくなるけど。
「本国、って言うのは?」
「ここ、クノール王国の隣、エーメリ皇国から、僕は来た。留学生、って事」
……この王国の名前、ほぼ空気だよなぁ。普通に、忘れかけてた。
まあ別に必要ないしね。テスト以外では完全に忘れてもいいんだけど。
「薔薇、私も見たいんです。ご一緒しても、いいですか?」
「……勝手にするといい」
「ありがとうございます!」
……という訳で、横に並ぶ。本当は薔薇とか見るよりさっさと殺したいんだけど。
▲ ▽ ▲ ▽
三十分くらい後。
横にいたそいつが、すっ、と立ち上がった。
「……僕は、そろそろ帰るよ」
「そうですか。では私もそうしましょうかね」
こいつとの会話は、言葉数が少ないのが嬉しいな。喋る為に声作るの、面倒臭いし。
んじゃ、最後に。
「今日は、ありがとうございました。……そう言えば、お名前を聞いていませんでしたね。私の名前は、プリシラです」
「……エリク。エリク・ショルツ、だ」
という訳で、次はこの、エリク君です。ぱちぱち。
通称はツン薔薇。
ツンツンしてる薔薇好き男、らしいよ?
「それでは、エリク様、またいつか」
「……ああ」
はいおーわり。帰ろ。
▲ ▽ ▲ ▽
……はぁ、疲れた疲れた。
いつも通り、帰路に着いた私。
でも、ここを『自分で』歩く、ってのは、いつも通りでは、無いんだよね。
なんだか、感慨深いな。
そう思いながら角を曲がり――そして、長い、黒髪の少女が歩く姿が目に入った。
……まだ、ヴィルマのイベント…………起こらないのかなぁ。
……楽しみに、してるんだけど。
――――え?
目を背けて、迂回しようとした私の視界の端。……そこに、ある物が、映った。
それと同時に、凄まじい怒りが湧いてきた。
今すぐ掴み掛かって、凍らせて砕いて消してしまいたい。……そんな衝動が私の体の中を駆け巡る。
……それだけは、許さない。絶対に。
ああ、ここまで憤りの感情が昂るなんて、攻略対象以外では全く無かったのに。
でも。……抑えろ。……出来るだけ、落ち着いた声で。感情的になってはいけない。
それが、奴等の一番喜ぶ事だから。
「――――何をしているんですか?」
そう、前を歩くヴィルマのかなり後ろを……泥水の入った容器を持ち、忍び寄る様に尾けていた、女子生徒に声を掛ける。
「……何を、しようと、してましたか?」
……そんなの見ればすぐ分かるけれどね。
私はそれを、何百回か忘れるくらい体験した。そこから激化する、陰湿な辱しめも。それに続く、気持ち悪い慰めの言葉も体験した。
……私は、それを、受け続けた。
……だから。許さない。
――――それを受けるのは、私の役割だ。それは、彼女に向けていい物じゃ、ない。
暫く、睨み合っていると、向こうから目を反らして――
「………………ちっ」
――そう舌打ちをした女子生徒は、逃げる様に校舎の方へ走っていった。
私は、焦りながらヴィルマの方に向き直す。
ああ、振り向くという動作すらもどかしい。
……早く! 早く! ヴィルマは大丈夫なのっ!?
『――――――駄目だ』
…………? あれ?
急に、昂っていた感情がすっ、と消えた。怒りも、焦りも、全て。
――――これは、チュートリアル君の攻略の時に聞いた、あの声だ。デートに誘われる前の、あの時。
ただ、前回よりも……少し、声が聞き取り易くなっている様な気がする。
それでも、あの時と変わらない、包まれる様な、安心感。
……でも。
気味が悪い、不自然な安心感、とでも言うべきなのだろうか。
……今すぐにヴィルマに駆け寄りたいと頭は考えているにも関わらず、体が動かない。
……なのに、それにすら、不信感を抱けない。ただただ、不気味なそれが、私に纏わりついている。
――――体が動かないなら、頭を動かせ。
なんで、あなたは私の邪魔をするの?
言葉にはしなかったけれど、多分、声の主には、これで伝わる。そんな、確信があった。
『……まだ、あの黒髪とお前が話す時期では無い。お前、と、彼奴の願いを叶える為には、まだ時が、必要だ。』
…………あいつ、って誰?
『彼奴は、お前を、一番――……』
また、あの時と同じ様に、段々と薄れる様にして、消えていく、その声。
はっ、として周囲を見渡すと、……もう、誰も居なかった。
……はぁ。
……あの声は、あいつとやらの願い事を、優先している様だけれど。
――――どうやら、私の願い事も、一応今の所は『あいつ』の願いと利害が一致しているらしい。
……なら、従おうじゃないか。どうやら、あの声は『あいつ』と利害が一致する限り、私も助けてくれる様だから。
……それにしても。
何で、ヴィルマが狙われたんだろう?
いつも狙われる、私では無く。
私の大切な友達を。私の心を助けてくれた、唯一無二の親友を。
――――いや、もういい。私が、彼女を守りきればいいだけなんだから。
……多分、あいつは、また戻ってくる。
そして、あの声は、別に、あのクソ野郎を止めるなとは言っていない。……もし駄目なら、もっと前から止めてるだろうし。
――――ツン薔薇の攻略、そしてこの問題の解決。
――――面白い。
「……今回の攻略は、大変だね」
……攻略三人目。どうやら、今まで通りには行かないらしい。
頑張ろうか。
なんかちょっと表現しきれなかった感があったのでここで補足。
……プリシラは、恋愛の部分が消えてしまった分、友愛の部分が大きくなっています。
なので、友人を守りたい、という気持ち、そして、ヴィルマへの大きな感謝から、こういう行動が出てくるわけですね。
……表現、練習しないとなぁ。
後、宵闇コレ作品いいね付けてくれると嬉しいな。
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