前編
「九条君。好きです」
柔らかな風が新緑を擽る午後。
誰もいない放課後の教室で、高校に入学して以来ずっと憧れていた彼、九条慧が偶々一人でいる姿を見つけて、チャンスとばかりに告白してみたのだけれど。おそらく彼はクラスも違い、話すらろくにしたことのない自分、宝生透花の告白に戸惑っているのだろう、明らかに驚いた顔をしている。
断られることは想定していたので、とりあえず譲歩案を提示してみた。
「誰にもばれないようにするので、一ヶ月だけ私と付き合って下さい!」
「一ヶ月!?」
返事は拒否でも肯定でもなく驚きの声だった。一ヶ月でも長いのだろうかと更に期間を縮めてみる。
「一週間でもダメ?」
「そうじゃなくて! 何で期限付き!?」
返された疑問に透花が小さな頭を傾げると、さらりと少し癖のある長い髪が揺れる。
「後腐れがなくていいかなと思って」
「後腐れって……」
呟いて、じっとこちらを見下ろす慧を透花もまた見上げ、見つめていた。
九条慧はかなり女子に人気がある。優しさを滲ませる甘く秀麗な顔立ちに清爽な笑顔、身長も高い方だ。成績も試験の際には上位五位には必ず名前が入っているし、スポーツも何でもこなす。良くは知らないが家も裕福らしい。育ちが良い為か姿勢も良くて、それが更に彼の容姿を際立たせていた。
そんな競争率の高い彼と付き合うために一つ、彼が断わり辛いような事情も用意してあったのだが、やはりそれは言わないでおこう、いや、言いたくないと思い直す。
「時間とらせてごめんね。忘れて下さい」
迷惑をかけたいわけではない。世の中 諦めが肝心なこともある、と踵を返したところで、ぐっと腕を引かれた。
「断ってないだろ! 何で別れるの前提で付き合うのか訊きたいんだけど!」
「だから後腐れがないように…」
「俺は別れるつもりで付き合う気はないよ」
やはり彼は見た目の通りいい加減な気持ちで女の子と付き合ったり出来ない誠実な性分なのだろう。
「うん。この話はなかった事に……」
「そうじゃない!! 俺も宝生さんの事が好きだから別れるつもりは無いって事だよ!!」
慧からの思わぬ告白に透花は黒目がちな大きな目を見開き、そしてみるみるうちに顔を赤くして俯いた。
「……両想いって事?」
「そうなるね」
「予想外だけど…。うん。凄く嬉しいです」
「だから期限なんて必要ないだろ」
「え?」
透花は赤い顔のまま慧を見上げ、微笑む彼を見て決意を固めるように一度唇を噛んだ。
「ごめんなさい。期限はやっぱり必要なの」
「……何で?」
普段、慧は朗らかな表情を浮かべていることが多い。けれど、今その端正な顔は憮然としていてどこか怖い。
「その事にこんなに突っ込んで訊かれると思わなかったな……」
「だから何で?」
透花は困ったように視線をはずすが、慧は追及を続け引くつもりはないようだ。
「まさか両想いって思わなかったし、そもそも九条君が私の事を知ってたというのも驚いたし」
「それで?」
「一ヶ月位なら軽い気持ちで付き合ってもらえるかなって…あの、そろそろ手を離してもらってもいい?」
腕を引いた慧の大きな手は、いつの間にか透花の手に移り、二人は向かい合い手を繋いでいる状態だった。
「話が終わったらね。それで、両想いって分かったのに何でまだ期限付きなわけ?」
「後腐れがないように?」
「さっきから言ってるけど、後腐れって?」
慧はにっこりと笑うけれど、纏う空気はやはり冷やかだ。
「ねえ、隠してること全部言ってよ」
長躯を屈め、端整な顔で戸惑う透花を覗き込む。
「ちょっと! ちょっと待って! 九条君ってこういう人!?」
透花は更に赤く熟れてしまった顔を反らし、距離をとろうと腕を引くが、握られた手の拘束は弛まなかった。
九条慧の代名詞といえば「爽やか」だ。人当たりがよくて声をかければ分け隔てなくちゃんと返してくれる。しかもそれが自然体でできる。声質も明るくて滑舌がいい。何よりも笑顔が人を惹き付ける。
なのに、今、目の前の彼は。確かに物腰は柔らかいが、こちらが望んでも手を離して貰えないし、追及も止むことは無い。更に女性慣れしたようなこの態度は『爽やか』とは違うのではないだろうか。
