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花花  作者: 江戸川維新
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はなみち③


「聞いているのかね?」


おっと、余計なことを考えてしまっていた。

いかんいかん。

このままたたみかけることにしよう。


「だいたいオレがこの大会にでてから、5年間もずっと準優勝なんですよ!審査員の先生方の悪意が感じられます。」


「君は私たちがワザと君を優勝させないようにしていると言いたいのかね?」


「審査委員長がそう思ったのなら、そう言うことです。選手のあいだでは、金や審査員の師弟関係で審査が甘くなるだの、優勝が決まるだのという噂もでています。」


「君の師匠も審査員じゃないか。」


いかん、いいパンチをもらった。


「とにかく、今年のオレのブーケはこの5年間で1番の自信作です。観客の人気投票でもダントツだったじゃないですか!とてもあのハゲの、ただ白い花を使って作ったブーケに負けたとは、一切思えません!」


「わかった。」


そう言うと審査員委員長は軽く目を閉じ、


「君になぜ審査結果がこうなったのか、理由を教えてあげよう。」


と、言った。

オレは怒りを抑え、静かに自分サイドのコーナーに休みに行くボクサーの気持ちを想像した。


「花園君のブーケは、キレイだが見た目はシンプルで、到底、君のブーケのような派手さはない。しかし、あのブーケは花嫁さんにやさしい作りになっているんだ。」


「どういう作りですか?」


「あのブーケは、花嫁さんが持つ、取っての部分が非常にキレイな処理をしてある。あれならウエディンググローブが破れることは、まずないだろう。さらに、花嫁さんにしか見えない角度で、淡いピンクの花が入っていることに、君は気づいたかね?花園君はブーケの見た目のキレイさだけでなく、それを持つ人のこともしっかりと考えて作っている。君はどうなんだい?」


奥歯を噛み締め、拳を握った。


「見た目のキレイさだけをとことん追求した、君が作るブーケは確かにキレイだ。だから5年もの長いあいだ、準優勝と言う栄冠を守れたのだろう。しかし、君はいつもあと1歩及ばない。君の作るブーケには気持ちが感じられないんだ。そんな冷たいロボットのようなブーケでは、一生君が優勝することはないだろう。わかったかね?」


ゴングがなった気がした。


気がつくとオレは審査委員長の顔面に渾身のストレートを打ったあとだった。




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