表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花花  作者: 江戸川維新
6/24

はなみち⑥

中は、別世界だった。

人っ子ひとりいない店内は、外観からは想像もつかないほど広く、整ったコーナー別の 本の配列、行き届いた掃除はホコリひとつ見当たらない。

ただ、ひとつ欠点があるとすれば、店のなか全体が緑1色だったことだろう。本棚、壁紙、天井、レジ周りーー、全てが『緑』で構成されている。照明だけは白い明かりで照らしていたが、それが店の至るところにある『緑』を一層際立たせているーー


あっけにとられて店内を眺めていると、

「いらっしゃいませ、本日はどのような本をお探しでしょうか?」

と、急に声をかけられた。

声のした方を向くと、そこには

おさげのメガネっ子がいた。


「い、いや、今日は、げ、ゲームを......」


「ゲーム機はなんですかぁ?」


「ぷ、プレステ4で。」


「かしこまりましたっ。こっちです。ついてきてください。」


あまりにも、あまりにも店全体に広がる『緑』にたいしての、そのメガネっ子のギャップが激しすぎて、多少テンパってしまった。


年は高校生ぐらいか?いかにも本屋で働いてます的なブックオ○にもいそうな普通のメガネっ子だった。しかしよく見ると、着ている服がおかしい。黒い、マントのような、いやこれは、ローブ?といったほうがいいのか?よく魔法使いが着ているアレに似ている。コスプレか?


「それにしても、久しぶりのお客さんなんで嬉しいですぅ。」


「そ、そうなのか。この店、外観はこんなキレイに見えないもんな。」


「そうなんですぅ。チェーン店にお客さんとられちゃっててー。ついこないだ改装したばっかりで、初めてのお客さんなんですよー。」


「なに1番目なのか?そりゃテンションあがるな。」


「ま、改装したの5年前なんですけどぉ。」


「それ改装したの全然活かされてないよね。もっと改装したの宣伝しよ。お兄さん涙出てきた。」


「そんなことないですよー。現に、お兄さんが来てくれたじゃないですか!私の努力のたまものです!」


ん⁉︎この子の努力ってあれか⁉︎『ゲームソフトはじめました』か⁉︎


「でも...ちょっとだけ欲を言えば、本を見に来てほしかったなー。」


「あー、すまん。オレあんまり本読まない人なんだよ。嫌いってワケじゃないんだけど、なんかしょうに合わないというか、活字を5分ぐらい読み続けると体が拒否反応示しちゃうんだよなー。」


「あーいますよねーそういう人。私は逆に読み出したら止まらなくなっちゃいますぅ。あ!この本とか。」


「へー、相当おもしろい本なんだろうな。なんて本?」


「『バイオハザード最速攻略!ロケットランチャー付き』」


「それ完全にゲームしながら読んでるよね!しかも一回読み出したら止まらなくなるって、ゲーマーの風上にもおけないよ!ズルしてるし!ていうか本見に来て欲しかったって言ったわりに、読んでる本攻略本じゃねーか!」


「失敬な、行き詰ったら読むだけですよぉ!ロケットランチャーは2周目からしか使いません!まったくもう、早く攻略して2周したら売るのが私のスタンスなんです!」


「いやもう読んでる本が攻略本じゃねーかはシカトだよ!ていうかお前のスタンスは聞いてねーよ!わかった、わかったよもう何もいわない、お前の攻略本ライフをエンジョイしろよ。」


「やっとわかっていただけたんですね。嬉しいです!あ、こちらがゲームソフトのコーナーですよ。」


そう言って彼女が案内したゲームコーナーには、見間違いかと思って瞬きをしてみても、ためしに頬をつねってみても、ゲームソフトは1本しかないのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