「ごめん。俺も自分が女の子を追い詰めるようなことするなんて思わなかった。でも、これは宝生さんが悪いと思う」
あっさりと自分の非を認めて謝ってしまえるところは流石と言えるかもしれないけれど。
彼が言うように確かに自分が悪いのだろう。でも出来る事なら一ヶ月期限の理由は言いたくない。たぶん言わない方が楽しく付き合えるから。
「透花」
口籠ると促すように下の名を呼ばれる。
透花は文系クラス、慧は理系クラスで教室は階段を隔てて離れているし、当然合同の授業もない。なのに彼は透花のフルネームを知っている。
「名前、知ってる……?」
「好きな子の名前知らない奴なんていない。透花。付き合うんだから名前呼んでも問題ないだろ」
「それはいいけど……」
心臓がうるさい。このままでは倒れてしまいそうだ。透花は空いた手で心臓のあたりを押さえた。
「あの、はなし」
透花が「離して」と口を開きかけたところでガラリと教室の扉が開いた。
「慧、悪い、待たせたな……ってもっと遅い方が良かったみたいだな」
教室の入口で罰が悪そうに頭を掻くのは慧の友人だ。そうだろう、慧一人だと思って入った教室で、その慧が顔を真っ赤にした女の子の手を握っているのだから。
「あ、平気! 私もう行くから!」
透花が逃げるように手を引いてもやはりまたぐっと握り返された。
「まだ話が終わってない」
「あの、でも、私も友達が待ってて……」
「……じゃあ、明日ゆっくり話をしよう。携帯教えて」
「あのさ、何があったのか訊いてもいい?」
憮然とした顔で端末を操作する慧と気まずそうに操作する透花に居心地が悪そうに声が掛かる。
「告白して付き合う事になった」
「「え!?」」
画面から視線を移さず答える慧に透花までもが驚きの声をあげ、そのことに更に慧の友人は驚き透花を見た。
「告白したのは私だよ!」
「俺もその後したよ。それに気持ちは俺の方が大きいと思う」
「ええ!? どうして? 気持ちの大きさなんて計れないよ!」
「付き合う期限を設けるって事は、たいした事ないんじゃないかな」
「そんなことないよ!」
「そうかな?」
声を荒げたのは透花で、慧は何処までも淡々と返す。それが反って不機嫌さを表しているようだ。友人はそんなやり取りを交互に見て。
「慧、どうした? お前らしくないぞ?」
「俺らしいって何? 俺だって苛つく事くらいあるよ」
「良く分からないけどさ。宝生さん、ちょっと怯えてるぞ」
友人の言葉に慧は視線を上げた。その鋭い視線に透花が思わずびくりと肩を上げたのを見て、気まずそうに前髪を掻き上げて俯いた。はぁと、小さな溜息が聞える。
「ごめん。怖がらせたなら謝るよ。ちょっと納得いかなくて……。明日ちゃんと話をしよう」
「……うん、じゃあ、明日」
顔を此方に向けた慧は表情を改めていて、漸くいつもの彼らしい和らいだ表情を見て、透花もほっと笑みを漏らした。
***
「明日」
そう言って別れたのが嘘のようだ。
彼を意識したのは入学式だ。ざわざわと落ち着きのない新入生の中で、一人姿勢の良い彼の後ろ姿に自然と目がいった。隣に座っていた男子生徒が彼に話し掛けた際に見せた衒いのない笑顔が印象的で。自分の隣に座っていた女の子が「あの人格好いいね」と言って話し掛けてきた。言われて初めて彼が並みの芸能人よりも整った顔をしているのを理解した。
それからは、つい彼の姿を探してしまっている自分。こちらの視線に気付くのか、たまに視線があった。折角なので微笑めば、彼も軽く笑ってくれた。一度だけ言葉を交わしたことがあるのを彼は覚えているだろうか。
自分にとって、一ヶ月という期間は色々な意味で必要だった。短期間ということに便乗して、してみたいことがあった。その一つは甘えること。長く付き合おうと思えば、それなりに譲歩が必要で、必要以上に甘えてしまえば鬱陶しいと嫌われてしまう可能性もある。でも一ヶ月だけならば嫌われても終わりが見えているのでいいかと思っていたのだけれど。
ふう、と溜息を吐いて放り出されたピンク色のスマホを見る。
「付き合ってるって思っていいんだよね……」
