雪丘に咲く青い星①
「君の花には気持ちが感じられないんだ。そんなロボットみたいなブーケでは一生優勝は無理だろう。」
審査委員長が言った。
「お前はデザインばかりに気を取られ過ぎて、ひとに花を贈るという事の、根本的な意味が分かってないらしいな。」
店長が言った。
「ううぅ、違う。オレのブーケはロボットなんかじゃないんです。人に花を贈る意味?分かってます。ただ素直になれないだけなんです......」
「ウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだ。」
黒い人型のシルエットに、かなりの大人数で囲まれ、オレは頭を抱えてひざまずき、うわぁぁぁぁ、と叫んでいた。
目が覚めた。
寝汗がビショビショで、息も上がっている。
「なんだ、夢か。」
一言、さっきの悪夢から現実に戻るために、口にだしてみた。
オレは、水を飲もうと思い冷蔵庫の方に行こうとすると、そこには、あたり一面に広がる透明度の高い湖が広がっていた。
よく、自分が寝ている場所を見ると、そこは柔らかい草が生え、自然のベッドを作り出していた。
「なんだ、夢か。」
まだ目が覚めていないらしい。
柔らかい草のベッドに倒れこみ、もう一度、寝る前に起きた出来事を整理してみた。
ええっと、今日は強制早退させられて、気味悪い古本屋で面白そうなゲームを買わされて、家で早速ゲームを始めたら、いつの間にか寝ちゃったんだよな。
相当、疲れてるらしいねオレは。
まさか、こんなリアルな、のどかな、夢を見るなんて。
でも、なんかこの夢は悪くない。
暑くもなく寒くもないし、湖から出てるであろうマイナスイオン的な何かのおかげで、空気も東京のそれより遥かにいい。
夢のなかでこう言うのもおかしいが、もうひと眠りしようと軽く目を閉じた。その時だった。
「わー、こんなところで誰か寝てるぞー」
「平日の昼間から寝てる奴なんて、ニートに決まってるだろー。」
「ボブくん、そんなこと言ったらダメだよ。それぞれの家庭には複雑な事情があるって、ママが言ってたもん。」
うるさい。
どうやらガキが遊びにきたらしいな。
しかしだ、オレは大人なのでこのまま目を閉じたまま、ガキがどっかに行くのを待つとしよう。
リアルな夢だな。
「オイゆういち!お前あのニートにテロしてこいよ。」
「ええっ、嫌だよ。ボブくんがやってよ。」
「ダメだよ。たぶんリストラだよ。リストラされたら無気力になるってママが言ってたもん。」
こんなバレバレのテロ成功しねえよ。
と言うか、ママは子供に何を教えてるんだよ。
なんて夢だ。
「もういいよ。ゆういちはヘタレってことにしといてやるよ。ハンナ行こうぜ。」
「そんなあ、ボブくんだってヘタレじゃないかぁ。」
「なんだと、それ以上言ったら、コークスクリューおみまいしてやるぞ!」
「もうやめて!私のために争うのはやめて!」
そう言って、うるさいガキ共はどっかに行ってしまった。
と、女の子の方がササっと近づいてきて、
「気を落とさないで頑張ってね。また働き始めたら奥さんも子供も戻ってくると思うの。」
そういって、枕もとになにかを置いて、また走って行ってしまった。
「リストラもされてないし、ニートじゃねえよ。」
そう言って、起き上がり枕もとを見てみると、かわいいホワイトスターの花が何本か置いてあった。