幕間:夢の中で。
やっべえ昼寝してたら寝過ごした。許して。
……ちょっとここら辺の要素が薄いかな、と思ったので。
次回の投稿時間は16時~にしてみます。折角のGWだしね。
夢って、不思議な所が変だと感じれなくなる感じ、しません?
……ふぅ。今日は大分リフレッシュできたなぁ。
正直、体の調子は模擬棒訓練の前より良くなってる気がする。こんな疲れてたなんて、全然気づかなかった。
状態が自分でもおかしいことが分かっていなかったレベルで無理してたっぽい。精神的にも、肉体的にも。
嫌いな奴と過ごすってこんな疲れるんだな……くそ、思い出すだけでムカつく。
面倒な事はさっさと忘れるに限る。さあ寝よう寝よう。
▲ ▽ ▲ ▽
貴族街の外れにある小高い丘。
その大きな木の影の中には、二つの人影があった。
心地よい風が吹き抜けるここは、私と彼女の、お気に入りの場所だった。
「ねぇ」
「何?」
「ここで会えるのって、後何回だったかしら?」
木を挟んだ背中合わせの状態で話しているその相手から、そんな言葉が聞こえてくる。
「えっと…………」
私はその質問に対して、1、2と指を折りながら数を数える。
「後……三回、だった……かな」
「……そう。案外、一ヶ月って短いものなのね」
「………………」
はらり、と頭上から落ちてきた花びらが手の甲に乗ってきた。
……可愛い花びらだなぁ。
その、可愛らしい花びらを見ていると、いつの間にか吹いてきた風に攫われ、何処かへ飛んで行ってしまった。
それはまるで、自分が花の様にすぐに散っていって、消えて無くなっていくんだと、言われてるような気がして。
「まぁ……うん。私は、満足だよ。こうやって、素で話せる相手なんて、殆ど居ないし」
チクッとする様な、罪悪感が胸に広がっていく。
はぁ……。
また嘘、吐いちゃった。
……なんで嘘を付くのかって?
………………だって、怖いから。
いつも、皆に好かれているのはゲームの『私』だけ。
――――今の「私」が本当に好かれているのか。それが分からなくて、怖い。
――――本当は、今、私が演じている『私』という仮面だけしか、好かれていないんじゃないか。そう、思えてしまって。
――自分が空虚で、薄気味悪い、不確かな物の様な気がして。
それが、本当に、本当に………………怖い。
ははっ。
友達と過ごすってこんな疲れるんだなぁ……。 ……なんだか、泣きたい気分になってきたよ。
多分私は、永遠に道化でしか無いんだろうなぁ。
「…………き」
突然、彼女が何かを呟いた。
「えっ? 何? 何か言った?」
慌ててそちらを向き、彼女の言葉を聞き取ろうとしたが、何も言って無いわよ、と言い返された。
良かった。ただの独り言だったらしい。
「ねぇ。――今まで、何となく聞けなかったのだけれど。何故、一ヶ月後からは駄目なの? 貴女も、学園に通うのでしょう? ここでなくても、学園で会う事は出来ないの?」
その質問に、どきんと胸が鳴る。
「それは…………」
その時にはもう、私じゃ無くて、『私』だから。
いつか、言わないと。
そう思い続けて、ずっと言えなくて。
「私って、そんなに頼りなく見えるの?」
「そんな事無いよ……うん。言わないと、駄目……だよね。」
目を閉じて一つ、大きく深呼吸をする。
「あのね、実はこの世界は――――」
意を決して目を開く。
ぴちゃっ。
「……え?」
粘性の液体が、飛んで来た。その液体は、少し、生暖かい感触があって。
そして、その液体からは。
……鉄の臭いが、していた。
どさっ。
「ぇ………ぁ……ぁあっ」
いつの間にか私は緑に溢れる丘の上ではなく、絨毯が敷かれた室内に立っていた。
そこには王子に刺されている彼女が居て。その隣に、私が居て。
「え………………え?」
私は、理解できずに、言葉を失う。
――――はっはっはっは。
貴族達が、子供が、大人が、全てが、こちらの方を指差して笑っていた。まるで、間抜けな顔をしたピエロでも見ているかの様に。滑稽な何かを、笑う様に。
何で、皆、ヴィルマと王子を笑って……?
突然、特に大きい笑い声が一つ。
はははっ。
その声は、すぐ隣から聞こえて来た。
その、笑い声の主は、王子。
つまり。
ゆびをさされているのは。
わらわれているのは。
わたしだ。
『あなたのせいだよ。あなたが居なければ、こんな事には為らなかったんだよ?』
『君が教えなければ。』
『あなたが受け入れていれば。』
『君が何もしなければ。』
『あなたが心を殺していれば。』
『そうすれば、彼女が苦しむ事は無かった。』
男にも女にも、肥えた男の様な、痩せ細った老人の様な声。気味の悪いダミ声。純粋そうな子供の声。声。声。声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声声。
あらゆる観客達の『声』が混ざった声達にが私を非難する。
嫌だ! 聞きたくない知りたくない気づきたくない!
「……………ぁぁ………ああああああああ!!!!」
『でも、――――な――――った。』
『だから、――――よ。』
▲ ▽ ▲ ▽
「…………っああっ!」
……夢。
「すぅ………はぁ………」
取りあえず荒い呼吸を落ち着ける為に、大きく深呼吸をする。
背中は冷や汗で濡れていた
濡れた場所が、夜の冷気に触れた所からどんどん冷たくなっていく。
その寒さのせいか、……はたまた、別の何かのせいか、大きく身震いをしてしまった。
夢………夢かぁ……。
うん、物語で良くある展開みたいだね! はははっ!
さて、朝まで時間あるみたいだし、寝直そうか!
――――ぽたっ、と枕に落ちた水滴が染みを作り出す。
光を反射している窓には、無理矢理笑顔を作りながら、泣いている自分の顔が映しだされていた。
嫌だよ……。本当に、嫌だ。
……怖い。夢でも……現実でも、想像でも、幻でも。…………もうあの光景を見たくない。
だから、もう、失敗するのは嫌だ。
攻略を、必ず、成功させなきゃ。絶対に。
確実に、成功させる。
顔を流れる、涙を拭って。
一向に来ない眠気を呼ぼうとするかの様に、復讐を望む私はぎゅっと、目を強く瞑った。