告白して両想いだと分かったその日に気まずくなるってどうなんだろう。本当なら他愛もない内容のラインを送ることも出来るはずだった。けれど、なんだか今日は怒らせてしまったみたいだし、そのこともあってなんと送ったらいいのか分からずにスマホは机の上に放置されたまま。当然相手からも連絡はない。思い切って『おやすみなさい』と送ってもいいだろうか。
はあ、とまた溜息を一つ。
好きな人と付き合うって難しい。
本末転倒とはこういうことをいうのか。
好かれていると分かれば、やっぱり出来ることなら嫌われたくはないと思ってしまう。
机に突っ伏し吐けるだけ息を吐き出す。と、突然響く電子音。
「ひゃあ!?」
心臓がどくりと跳ねて寿命が縮まる思いがする。
「ビックリした……」
さっきまで真っ暗だった液晶にラインの表示画面が光っている。送信元が誰か確かめると、今度は優しく心が跳ねた。
『学校では本当にごめん
事情があってあんなことを言ったはずなのに問い詰めて悪かったと思ってる
明日、少し早く学校に来られるかな?』
割合簡潔な内容がどこか彼らしいと思ってしまう。
多分、彼にとって理解不能な事を言っているのは自分でその理由を言っていないのも自分。なのに彼はそれを受け入れた上で謝罪してくれる。胸が温かい。
「やっぱり好きだなぁ…」
スマホの液晶画面を閉じるのが勿体無いくらいに嬉しかった。
***
早朝の屋上は解放されているとはいえ人気が無い。澄んだ空気が心地よい、皆が登校するには少し早い時間、風が撫でる髪を片手で押さえ透花は慧と向かい合った。
「あの、一ヶ月、何も訊かずに普通に付き合ってもらう事は出来ない?」
「どうして?」
慧の硬質な黒髪が風に揺れるが彼は頓着する様子はなく、逃がさないとばかりに視線を逸らさない。真直ぐな視線に透花は後ろめたさを覚え、僅かに視線を下げた。
「だから、訊かないで欲しいんだけど。一ヶ月後に……九条君が望めばきちんと話すから」
眉を顰めて無言で見下ろす慧を透花は不安な面持ちで見上げた。
「改めて訊きたいんだけど、俺の事好きなのは本当?」
「本当! 本当に好きです」
好きだという気持ちは偽りのないことで、透花は力強く頷いた。慧はその答えを聞いて瞳を閉じて少し考えた後、ふうと息を吐いた。
「いいよ。分かった」
「! ありがとう!」
渋々という様子ではあるが、了承が得られたことにほっとして笑顔を見せると、途端、カシャンっと背後のフェンスが音をたてた。
「あの、九条君?」
「目、瞑って」
慧は透花の背後のフェンスにを片手で握り、上体を傾げた。互いの吐息が触れるほどに距離が近い。これで目を瞑れと言われたのだから、彼が何を望んでいるのかくらいは分かるのだけれど。
「付き合ってまだ二日、だよね?……」
「二日でキスくらい普通の付き合いだと思うけど。嫌?」
戸惑いこそすれ、嫌、ではない。透花はぎゅっと自らの制服のスカートを握り、瞳も同じようにキツく瞑る。
そっと触れる柔らかな感触。
それが離れたので瞳を開ければ、涼やかな瞳と視線が絡む。
「顔赤い」
「! 九条君と違って慣れてないから!」
「俺だって慣れてはないよ。もう一度していい?」
訊かないで欲しい。
フェンスを掴む手とは反対の手で頬に触れて、確かにその手は少しぎこちないようだが自然と出来てしまう辺りが初めてではないだろうと思われた。彼と初めてキスをした人はどんな人なのだろうか。ズルい、と思った事は黙っておく。透花は上を向き再び瞳を閉じる。
触れては離す。それを幾度も繰り返されて、ふわふわと不思議な心地がする。
僅かに離れている時間が空いたとき、つい透花は自分から強請るように唇を差し出してしまった。彼が息を呑む雰囲気に瞬時に我に返り瞳を開けた瞬間に力強く唇が押し付けられた。慧の澄んだ瞳が鋭い光を帯びて透花の視線を絡めとる。いたたまれず再びきつく瞳を閉じる。湿ったものがぺろりと唇をなぞったことに驚いて思わず身体を引き離した。
「……い、ま……」
「舐めた。嫌だった?」
「わ、わからない……」
透花は熱くなった頬を隠すように両手で覆った。その様子に慧は不思議そうに透花を見下ろす。
「キス、初めて?」
「……うん……」
「他校に彼氏がいるって聞いたことあるけど」
「へ? ぇ? いな、いないよ!」
突拍子もないことを言われ、つい裏返ってしまった声が恥ずかしい。見れば、慧は相変わらず不思議そうな顔をしている。
