表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/30

20.「幸せ、だね。」

昼~夜の間にタイトル変えます。


前回の話見直したら、最後のところが意味分かりにくい上に、削除した文の残りがあったり。 酷かった。


……まだ終わってませんよ?

 ――――ここは?



 目が覚めて、一番最初に感じたのは、手足の刺すような冷たさ。そして、夕刻前の冷たくなっていく空気だった。


 その、二つの冷気が、一度浮上した意識に入り込み、眠気の抜けきっていなかった頭を強制的に覚醒させてきた。


 その冷気と、対照的なぱち、ぱち、と弾ける様な暖かみのある音。


 目を開け、その音の原因を探ろうとすると、あることに気がついた。


 ――――手足が、凍っている。


 後ろを振り向くと、凍った手足は木に固定され、その状態で、磔にされていた。


「あ、……起きたんだ? もうちょっと、起きるのに時間が掛かると思ってたんだけどな。凄いねぇ」


 その声が聞こえた方向に目を向けると、焚き火に手を翳すプリシラが居た。


 けれど、それは。


「……お前、本当にプリシラか?」


「嫌だなぁ。君の大好きなプリシラだよ。……ふふっ」


 明らかに何時もの淑やかな雰囲気を纏っている彼女とは違う。


 何処か、無邪気に遊ぶ子供の様でいて、鋭利な刃物の様な危うさを感じさせる笑み。


 それは、自分の知っているプリシラには見えないモノだった。


そのプリシラ……が、ゆっくりと口を開く。


「さて、これで、私の勝ちで、良いよね? もしそれで動ける様ならまだ相手しても良いよ?」


 焚き火に手を翳したまま、そう問うプリシラ。


「……いや、無理だな。お前の勝ちだ」


 何を言いたいのかが分からないが、とりあえず、自分の負けを告げる。


「やったやったー。 はいこっちの勝ちー、ってね」


 そう、飄々(ひょうひょう)とした口調で言って焚き火の側から、クルリと軽快に立ち上がると、こちらに駆け寄り、顔を覗き込んで来た。


 その、大きな瞳が間近に迫る。


「……っ」


 ……その目には、何時もの、日を受けて爛々と輝く海の様な、希望に溢れている、あの好きだった色は無かった。


 自分を見ている筈なのに、虚空を見つめている様に見える、無機質な人形めいた瞳。

 宝石の様であるが、同時に凄まじい忌避感を覚えさせる。


 それが、にっこりと笑っている顔に対して、酷く、不釣り合いな物に見えた。


「でさ、私の『お願い』なんだけど……練習をしたいんだよね」


 そう言って、ひらひらと振られた左手には、術剣が握られて。


「――――今まで使った事はあっても、どれくらい『痛い』のかって、聞いた事ないんだよ」


「……何の、練習だ?」


「勿論、戦闘の練習だよ。君もその為に呼んでくれたんでしょ? ……だから、術剣を練習する用の案山子の代わりが欲しくてね」


 そう言って少し離れるプリシラ。


「勿論、案山子の代わりは――――」










「――君の、体。」









「――――何をするつもりだ!」


 ――――プリシラの言葉を遮り、そう訊ねると、彼女はスッと、笑顔を消して。


「……うるさいな。聞いてよ。あいつも君も、質問は答えてくれないし、私の話も全然聞いてくれないし。皆そうなの? そうなんだよね?」


 目から、頬から、口元から。おおよそ、感情と呼ばれる物が抜け落ちたままの顔で語る。


「……話を聞かないならもう始めちゃって、いいだよね? もう、説明なんて……要らないんだよね?」


 パキパキと音を立てながら伸びる氷の刃を指でなぞりながら、うわ言のように言葉を溢していた。


「じゃあ、始めるね!」


 だが、そう言った瞬間、急にパッっと笑顔になって、剣を振り上げ。


「がぁぁぁぁっ!」


 右肩を、斬りつけてきた。


「ああ、その声だよ! その声が聞きたかったんだよ! 君、面白いね! あいつと違って、すっごい痛そう! いい!いいねぇ!」


 返り血を浴びながら楽し気にぴょんぴょんと跳ねるその姿は、狂っているとしか言えないものだった。


 斬られた傷口に、裂傷と、冷たさで、ジンジンと鋭痛が走る。


 痛みによって、思考に白い何かがちらつく。

 ――――それが、何なのかは分からなかったが、それに気を許してはいけないと、本能が叫んでいる。


「これって痛い? どの位痛い? どんな痛みなの? 冷たいと痛いってどっちが大きく感じるの? 凄く気になるの!」


「……はっ……っ、どっちも痛いとしか……分からん」


「……へぇ。答えてくれるんだ。少し見直したかも。じゃあ、これの感想もお願いするね!」


 そう嬉々として言うと、氷の刃を落とした術剣を突いて――――違う!ただの術剣じゃない!


「がぁっ!……あっ!……っ!」


 剣先に纏わり付いた、荒れ狂う暴風が肉を削り、肉を抉る。もはや、悲鳴を上げる余裕すら無い。


 痛いという感覚ごと、抉り取って行かれた左腕は、木に張り付けられたまま、千切れたロープの様に、だらんと力が抜けていた。


「あーあ。少しずれちゃった。うーん、やっぱり、こっちから見えなくなっちゃうのが辛いんだよなぁ。その分貫通力があるんだけれどね。」


 腕って壊れちゃったらこうなるんだ。


 歪に笑いながら、完全に脱力してしまった左腕をツンツンとつつき、そう言う彼女。


「んー、後は、風刃かな。あれ、結局切れ味がどの位なのか分からなかったんだよねぇ。骨は斬れないとしても、皮膚とか筋が斬れたら嬉しいんだけど」


「ぁ……っ……」


 最早、正常な思考が出来ない、そんな状態で。


「――――やめてくれ」


 震える口から出て来たのは、そんな言葉だった。


「…………やめてくれ、ねぇ。やめてくれ、かぁ……。うん、分かった」


 ――――笑顔のまま彼女は動きを止めると。


「じゃあ、これで終わらせるね」


 術剣に水が纏わり付いていく。


「そう言えば、試した事無いけれど、これならちゃんと死んでくれるよね?」


 術剣から、ふわりと離れた小さな水球が、眼前にやって来てピタッと静止する。


「もう一度言うけど、もうやめて欲しいなら、ちゃんと……死んでね」


 白い何かに埋め尽くされた、ふらふらとする視界の中で。





「……やめて、って言えるって、凄い事なんだよ。……君って、本当に…………」


 その声だけは、鮮明に聞こえてきた。




「……幸せ、だね。」




 爆発のせいでもう何も、見えなかったけれど。

 多分、その顔は、泣きそうな物だったんだろうと、そう、自然に思えた。


なんかミスってプリシラさんが左利きになった。でも面白いのでそのままにしときます。過去の話見た感じ問題無さそうなので。


後、プリシラが、止まってくれた理由ですが、自分の中でそう動いてくれたからです。(謎)

本当は、最後まで止まらない筈だったんだけどね……。

キャラクターが勝手に動くって、こういう時の事を言うんだなぁ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『マグネット!』様でも、投稿させて頂いてます!

HGvCC3mwdaIZynSIx1LCA9UbiYd25onAT4u4FXpH.jpeg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