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20-2.こんな、弱かったっけ。

2つは流石に長かったのでちょろっと削って糊付けぺったん。


……したつもりでした。(3700字)


プリシラ視点です。

「お待たせしました!」


 そう言ってグラウンド前に居る、剣バカの方へ駆け寄る。今日は、この前のゴブリンリーダーの時と同じ装備を着てきてるよ。


 こちらの言葉にバッ、と首を向けてくる剣バカ。


「俺もさっきまで走ってたんだ。別にそんな待って無かったぞ!」


 ええ……何で走るの? まぁいいか。私には関係無いんだし。


「……それじゃあ、届けを出しに行きましょう」


 生徒同士が、手合わせや、決闘などをする場合、学園に届けを出して許可を貰わないといけないという決まりが、この学園にはある。


 そうしないと、傷を負ったときに冤罪を被せられたり、間違って(・・・・)殺しちゃった時とか、同意があったから無罪とか減刑、ってのが出来るからね。


 素晴らしいシステムだと思うよ?


「なぁ! プリシラ! その武器の使い心地はどうだ? きちんと扱えているのか?」


「ええ、とても使いやすいです。こんなに良い武器を贈って下さって、ありがとうございます」


 こいつに買って貰ったって所以外は凄く気に入ってるし。使いやすさで言えば現状最高としか言いようが無い。


「……っと、着きましたよ」


 ――――良かった。ここの会話短くて。


 そうしないと、横から漂ってくるこのバカ感で凄く気が抜けそうになるからね。


 ▲ ▽ ▲ ▽


 この前と同じ道程を辿って、少し開けた場所に出てきた。


「……ここ辺りで良いでしょうか?」


 剣バカが首肯したのを確認して、少し間隔を取る。

 そして――――


「そうだ! 良くある賭けだが、勝った方は、負けた方に何か一つ要求出来るっていうのをやらないか?」


 はい、これ、重要だよー。テストには出ないけど、覚えておいてね。


「そうですか。では……行きます!」


「ああ! 来い!」


 まぁ、行きます、と意気込んだものの、ここは別に、適当でもいい。別に負けるだけでいいし。


 何も考えずに、パルチザンをブンブン振る。振っている内に、一気に踏み込んで来て、剣を突きつけてきた。


「貰った!」


 よし、終わった終わった。


 ……意外と、時間掛かったな。もうちょっと早く終わると思ってたんだけども。


 ……馬鹿みたいなドヤ顔が視界に入って正直笑いそうになってしまった。危ない危ない。


「俺の勝ちだな! ……それじゃあ、一つ、言っていいか?」


「……どうぞ」


 私は笑いで崩れそうな笑顔をどうにか維持しつつ、続きを促す。


「……なあ。この剣を突きつけた状態で言うのも何だが……」


 ああうん、この状態で言う事なんて基本遺言を聞くとき位だよね。


 さて、そろそろ気を引き締めて、と。


「お前が、好きだ」






 はい、はーじめっと。


「あ、そう。知ってたけど」


「……え?」


 え、何でそんな驚くの? ……あの妨害の子達が来るくらいには広まってるよ?


 ……まぁいいや。今からやる事は変わらないし。


 氷魔法と風魔法を使って、擬似的な吹雪を作り出す。それを煙幕代わりにして、剣バカと大きく距離を取った。


 さーて、『私』っぽさを思いっきり全開にして言ってみようっと。


「私はまだ、負けって言ってないよ? だから、この試合、まだ続いてるんだよね? ……というわけでー…………眠れ」


数秒間、吹雪を展開したまま維持をしていると、急に気絶する様に剣バカが倒れた。


……寝るのはっや。


 体温が下がると眠くなるらしいね。……まあ、本来はこんな早く寝ない筈なんだけどなぁ。


 まあいいか。


 眠ってしまった剣バカを風魔法を使って補助しながら運んでいく。


 うん、術剣で風魔法使いまくってるおかげで、風魔法が少し、使いやすくなってるかも。


 ▲ ▽ ▲ ▽


 パチパチと音を立てる焚き火に、手を翳す。

 ……その暖かさは、少し冷たくなってしまった私の手を、じんわりと暖めてくれた。


「うぅ……」


「あ、……起きたんだ? もうちょっと、起きるのに時間が掛かると思ってたんだけどな。凄いねぇ」


 木に磔にしてあげた剣バカに、そう声を掛けると、怪訝そうな顔をして、こちらを見てきた。


「……お前、本当にプリシラか?」


「嫌だなぁ。君の大好きなプリシラだよ。……ふふっ」


 ただ、『私』っぽく演じるのは、止めたけれどね。


「さて、これで私の勝ち、で良いよね? もしそれで動ける様ならまだ相手しても良いよ?」


 これで動ける様なら、流石に全力でやらないといけないしね。


「……いや、無理だな。お前の勝ちだな」


「やったやったー。 はいこっちの勝ちー、ってね」


 よしよし、負けた君には私の願いを叶えさせる権利をやろう。約束してたの、覚えてるでしょ?