「別れたの?」
「質問変じゃない? 付き合ってる人がいるのに何で九条君に告白するの?」
未だに顔が熱い。平静な表情をしている慧を恨めしく思う。
「いや、だから一ヶ月とか可笑しな事を言ってるのかなって」
「違うよ! そんな二股みたいなこと! それに男の子と付き合ったことなんてないし……」
ごにょごにょと言葉尻が口の中に消えていく。そう、透花はこれが初恋だと言ってもいい状態だった。
「そうなんだ」
ふうんというようにしげしげとこちらを見る態度の慧に透花はどこか戸惑ってしまう。
「えっと、何?……」
不意にちゅっと唇が触れた。
「!?」
「良かったって思っただけだよ」
にっこりと眩しい朝陽よりなお眩しく笑う慧は爽やかなのにひどく魅力的で。
「ふ、不意討ち禁止!!」
行為も笑顔も、こんなことが続いたらいつか自分がゆでダコになってしまうのではと抗議した。
***
「手、繋いでもいい?」
放課後、校門を出て人気が疎らになると透花は意を決して訊いてみる。
「はい」
どうぞという様に差し出された大きな手を透花はおずおずと握った。これも付き合ったらやってみたかったことの一つ。なんだか、今朝は一足飛びにしてしまった事もあるけれど、それはそれ、これはこれだ。
「昨日も思ったけど大きいね。固いし……あれ、肉刺がある?」
繋いだ彼の左手の親指と小指の付け根に硬さを感じた。普通にしていたらこんなところに肉刺はできないと不思議に思っていると。
「弓道やってるんだ。暇があれば道場に通ってる」
「それで姿勢がいいんだね! カッコいい!!」
「姿勢いい?」
「いいよ! 歩く姿とかもね、スッキリしてるからすぐに目がいっちゃうの。所作が洗練されてるから凄く素敵だよ」
「そんな風に初めて言われた」
「そう? 皆、九条君の顔に先に目がいっちゃうのかな。でも、姿勢がいい人って自分に自信がある人で、自信があるってことは努力してる人だと思う。九条君って見てて皆に優しいし、真っ直ぐで、こんな人現実にいるんだなぁって……あれ?」
慧の顔が薄く朱にそまり、空いている手でそれを隠すように俯いた。
「照れちゃった? でも本当だよ! 九条君顔も綺麗だけど、凛とした姿勢が本当に綺麗で好き!」
「あのさ」
「うん」
「照れたんじゃなくてさ……、透花の方がよっぽど綺麗で可愛いんだけど。あんまり無防備に笑わないでくれる? 抱き締めたくなって困る」
「抱き締め……!?」
「なるよ。好きな子に好きって言われてるんだから」
「好きって言っちゃダメ?」
「ダメじゃないけど! 俺、そんなに理性的じゃないかもしれない」
「えー? そんなことないよ。九条君 頭も良いし」
「いや、そういう問題じゃないから」
「あはは。なんか照れてる九条君って意外。手繋いで歩くの嬉しい。ありがとう」
さっきから色々と本当に嬉しくて饒舌になったり、顔が自然に笑ってしまうのは自覚しているが、無防備とはなんだろう。わからないけれど、笑ってしまうのだから仕方がない。
「あ~、もう、さ~……」
「なあに? 言いたい事あったら遠慮しないで言って」
「……そっちこそ不意打ち禁止だよ」
「? 何の事?」
「だからさ、普段からそんなに素直に感情出すの?」
「嬉しい事とか好きな事は口にした方がいいじゃない? 言っておけば良かったって後悔したくないし」
「後悔したことあるの?」
「言わないで後悔したことは今のところないかな。告白も受けてもらえたし。あ、そうだ! 弓道してるとこ見てみたいな」
「いいよ。見学出来るから今度連れて行ってあげるよ」
「いいの!? 邪魔にならない?」
「騒いだりしなければ平気だよ」
「本当!? 嬉しい! 静かにするね!」
「……もう、本当に勘弁して」
晴れやかに微笑む透花に慧が両手を挙げたい気分になったのを彼女は知らない。
***
待ち合わせは図書館前。
透花はガラス扉に映る自分の姿を見つめた。
選んだのは水色の単色花柄のフレアワンピースに白いカーディガン。
(変、じゃないよね……)
髪も緩く編み込んでサイドに流してみた。
(……制服で来れば良かったかな。いやいや、デートにそれはないでしょう!)
