10.狩られそう。
遂にナンバリングも10に。
ちょっと達成感。
GWやりたい事が多くて執筆時間が……
「ふんふふーん」
明るい曲調の鼻唄を歌いながら軽快に歩く。
……普通の可愛い女の子っぽい? 失礼な、私は可愛い女の子だよ。
非力で自分を鍛えようと頑張ったりと、とっても健気で、ちょっぴり人を殺したかったり、復讐をしたいだけの只の可愛い女の子です。
可愛い女の子です。
可愛い女の子だ。
「ふんふーふふん」
そんな可愛い女の子が歩く度に、店で買った、白と青のブレスレットがチャリ、と鳴る。
それが私の鼻唄に対して、拍子を取ってるみたいでちょっと面白い。
そんな風に楽しみながら街を歩いて居たんだけども。
……ヤバいヤツに出会ってしまった。
目の前の街路樹の影に、黒いフードを被った、小柄で、明らかに怪しい格好の人影がしゃがみこんで居た。
その、どこぞやの噂好きの女の子は何やらぶつぶつと呟きながら、手元のメモに何かを書いていた。
時々きゃぁ! だとか、うふふふ…… だとか言ってて気持ち悪い。
「あの子はやっぱりあの子の事が好きなのね……ふふふっ、メモしてっと、さてこれぐらいで良いかしらね、次は何処に……」
こんなイベントあった事もないし、イベントじゃ無いんだろうけどこれはわかる。やばい。
……よし! 私は何も見てないし、聞いてないし、関わりたくもない。なので私は立ち去りますねさようなら!
私は後ろを向いて出来るだけ早足で歩き始めた。
「あら? ……プリシラ?」
狩人は、フードの中の茶色の瞳を光らせながら、こちらに視線を向けた。
……やばい。見つかった。
……3……2……1…………
……走れ「待ちなさい」!
「きゃあ?!」
はっや?! お前は風か何かか! 作ってない素の声出そうになったわ!
がっしりと腕を掴まれ、捕獲されてしまった。
「やめて! 今日は普通にぶらぶらするだけの休日でいいの! 恋愛話なら学校で――」
「たまにはクラスメイトと過ごす休日もいいと思わない?」
取りあえず諦めて……エルゼの方を向く。ああ、目が輝いてらっしゃる…………。
「最近、エルナン様といい雰囲気じゃない? 一度聞いてみたかったの!」
「そんな事は全く無いよ…………後、拒否権は無いの?」
取りあえずそう聞いてみる。希望はほぼ無いけど。
「別に無いわけでは無いわよ? ……ただ、拒否されたら自分で調べ上げるから大丈夫」
そう言ってにっこりと笑った。凄い楽しそうな満面の笑みですね!
調べ上げるってのが実際に出来ちゃうのがやっぱ怖い。 恋話ハンターは今日も絶好調のようです。ちくしょう。
結局捕まった。まあいいや、自分の買い物は割と満足したし。
▲ ▽ ▲ ▽
「さて、聞かせて貰おうかしら」
喫茶店のテーブルを挟んで応対する。
衛兵の取り調べってこんな感じじゃなかったっけ。
確か、こういう風に机挟んで対面する形だったはずだ。あんまり覚えて無いけど。
まあ、何が言いたいって、これ取り調べされてるようにしか感じない。
取りあえず、大人しく取り調べされていこうか。
問題としては、イベントじゃないから、何が言っても大丈夫なのかがわからない。 いつも以上に気をつけないとね。
てかイベント以外もこういう事起こるんだ。初めて知った。
「私の何を聞くの?」
「まずは…… そのブレスレットからかな。青と白……それに、紐は赤じゃない! きゃぁ! 誰よ誰よ! 」
顔を赤らめてブンブンと顔を振っている。うん。ちょっと落ち着け。
赤だし、縁結び系のブレスレットと勘違いされたのかな。
「取りあえず落ち着いてよ…… これはちょっと個人的に赤には少し思い出の様な物があるの。縁結びを期待しているわけじゃないよ」
それを伝えると、エルゼのテンションが目に見えて下がった。スッってなった。
はぁ…… 毎回毎回テンションを上げて下げてって、大変だなぁ。大丈夫?
「ふぅん……そっちはまあいいわ。 で! エルナン様はどうなのよ!」
「貴女、アルバン様の時もそうだったけど、何でそんな――」
「……ちょっと待って」
テンション高いの?と言おうとしたら、急にバッと、手を突き出して遮られた。
「アルバン様って誰? 」
……え?
「もしかして……それが本命!? どこの誰なの!その御方は!」
適当に終わらせればいいか、と放棄していた思考を真剣な状態に戻す。
エルゼがチュートリアル君の事を忘れている?
……いや、彼女が恋愛関係で忘れる様なヘマはしないだろう。むしろ忘れてたら天変地異とか世界の終焉を疑うべきだ。
つまり、結論としては――――
……チュートリアル君――――アルバン・ソレルはあの瞬間に完全に消えた。私の記憶以外の、全てから。
うん、少しはその可能性は考えてた。 だって、学校で全くチュートリアル君の話題を聞かないし。
――それが解った所で、次の疑問。
彼に関係している物は何処まで消えた?
「――エルゼ」
「何? 話す気になったの?」
「ごめんね、ご期待には添えないけど、ちょっと聞きたいことがあってね」
そこで一拍置いて、エルゼを見る。エルゼもちょっとは此方の真剣さを感じたのか、少し佇まいを直した。
「……ソレル男爵家の跡継ぎって、誰だったっけ?」
「……? ソレル男爵家……? ああ、あそこね。 確か今は跡継ぎ候補は居なかったと思うわよ?」
ソレル家はあるのか。 後は……
「……なんで今その事を?」
エルゼの表情には怪しむ様な表情が浮かんでいる。 流石にここで止めといた方が良いか。
さて、なんて誤魔化そうか。
……よし。
「あまり高い位の人は気後れしちゃう気がしてね…… 低い位の人だと……ね」
そうかるーく芝居がかった感じで言ってみた。
何をすることが気後れするなんて言って無いけどね。多分、これなら誤解してくれるでしょ。
……本当に言いたかったのは、低い位の人の方が、殺すのに気後れしないよね! だよ。
「へぇぇぇぇぇ…………」
ほーら、やっぱり。顔が変わった。
「ちょっと私、行ってくるわね。 会計は済ませておくから大丈夫よ!」
大勝利。いえーい。
私は勢い良く走り去る彼女の背中を見送りながら、自分の反対側に残っていた焼き菓子を摘まんで、口に放り込んだ。
うーむ、エルゼさんの便利度高いなぁ。
そろそろ新規読者層ゲットの為に更新時間を変えてみようかな、と思っていたり。
次回までは確実にこの時間です。
やっぱり評価は貪欲に取りに行くものだと思うんです。エルゼみたいに。
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