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0.プロローグ

初投稿です。

色々と拙い所が目立つ作品ですが、よろしくお願いします。

学園の校舎裏。


 何処か隠された秘密の場所。そんな雰囲気を感じさせるその場所に『私』と王子は居た。



「私は君を愛している」




 ――嫌だ。




「君の輝くその金髪も、青い目も、君の声も、全て、好きだ」




 ――嫌だ。



「どうか……私と婚約してくれ!」



 ――嫌だ嫌だ嫌だ……!



 ぽん。



 # 王子の婚約を受けますか? #

  『はい』/『いいえ』



 音と共に虚空に現れたそれ。



 ……私は(・・)それを選ぶ事は出来ない。

 いつもそれを決めているのは私では無い何か(プレイヤー)


 それは私の魂を縛り、体だけの『私』を使って好きでもない男に愛を囁かせて……使い倒した後、―世界を壊して作り直す(リセットする。)


 ずっと、それが繰り返されていた。何十回も、何百回も。まるで、呪いの様に。


 婚約の相手は王子だったり、他国の貴族だったり。他にも騎士だったりした。



 ――暫くの間があった後ぴん、と音がする。



『いいえ』の選択肢が消え、『はい』の選択肢が淡く光った。


 選択肢がぱっと消えると、『私』はすっと息を吸って、顔を上げた。




 その顔には今にも溢れそうなほど、涙が溜まっていた。まるで、苦難の道を越えて来たと言いたそうに。


 ――実際は、ただ、王子にベタベタして助けてもらっただけなのに。


 ずっと、苦しんでいた、と示そうとしているように。


 ――――苦しい事なんて全く無かった。あったのは、気を引くための、演技だけ。



 そして。

 砂糖を煮詰めきった様なドロドロとした甘い声で。


「はい……! 宜しくお願いします……!」



 そう、『私』が言った。




▲ ▽ ▲ ▽



 『私』はニコニコして隣の王子に抱きついている。


 婚約発表のパーティー会場は派手に装飾されていて、私もやたらと重いドレスを着せられていた。


 次々にきらびやかな服を着た貴族達が此方へやってきて祝いの言葉を述べる。


 どれも貴族らしい空っぽな言葉だけども。


「殿下の婚約者は本当にお美しい……」


「ははっ、そんな目で見てもこいつは渡さないぞ?」


『私』は、それを開き、何かを言おうとした。


 その言葉を遮るように突然会場が騒がしくなる。



 ……私はこの後に続くことを知っている。




「カーフェルト候爵令嬢が来たらしいぞ」


 その名前が聞こえた王子は苦い顔つきになった。


 いつも手下を使って私との婚約を妨害しようとしている面倒な奴と思っているからだろう。


 実際は何もしていないのに貴族の派閥争いの尻尾として切られているだけ。


 ……今回だけは違うけど。


 ――今回は、婚約の妨害は私に頼まれてしているから。


 最初は気紛れだった。


 この絶望ゲームが始まるまでの一ヶ月間の執行猶予。


 本当になんとなく。ヴィルマと話してみた。


 彼女は、とても優しくて、正義感があって。

 ――気がつくと、すぐに友達になっていた。


 一緒に居ると、楽しかった。一緒に居ると、沢山の事を知れた。


 だから、甘えてしまった。


 私は、愚かしくも、頼ってしまった。


 この物語が始まる三月の前に。


 私の事。これから起こること。彼女が悪役としてしてしまう事。その結果。それを全て、話した。





「殿下! その子との婚約はお止めください!」


 ヴィルマは必死にそう伝える。


「あいつを摘まみ出せ、不愉快だ」


 王子は苛立たしげに衛兵に命じる。


 直ぐに彼女は衛兵に取り囲まれ、隠そうともしない冷ややかな嘲笑に包まれる。


 そんな逆境でも彼女は怯まなかった。それでも、諦めなかった。


 だから、焦った彼女は失敗してしまった。


「その子は殿下との婚約を望んでいません!」


 その言葉に部屋の喧騒が消える。


 ああ、やっぱりその言葉が出てくる(イベント通り)事にになるんだ。


 彼女はしまった、という顔をした。

 私の忠告を思い出したのだろう。


 ぽん。



 虚空に綴られる、その言葉。


#どうしますか?#


『王子への愛を宣言する』/『ヴィルマを宥める』




 ……この呪われた世界には救いなんてない。


 もう最初の私の名前が何であったかもわからない。


 覚えてくれている人も、もう居ない。


 ―――であったかもしれないし、――だったような気もする。



 ぴん。


『王子への愛を宣言する』


「私は王子を……」


 その言葉に、全身に虫が纏わり付くような悪寒と嫌悪感を感じる。


 ……やめろ。


 ―私のしゃべり方はそんなじゃない。


――私はそんな気持ち悪い声じゃない!


―――私はそいつを愛していない!!


――――私は、親友を裏切りたくない!!!


 その言葉は何処にも届かない。


 私を焦るだけ焦らせて、何も残してはくれない。


「心の底から…愛しています」



 盛大な拍手が『私』を包む。


 目の前の友達が私を信じられないとばかりに目を見開いてこちらを見る。


 あぁ。


 はは。


 いつも通りの結果じゃないか。今回は伝える事で彼女は救えると思ったのに。



 呆然とする私を置き去りにして、目の前の物語は続く。


 王子とヴィルマが何やら言い合いをした後。


 いつも通り衛兵に連行されて行って……?