自分で思った事に突っ込みを入れて、ブンブンと頭を振りおかしな考えを振り払う。
「なにやってるの?」
「何でこのタイミングで来るの!?」
不思議そうに声を掛けてきた慧に逆ギレ気味に振り向いた。
「服、可愛いね。髪型も似合ってる」
手を繋いで歩き出し、優しく微笑まれてそう言われれば、瞬時に熱る自分の顔。
「九条君って詐欺師になれるよね」
「人聞きの悪いこと言わないでよ。自分の彼女褒めて何でそんなこと言われるんだ」
「だってさらっとそんなこと言うから……」
「嬉しい事とか好きな事は言った方がいいんだろ? 透花の髪、それ癖っ毛?」
「え? あ、うん。そう」
緩く癖ののある髪は時々パーマかと疑われる事もあるが、正真正銘、自分の髪質だ。
「可愛いね」
「ストレートは嫌い?」
「いや? 正直、考えたこともないけど。ふわっとしてるの透花に似合ってるから」
「……昔はね…真っ直ぐだったんだよ」
「え?」
「途中で変わったの」
「そんなことあるの?」
「あるんだよ。不思議でしょう」
驚いた顔をする慧に、透花は無邪気に微笑んで癖のある毛先をくるりと玩んだ。
透花をベンチに座らせ、慧は疲れただろうと飲み物を買いに行ってくれた。そんなことが本当に自然にできる人。その後ろ姿を透花はぼんやりと見ていた。
細身でバランスよく引き締まった体型に小さく端整な甘い顔。
チャコールのカーディガンに白のレイヤードTシャツ、オリーブ色のチノパンツをさらりと着こなしている。
横を通り過ぎる女の子が彼を見て頬を染めて行く。
(ほんと、モデルみたい)
悩んで選んだ服も頑張った髪型も、ちゃんと気付いて褒めてくれる。
(九条君と普通に付き合える子が羨ましいな)
「どうした?」
「ん? 九条君がカッコいいなと思ってた」
差し出された飲み物を受け取って答えれば、彼は気恥ずかしそうに眉を寄せた。
「人目のあるところで不意討ちするなって」
「? 何もしてないよ」
「もういいや。ちょっとこっち来て」
人気のない通路へ来ると、覆い被さるように透花を壁に追い詰めた。
「自分が可愛いって自覚持ってよ」
驚きに言葉の出ない透花の唇が優しく塞がれた。
***
愉しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
休みの日には一緒に出掛けて遊んで。
平日の放課後は勉強を教えてもらったり、約束通り弓道場にも連れて行って貰った。
手を繋いで歩いて、笑ってたくさん話をした。
たった一ヶ月だけど、キスもたくさん貰った。
優しくて真っ直ぐでカッコいいとても素敵な人。
そんな人と過ごす一ヶ月は思った以上にあっという間で。
一ヶ月じゃなくて三ヶ月にしておけば良かった。
そんな風に思ってしまう浅ましい自分。
「聞かずに楽しかったねって別れる事は……」
「無理。約束だよ。話して」
このまま別れた方が互いに傷付かない、いや、少なくとも自分が傷付かない。でも、彼は話を聞かずに納得してくれそうにない。
振り払うように透花は覚悟を決める。
「多少、重い話になるけど」
「うん」
「私 白血病なの」
「……は……」
上手く言葉に出来ない慧に変わり、透花はこくりと頷くと改めて説明する。
「白血病。良くドラマとかで不治の病で出てくるやつ。簡単に言うと血液のガン。私のは急性骨髄性白血病っていうの。治療が終わってもうすぐ五年になるから、そうしたら一般的には完治って扱いになるんだけど」
「…ああ、治ってるんだ…」
明らかにほっとした表情の慧を見て、透花は静かに微笑み言葉を続けた。
