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1.最初の一人。

 さて、そうと決まれば順序を決めよう。


 攻略対象の好感度を上げるのが先か?

 いや、殺す為のステータスも要るかなぁ。


 ……ちなみにこれらの変な単語の意味は「メニュー」の「メモ」で知った。


『私』を使っていた奴がいつもメモを使っていたから、そこから大まかな意味を覚える事が出来た。


 100周以上あればそれくらいはわかるようになれるさ。


 私は目を閉じ、メニュー、と念じてみる。




 目を開けると目の前に板の様な物が出てきた。


 メニューには、アイテム、ステータス、図鑑、メモという項目、そして三月一日という日付が書いてある。


 アイテムは所持しているアイテムが表示される。制限はあるので、溢れそうなら家や学校の寮のアイテムボックスに入れる必要がある。

 使わない……かな。


 ステータスは物理、魔法、学力、魅力の値が確認できる。


 戦闘の他に、アイテムの入手率、好感度の上昇率などに影響する。

 いっぱい使う。



 手帳は、モンスター図鑑、キャラクター図鑑まどの情報系。まだ何も埋まっていない。…手帳じゃなくてそのまま図鑑でいいじゃないか、なんて思う時がある。

 多分使わない。


 次にメモ。

 覚えきれない時に使う、以上。使わない。私、記憶力には自信があります。


 とりあえずメニューが開けるのは確認したので、メニューを閉じる。



 それで、このゲームには攻略対象が六人居る。

 どれもさっさとぶっ殺したいぐらいなんだけどね。


 やっぱり、一番最初は攻略の意味でも殺しの意味でも、やり易いのが良い。


 そう考えるとまずはあいつか。


 アルバン・ソレル。



 男爵のお坊ちゃんで、結構純情。入門編と言うべきか、好感度が上がりやすい。通称チュートリアル。実際にルートもかなりチュートリアル。


 チュートリアル君は最後のはちょっと特殊だけれど、イベントが全て好感度が条件なので、ステータスを上げながらも進められる。


 それに、このルートだけはちょっとした面白い要素があるから。



 ……イベントを無視して殺すってのも考えたけど、多分無理だ。

 最初の十週目くらいに攻略対象に暗殺者を送ってみたけど奇跡的(・・・)に防がれたみたいだから。




 ……多分、この世界で大きく変化が起こせるのは『選択肢』の時だけだ。


 あそこだけがこの世界の何かが不安定で、隙がある。根拠は無いけれどそう感じた。



 ――それに、ただ殺すだけじゃ面白くない。


 どうせなら最高の瞬間に殺してやろう。


 それまでは演じてやろうじゃないか。いつも通りの『私』を。



 ああ、殺す瞬間、どんな顔をするのか楽しみだ。


 馬車が止まった。


「お嬢様、着きましたよ」


 さあ、始めよう。


 私はいつも『私』が使っていた笑顔(かめん)を顔に張り付けて、馬車を降りた。



 ▲ ▽ ▲ ▽



「あっ、貴女も新入生?」


 馬車を降りて暫くすると、茶色っぽい瞳に、ふわふわした栗毛のショートボブの女の子が話しかけてきた。


 その目には、腹を探ってくるような感じが無い。純粋な好奇心だけがあった。


「はい、そうですよ」


「私はエルゼ。エルゼ・ファラーよ、よろしく!」



 この子はエルゼ。侯爵令嬢なのだが、分け隔てない性格で人気がある。……正しくはこれから人気になる。

 後は…噂好きで、特に恋の噂が滅茶苦茶好き。



「それで、貴女の名前は?」


 ……実はここで始めて名前を名乗る事になる。


 ここまで私は名無しのクレヴァリー家子爵令嬢でしかなかったと言うことだ。


 私は事前に考えておいた名前を名乗る。


「私はプリシラ・クレヴァリーです。エルゼさん、これからよろしくお願いします」


 このプリシラ、という名前は別の『前作』という世界の主人公の名前らしい。


 その名前を名乗ると、ポケットに今まで無かった重みを感じるようになった。


 ……この名前にすると、魅力と学力の成長スピードが上がる《プリシラのネックレス》が手に入る。ステータス上げでは重要な装備だ。大切に使わさせてもらおう。


「敬語なんて堅苦しいよ、普通に話してくれない?」


「……じゃあ、これでいいかな?」


 ちょっと砕けた感じに声を作り直してみると、エルゼはうんうんと頷いた。


「うん、それでいいよ。…それにしても、今期の入学生には格好いい御方が多いねぇ…」


 エルゼは腕を組んでニヤニヤしながら私の後ろを見る。振り返ると、騒がしい人だかりができていた。


 その中心には金髪の男がいた。その赤色の目は優しげで、周囲には穏やかな雰囲気が満ちていた。


 チュートリアル君の御出座しだ。


 その優しい雰囲気は人を惹き付けるのか、引っ切り無しに女子生徒に話しかけられている。


 私の内心はその明るい感じとは程遠かったけど。





 はぁ、今すぐ殺してやりたい。


 今すぐグッチャグチャにして血をぶち撒けさせたい。その綺麗な笑顔を只の醜い肉塊にしてしまいたい。



 その衝動が自分の(かめん)に出てくる前にどうにか気を鎮める。


 ダメダメ。ここで殺しちゃ面白くない。


 絶望は幸福と不幸の落差。


 より高い崖から落ちた物体ほど落下の衝撃は大きくなるのだから。




 さて、私の物語の序章。


 まずはチュートリアル。

 サクッと終わらせてしまおう。


このプリシラさん、人と会話するときは大体猫被ってます。

そりゃあもう、ただの子猫レベルで。

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