 ずさっ。


 私はその音でようやく異変に気がついた。


 何か様子がおかしい。王子とヴィルマが言い合いをすることなんて今まで無かった。いつもは面倒臭げに衛兵に命じるだけなのに。


 なのに。


 王子が剣を抜いていて。


 その剣に赤色の液体が付いている。


 そして、ヴィルマ(ともだち)は。


 王子に、殺されて、いた。


 は……ははっ。



 なんで。


 なんで?! なんでよ!! 私が教えてしまったから?


 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!


 こんな世界なんて嫌だ!


 愛なんて全部……要らない! 要らない…要らない! 要らない要らない要らない要らない!



 私は……あいつらを消して……自由になりたい!!




 そんな叫びは何処にも届かない。私の心の中で反響して大きくなっていくだけ。


 段々と世界が白に染まっていく。


『END』


 白に染まりきった世界は終わりを迎え、時は巻き戻され始めた。




▲ ▽ ▲ ▽




――このセーブデータは279周目のクリアデータです!


 このクリアデータを元に新しく最初から始める事が出来ます。








280周目を始$B$a$^$9$+(B? $B;O$a$k$H!";}$AJ*$J$I$O=i4|2=$5$l$^$9(B!―――error.





ぴん。





本当$B$K$h$m(Bしいですか?




ぴん。




それでは、$B5.MM%C(B!$B8+$F$$$k$J%C(B!をお楽しみください!




▲ ▽ ▲ ▽


『――――――――――』


『―――――――――――――』


『――――――――――――――』


▲ ▽ ▲ ▽




 温かい朝日が私を包んでいる。


 まだ微睡みの残っていた頭を振り、体を起こした。


 辺りを見渡すと貴族の部屋にしてはシンプルな家具で統一された部屋が目に入った。


『私』の無駄に豪華な家具達は何処にもない。



 戻って来た。


 久しぶりの私自身が動ける時間。


 いつもならここから時間が惜しいとばかりに行動を起こすのだが、私は動かなかった。


 どうせ、何をやっても変わらない。



 私は自嘲気味に笑い、再びベッドに寝転がった。


 首を横に向けると、手が、震えているのがわかった。


 なんで、震えているんだろう。


 ああ、そうだ。


 怖かったんだ。あれ以上酷い結果になるのが。


 ああなるぐらいなら最初から何もしなければ良い。


 ……何も、考えなければ良い。


 私は再び目を閉じた。


▲ ▽ ▲ ▽



 それからは特に何もすることなく過ごした。


 唯一、入学前の事前の勉強は適当に終わらせておいた。残しておくと家庭教師が煩い。


 三週間分の課題を一時間で終らせて提出したら、家庭教師の顔が引き攣っていたのが少し楽しかった。


 そして、始まりの、三月になった。



 朝、目を覚ました私は制服を着る。

制服は比較的軽くて着心地が良い。


 この制服は割と嫌いじゃないよ。


 なんで始まるのが嫌なのに制服を着ているかだって?


 もし、着てなくてもどうせ始まる時にはいつの間にか着ている。どうせなら自分が着ていた方が気味の悪さが無くていい。


自分自身が出来る事なんて、これしか無いしね。


▲ ▽ ▲ ▽


 食堂の扉の前で足を止める。

 これを開ければ『私』の物語が始まる。

 開けなくても時間になればいつの間にか入って居るのだが。



――私は、扉を開けた。











 ……あれ。


 何も、起こらない。




 試しに一歩踏み出して見る。


 足は緊張と期待に震えながらもきちんと一歩動いた。



 多分今私は信じられない物を見た様な顔をしていると思う。……実際に信じられない状況に陥っているのだが。


 呆然としながら席に向かっていると父様に声をかけられた。


「おお、良く似合っているね」


「………!」


 私はその声に過剰に反応してしまう。

 それは、いつも一番最初に掛けられる言葉だったから。


「…はい、これを着れるのを楽しみにしていました」


 ……私はほぼ反射的にいつも(台詞)通りの言葉を返していた。


 媚びた甘ったるい声とは違う、何処か抑揚に乏しい声だった。


 元々の私ってこんな声だったっけ?


 いつも自分の中だけで考えてるか、作った声で喋っていたから、自分の声を聞くのは、久しぶりだった。


▲ ▽ ▲ ▽


 カタカタと馬車に揺られながら、考える。


 これからどうしようか。



 普通に学園を楽しむ。勉学を頑張る……もう覚える事は無いか。



「……………?」


 ふと、私にとある一つの考えが産まれた。


 それは私の心にじわじわ広がっていって、私をワクワクさせる。


 それはまるで、面白そうな本を見つけたような、そんな気持ち。


 何度も嬲られて。苦しめられて、殺された私の心。


 ――じゃあ、皆に等しく返してあげようじゃないか。


 あの、クソみたいな攻略対象達全員に。


うん。そうだ。それが良い。



――皆、嬲って、苦しめて、殺してあげよう。

恋を恐怖に。恐怖を絶望に。絶望を死に。

それを笑いながら見てやろう。


ふふっ。


この世界(ものがたり)を、壊してやろう。


そう、決意した。

因みに、主人公には台詞のウィンドウと、周回を始める時のやつ以外のゲーム的要素が見えている、と思ってください。


初日は3本投稿します。


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『マグネット!』様でも、投稿させて頂いてます!

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