21.六花のメンテナンス。
……。お前、サボり過ぎじゃね?
前回の更新から一週間経ってるじゃん。
悔い改めて。
血と氷にまみれた木から、ぽつぽつと、光球が、飛び去っていく。
私は、その場に座り込んだまま、ぼうっと光を眺め、終わりを待ち始めた。
……ちゃんと、死んでくれたみたいだね。
さて。何時までも、この気持ちを引き摺ったままじゃ駄目だ。
……ようやく、二人目かぁ。
次は、誰にしようか?
――――あ、今回も、ピカッてするやつ来るね。
今度はしっかりと事前に目を腕で庇っておく。
目を庇ってから少し経つと、凄まじい光が――――
パキッ。
光と同時に、何かが割れる音が近くから聞こえてきた。
金属に少し近い、硬質な音。
……何の音だろう?
光が収まった所で周囲を見渡すが、何も変化した所は見当たらない。
ただ、剣バカの痕跡が消えただけ――――
剣バカの?
「……あっ」
そう言えば、そうだったねぇ……。
「君も、対象になるんだ」
腰に提げていた、六花を引き抜く。
……わぁ。
白い剣の先端、いつも良く氷刃でお世話になっている芯の部分にヒビが入っていた。まじかよ。
私も、六花にも氷属性適性があるからか、このまま魔法を使ってはいけない、という事が何となく分かった。
なんか、魔法纏わせたら、ぶちっ、って行きそうな感じ。んー、表現が難しいなぁ。
……それじゃなくても見た目がもうヤバイけど。
一応メニューから六花の情報を見てみる。
「多分、だけど……」
『エルナンの贈り物』
予想通り、その項目が、完全に消え失せていた。
「やっぱり、消えてるかぁ。まぁ、私にとっては嬉しいサービスかな。……ちょっと対価が大きすぎる気もするけど」
さて、これ、直して貰わないとなぁ。
▲ ▽ ▲ ▽
休日終わって授業日だけれど、街に出発。今日は、久しぶりの雨が降った。ちょっと肌寒い。
……今回は、この前の術剣屋のお世話になろう。あそこならきっちりやってくれそうだしね。
……授業をほぼ終わらせておいて本当に良かった。
六花は私の戦闘にとって、かなり重要だからなぁ。
これが無いと色々と練習も出来ないし。
昨日は、久しぶりに模擬棒でやってみたんだけれど、すっごいやりにくかったんだよねぇ。
慣れって怖い。……ちょっとぐらいは、模擬棒の練習もしないとだね。 今回みたいに、六花がまた壊れちゃうかもしれない。
他にも、六花が使えないけど戦わないといけない! って時も来るかもしれないしね。
用心用心。……到着っと。
ドアを開けて店内に入ると、前回と同じ、剣バカの(元)友人の店員さんが居た。
「こんにちは、店員さん」
「店員さん?……ああ、名乗ってなかったな。……僕はヘロルトだよ」
へぇ。ヘロルトって言ったんだ。
「そうなんですか。では、これからは、ヘロルトさん、と呼ばせて貰いますね」
「そうしてくれると嬉しいな。……それで、こんな雨の中に誰かと思えば。面白い雨対策をしているみたいだね?」
「対策をするのは当たり前じゃないですか。誰だって濡れたくはないと思いますよ?」
そう言い返すと、肩を竦めて、呆れ顔になった。
なんだ。何か間違ってた?
「雨粒を氷魔法で凍らせて、それを風魔法で散らして濡れないようにするが当たり前なのかい?」
「当たり前じゃないですね」
――だって魔法の練習がしたかったんだもん。
ついでに雨も防げて一石二鳥だ。万歳。
一応傘も射して来たけれど、全く濡れて無いね。私、かなり強くなったなぁ。
ま、それはどうでもいいんだよ。
顔を、外用の顔から、外用の真剣な顔に切り替える。ヘロルトもこちらの顔に騙されたのか、真剣な顔になった。
ちょろいちょろい。
「ヘロルトさん、これ……直せますか?」
鞘ごと六花を手渡す。
慎重に扱って下さい、と一応釘を刺しておくのも忘れない。
鞘から六花を抜いたヘロルトは、驚いた様に目を見開き、それから訝しげな表情になった。
「……これは?」
「……詳しくは私も良く分からないので説明出来ませんが……」
んで、狩りに行ってたら何故かぶっ壊れた、という適当にでっち上げた説明をする。
「……分かった。直すことは多分、出来るよ。暫くそこで待っててくれないか? 別に明日でもいいけど」
「今日使いたいので、ここで待っておきますね」
剣バカみたいに馬鹿じゃないからしっかり待ってますよー。
▲ ▽ ▲ ▽
んで、二時間ほど、周囲にたっぷりある術剣を見ながら、模型を作りまくってみる。
……うん、大分六花無しで発動する時の勘も戻ってきたかも。
お、勘もだけど、ヘロルトも戻ってきた。
私は、さっきまで作っていた術剣もどきを蒸発させ、差し出された六花を受け取る。
「……あまりこれに、強い魔力を流さないでね。修復材が馴染むまで、だいたい、二週間くらいはかかるから」
「ありがとうございます。ヘロルトさん」
ふーむ……どれくらいまでなら行けるかな?
……氷属性で言えば多分氷刃は使えるな。
風は適性が薄いから分からないや。
「それでは。何かあったら、また来ますね」
「じゃあね。またどうぞ」
▲ ▽ ▲ ▽
店にいた間に、いつの間にか晴れていた空の下、閉じた傘を持ちながら歩く。
さて……帰ったら、ある程度六花の確認の為に、素振りでもしようかな。
これからも宜しくね。六花。
最近、マグネットの方で書評書きまくってます。
楽しい。