「それがね、完治扱いになってもガンに完治は無いんだよ。治療後五年すれば再発するリスクは確かに低いっていわれてるけど、しないとは言い切れない。一生ね。それに再発じゃなくて、抗がん剤の副作用で違うガンが発症したり、別の病気になる確率が普通の人よりよっぽど高いの。つまり、生涯健康でいられる可能性は低いと思う」
「………」
淡々と告げる透花を慧は言葉もなく見ている。透花は申し訳なさそうに彼を見てから先を続けた。
「だから、闘病中も一日一日を悔いのないように生きなきゃいけないって良く言われてて…」
「………」
「えーと、だからね、好きな人と少しの間でも付き合ってみたいなと思ってね、期限付きなら付き合ってもらえるかなって、事だったんだけど……」
「………」
「あの、九条君、聞いてるかな?」
「聞いてるよ。つまり俺が透花の事を好きじゃなかったとしても一ヶ月なら付き合ってもらえるかと思ったって事だろ?」
慧の表情は呆けているというよりは真剣で、余計に気持ちが読み取れない。不安になって問えばさらりと単調な声で答えが返された。
「うん。そうです」
「で? 両想いって分かったのに期限がいるのは何で?」
「遊びで付き合うならともかく、本気で付き合うには重いから」
「何が」
彼らしくな冷たい問い方。もしかしたら怒鳴りたいのを我慢しているのかもしれない。
「たかが高校生の付き合いにって思うよね。結婚を前提にするわけでもないただの高校生の交際なんだから、普通に別れが来るまで気にせず黙ってればいい。何も言わずに付き合って、再発したときじゃあ別れよう、でもいいとは思ったんだけどね」
「じゃあ、それでいいだろ」
「……よくないでしょ。話を聞いた今、これまでの一ヶ月みたいに付き合えないよ」
「俺は出来るよ」
「私は無理。好きな人だから迷惑を掛けるかもしれないのにこれ以上一緒にいるのは辛いよ」
「迷惑ってなんだよ!」
これまで単調だった声が鋭い声に変わった。それだけで彼が自分とのことを真剣に捉えてくれていたのだと分かるのだけれど。
病人と向き合うことは難しい。
当事者となって初めてわかることだらけだ。
重い病気ほど友人も家族もどう接していいのか対応に困る。大丈夫だという言葉ですら双方に重い。恋人なんて立ち位置の人はどうしたらいいのだろう。
がん治療は最短でも半年、長くなれば何年かかるかわからない。それでも友人と家族は闘病が終われば元に戻ることが出来る。でも恋人は? 元に戻れるの? 自分がその立場ならきっと困る。
人に誠実に接する彼ならば猶更、闘病中の彼女にさよなら何て言えなくなってしまうのではないだろうか。
「病気が再発するかなんてわからない。再発率が下がるってことはずっとこのまま元気でいられる可能性の方が高いんだろ。なのになんでそんなに後ろ向きなんだ!」
慧の鋭い怒声にも似た声に透花は大人びた笑みを浮かべた。
「……白血病に限らずガンってね、退院して終わりじゃないの。例えば、退院して暫くは免疫力が下がった状態で水疱瘡やおたふく風邪、インフルエンザとかの感染症にかかると重篤化して命に関わることがあるから、感染者と接触する度に予防として薬を貰いに行ったり、免疫製剤点滴したりしてね。親からしたら子供が学校に通う以上は感染症との闘いだよ。家族も予防接種とかしなきゃならないし、熱出す度に心配するし、病院には連れて行かなきゃならない。知らない人は退院したら「治ったんだ。良かったね」って言うけど、そんなもんじゃないんだよ。……再発にしても数字や確率でなんかで計れない。だから別れた方がいいと思う」
