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花花  作者: 江戸川維新
8/24

はなみち⑧

無事に自宅へと到着したオレは、早速、今しがた買ってきたその『LIFE IS BEST』と言うゲームをやってみることにした。

パッケージは、ただの黒い背景に『LIFE IS BEST』と書いてあり、赤い三角の注意書きが載っているだけだった。これでは、一体中身がどんな内容なのか皆目見当がつかない。たぶん、あのメガネっ子に勧められて、ゲームの簡単な説明を聞かなければ、絶対に買ってはいなかっただろう。

パッケージを開封し、ディスクをセットすると、真っ黒な画面から、ダンディな声でナレーションが流れ始めた。


『遥か昔、遠い未来で......』


オイオイ!言ってることがメチャクチャだ!


『ある人は魔法を使い、またある人は武器を手に取り、さらにある人は家畜を育て、またさらにある人は野菜を売って暮らしているのだった。』


うわ、人それぞれだけどなんかウザい。

なんとそこでナレーションは終わり、ムービーが流れ始めた。

活気のある街の風景や、家畜を散歩させる農場主たち、川に飛び込む子供たちや、教会で結婚式を挙げているカップル、鎧をまとった戦士たちがドラゴンと戦っている風景、最後に城が映し出され、王様が街のすべての民の前に姿を現わす場面でムービーは終わった。

ナレーションをバカにしてごめんなさい。面白そうです。

キレイな映像と、音、自然がいっぱいの風景は、癒しを求めているオレにとって、かなりドンピシャなものだった。

早速、『初めから』を選択し、自分の分身になるキャラを作る画面になった。


「なに⁉︎顔のパーツを好きなようにできるのか!」


ゲームの主人公への感情移入が好きなオレにとって、顔を自分と同じように作れるのはポイントがかなり高かった。

案の定、小一時間かかったが、かなり正確に顔を作り込めた。

よし、次は職業を選ぶらしい。

かなりたくさんの職業があり、途中『スーパーサイヤ人』という職業を選びかけたが、スローライフを楽しむため、リアルと同じ、『花屋』という職業を選んだ。

服は『街の民が着ている服』が、最初の設定らしく少し不満が残ったが、職業の設定上、腰巻きエプロンだけは持った状態で始めることができるらしい。

最後に、ゲームでの自分の名前を選択することになり、少し迷ったあげく、自分の本名が「桜木」なので、ゲームでは「はなみち」と名乗ることにした。そうだ、スラダン世代だ。笑いたければ笑え。

そしてついに、『名前を決定してゲームを始める』というコマンドを選択し、スタートボタンを押した。






あれ?

なんか目の前がボヤけてきて、すごい眠気が襲ってきた。

おかしい、さっきまで全然眠くなかったのに、今は気を緩めると、いやもう気を張ろうと思っても、体が重くてしょうがない。

バタっと、オレはゲームの前に倒れこんでしまった。

薄れゆく景色の中でオレは、ソフトのパッケージが、顔の前にあり、頑張ってパッケージを見てみると、赤い三角の中に書いてある文字が、『暴力やグロテスクな表現の注意書き』ではないことに、初めて気がついた。


『このゲームは、プレイヤーが実際に、ゲームの世界に入って楽しんでいただくものです。』


はなみちの目の前が真っ暗になった。


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