はなみち⑦
「ゲームコーナー短っ。」
思わず声に出ていた。
『ゲームソフトはじめました』って散々期待をもたせやがって......いや、確かに始めてはいるわけだが、これじゃどちらかというと『初めました』って感じだ。というか初めましたにしてもゲーム......
「少なっ、って今思いませんでしたかぁ?」
「うわっ、ビックリした!思ったよ!むしろよく張り紙で宣伝しようと思ったなと、一周して感心していたところだよ!」
「いや〜それほどでもぉ。」
「褒めてないよ!皮肉だよ!頼むから春日部在住の永遠の5歳児みたいなリアクションとってないで、会話から本心をくみ取ってくれよ!」
「そんなサイコパスみたいなことできないですよぉ。」
「サイコパスは本心くみ取らないよ!いやむしろグロい方向のものをくみ取るかな、ってなんでサイコパスでてきちゃったんだよ!サイコパスの意味を間違った解釈しちゃってるよ!」
「そんなことより、ちょうどPS4のゲームが入荷したばっかりだったんですよ。お客さんついてますよー。」
「サイコパスのくだり強制終了かよ!やった!PS4持ってて良かった〜、ってx boxだったらアウトだよ!感謝しろよ!もうたぶんついてると言うか憑いてるだよ!悪霊だよちくしよう!」
「まあまあ、そんな熱くならないで。うちは1本しかソフト置いてないですけど、私がセレクトしたんで絶対に面白いです!」
「お前のせいだよ!でも、まあそんなに面白いのかそのソフト?どういうソフトなんだ?」
「『LIFE IS BEST』って言う、今海外で大流行してるソフトで、プレイヤーはゲームの世界で適当に散歩するもよし、釣りをするもよし、いい相手がいたら結婚するもよし、ゆっくり自由に暮らせるんです。」
「へー、敵とか出てこないのか?」
「出てきますけど、戦うかどうかはお客さんの自由なんです!どちらかと言うと、スローライフを楽しむのがこのゲームの醍醐味ですね!」
「なんか面白いかもな!ちょっと興味でてきたな!」
「特にお客さんみたいな、お仕事関係で疲れてる方や、嫌なことがあって現実逃避したい方にピッタリです!」
「そ、そうかな!買っちゃおうかな!」
「今買わないとラスト1本ですよ〜」
「買った!っていうか在庫少なっ!」
「売った!『ゲームソフト終わりました』」
「早っ!もうゲームソフトを売るのはやめときなさい!」
「500円になりまーす。」
「安いな!なんか不安がでてきたぞ!」
「大丈夫です!面白くなければ、いつでも返品しにきてください!」
「おお!ナイスアフターサービス!」
「いえあ!」
「......」
「失礼しました。お買い上げありがとうございまーす!またのお越しをお待ちしてまーす!」
そうしてオレはいい買い物したかな?という複雑な心境で『緑』色の本屋をあとにしたのだった。しかし、ふと立ち止まり、
「なんであのメガネっ子、オレが仕事で疲れてることや、嫌なことがあったことを知ってたんだ。」
と、一瞬だけ思ってみたりもしたが、買ったばかりのゲームがはやくやりたいと言う気持ちのほうが勝り、足早にマイホームへと帰るのだった。