 立ち上がって木の方に駆け寄り、剣バカを下から覗き込む。


「……っ」


 ……ちょっと近付き過ぎたのかな? ……出来れば近くでしっかりと説明を聞いて欲しかったんだけど。


「でさ、私の『お願い』なんだけど……練習をしたいんだよね」


 別にそのまま殺す事も出来るんだけど、折角のお願いの権利、使ってあげなくちゃ。そうしないと、失礼だよね。


「――――今まで使った事はあっても、どれくらい『痛い』のかって、聞いた事ないんだよね」


「……何の、練習だ?」


「勿論、戦闘の練習だよ。君もその為に呼んでくれたんでしょ? ……だから、術剣を練習する用の案山子の代わりが欲しくてね」


 やりやすい様に少し後ろに下がって、っと。


「勿論、案山子の代わりは、君の体。」


 そう『お願い』の説明をすると、驚愕と、恐れが複雑に混ざった様な、そんな顔になっていった。


 うんうん。私、そんな顔、とっても大好きだよ。

 だって、まだ『私』の事を信じてるから。


 まだ、希望に、縋り付いてくれているから。


 ――――まだ、絶望して、貰えるから。


 そんな、滑稽な物を見ると、引き摺り落としたくなっちゃうよね。ふふっ。


「……何をするつもりだ!」


 ――――うるさいな。四の五の言わず、さっさと私を楽しませてみてよ。面倒臭い。


「……うるさいな。聞いてよ。あいつも君も、質問は答えてくれないし、私の話も全然聞いてくれないし。皆そうなの? そうなんだよね?」


 ああもう。何で邪魔しかしないんだろうなぁ。

 偶には役に立ってよ。


「……話を聞かないならもう始めちゃって、いいだよね? もう、説明なんて……要らないんだよね?」


 ……気分切り替えていこうか。楽しい事は、楽しい気持ちでやらないと、勿体無い。


「じゃあ、始めるね!」


 よし、最初は、右肩。利き腕から。


「がぁぁぁぁっ!」


 これでもう剣術は出来ないねぇ……! じゃあもう、ただの馬鹿じゃん! 馬鹿は馬鹿らしくきっちりと死のうね! うふふっ!


「ああ、その声だよ! その声が聞きたかったんだよ! 君、面白いね! あいつと違って、すっごい痛そう! いい!いいねぇ!」


 ……ああ、ちゃんと感想も聞かないと!

 そのため(・・・・)のお願いだしね!


「これって痛い? どの位痛い? どんな痛みなの? 冷たいと痛いってどっちが大きく感じるの? 凄く気になるの!」


「……はっ……っ、どっちも痛いとしか……分からん」


 ……うん? ……おー。


 ……これは多分、チュートリアル君なら答えてくれなかったね。教えてくれてありがとう。収穫収穫。


「……へぇ。答えてくれるんだ。少し見直したかも。じゃあ、これの感想もお願いするね!」


 次は嵐剣。今回は純粋な嵐剣の強さを見るために、嵐剣だけでやってみようか。


 せーのっ!


「がぁっ!……っ!……っ!」


 ぐちゃ、っと肉が弾け飛ぶような、生々しい音がして、顔に返り血が飛んでくる。


「あーあ。少しずれちゃった。うーん、やっぱり、こっちから見えなくなっちゃうのが辛いんだよなぁ。その分貫通力があるんだけれどね」


 左肩辺りを狙ったのに、左腕の肘辺りに当たっちゃったよ。


「……腕って壊れちゃったらこうなるんだ。初めて見たなぁ。……後は、風刃かな。あれ、結局切れ味がどの位なのか分からなかったんだよねぇ。骨は斬れないとしても、皮膚とか筋が斬れたら嬉しいんだけど」


「ぁ……っ……」


 ん? 何かな?






「――――やめてくれ」


 震える彼の口から出て来たのは、そんな言葉。


 それを聞いた私は、何故かピクリとも、動けなくなってしまった。


 ……さっきまで、体全体に巡っていた狂熱が、嘘の様に引いていく。


「…………やめてくれ、ねぇ。やめてくれ、かぁ……」


 ――――何故? ……私に、こんな気持ちって……あったっけ。


 狂ってしまった私に、こんな考えが、あったっけ。


 私は――――






 私は、『やめてくれ』と言う言葉に、共感してしまっていた。


『私』に阻まれてその言葉が言えなかった私。


 その私と同じ、やめて、と言う言葉を無視するのは、本当に何となく、駄目なんだと、そう、思った。


 本当は、もっと痛め付けてあげようと、思ってたんだけども。


「うん、分かった。…………じゃあ、これで終わらせるね」


 ……痛め付けるのは、もう終わり。

 

 せめて、一撃で殺してあげよう。



 ……これは、狂った私なりの手向け。


「そう言えば、試した事無いけれど、これならちゃんと死んでくれるよね?」


 水魔法で、六花から、水球を作り出す。


「もう一度言うけど、もうやめて欲しいなら、ちゃんと……死んでね」


 ……あれ、何か視界が揺れるなぁ。


 ……揺れると言うより、滲む、かな。


「……やめて、って言えるって、凄い事なんだよ。……君って、本当に………………幸せ、だね。」


 赤く色付いた蒸気が辺りに飛び散る。


 こんな筈じゃ、無かったんだけどな。


 つぅっと、蒸気とは違う、少し冷たい水滴が、頬を伝う。


 ははっ。私、泣いてるよ。

 なんか最近、泣きっぱなしだなぁ。ああ――――――――




――――私って、こんな、弱かったっけ。




私は、薄く苦笑いをしながら、その場に座り込んだ。

……本当はしっかりと最後まで痛め付ける予定だったんですが。


プリシラさんが止まったんだから、それに従わないと。


変な例えかもしれませんが、私達は「勝手に彼女らの世界を覗かせて貰っているだけ」だと思っています。


この作品の出発点は、一番最初の「嫌だ」のシーンが、自分の想像、という覗き窓からちらっと見えたから、それを書き起こしてみた、ってのが始まりなんですよ。その時はプリシラの名前すら考えてなかった。


ちょっと自分の所から覗けなかった所は予想で書くけれど、覗かせて貰えた所だけはしっかりと書いていく所存。


……長くなってしまった。


とまぁ、こんな、覗き窓に張り付いている、気持ち悪いへんたいさんなので、失踪は殆ど無いと思いますよ。やったね?


誤字報告、感想、評価、ブクマ宜しくお願いします!

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