ひとくちに白血病といっても、リンパ性、骨髄性、更に慢性、急性とある。またそのなかでも色々なタイプがあり、そのタイプにより予後(病気の見通し)が変わってくる。タイプによって五年生存率が20~80%と差があり、全く同じ種類のものでも、罹患した人により薬の感受性や副作用などに差が出る。同じ病気でも同じ経過はないのだ。
透花は骨髄性の中では予後良好のタイプで、移植もなく化学療法のみで寛解を得て退院となった。今のところ再発もなく、内蔵系にも重い問題は出ていない。
運が良かっただけ。透花はそう思う。
透花よりも予後良好の子が再発し移植をしたり、感染症で最悪亡くなったケースもあるのだ。数字では計れない。患者と家族にとっては0か100、生きるか死ぬかだけだ。
「ガンに限らず大きい病気って家族に負担が凄くかかると思う。医療費自体は日本は子供の医療保険制度が充実してるから、保険適用内の治療なら十八歳未満は大したことないみたいだけど、最短でも半年の入院期間、病院への交通費、家族の食費、子供に与える日用品、おもちゃとか金額面の負担は大きいし、何よりも精神的にキツいよね。親はね病気の子と、そうでない健康な兄妹を同時に見なくちゃいけないの。子供の入院って面会じゃなくて付き添いなんだよ。それから……自分の子供がいつ死ぬか分からない病気ってきっと怖い。 だからガン患者の家族ってね、『第二の患者』って言われるの。受けるストレスとか心労とかで体調や精神を崩す人も多い。私の両親も疲れて離婚て話もあったらしいし、両親が私に時間を割く分、妹には寂しい思いをさせた。お兄ちゃんは何も言わなかったけど不満はあったと思う。それに、一度ね、自分が辛い時にお母さんに「罰が当たったのかな」って言ったことがあってね、そうしたらお母さん泣いちゃったの。「罰が当たったのはきっとお母さんだよ。巻き込んでごめんね」って。違うって直ぐに否定したけどよけい悲しそうな顔になっちゃって……。きっとお母さんは私にそんなふうに否定されて慰められたことも心が痛んだんだと思う。私も治療よりよっぽど辛かった。そんな思いをもう誰かにしてほしくないし、自分もしたくない。私、自分が悲観的な自覚はあるの。自分の行動や言葉で人を傷つけて、自分も傷つくのが怖い。それと弱音を吐けなくて我慢するのも辛い。これ以上大切な人に辛い思いをして欲しくないよ。だから一ヶ月って期限で、楽しかったねって別れたかった」
「……ずっとそうやって人と付き合っていくのか?」
彼が言いたのは、楽しい事だけをする、けれど辛いことからは逃げる様な人付き合いの仕方だろうか。
そう言われてしまえば、確かにそうで、相手を馬鹿にしているようだ。
「……どうかな。先の事はわからないけど、今の私はこれが精一杯」
「人を振り回した自覚はある?」
「はい。嫌な思いをさせてごめんなさい」
透花は真っ直ぐに慧を見て答えた。
彼が自分を好きだったいうのは本当に予想外だった。付き合っちゃいけないと警鐘も鳴った。けれど。
「……ごめんなさい。それでも九条君の彼女になりたかったの。ごめんね」
一ヶ月だけの偽物みたいな彼女なら、なにも言わずにありがとうって別れて良い思い出に出来た。
慧が好きだと言ってくれたとき、最初からそういったリスクがあるんだと説明しようかとも思った。
彼は優しいから本当は面倒だと思っても同情で一ヶ月位は付き合って貰えるんじゃないかと思ったから。
でも、欲が出てしまったのだ。
好きだと思ってくれているのなら、一ヶ月だけでも同情ではなく彼女にして欲しいって。それが余計に誠実な彼を傷付け憤らせる事も感じていたけれど。
「重いとか、辛いとか、それを決めるのは俺だよ! 怖がってるのは透花だろ!!」
「はい」
慧が睨み付けるようにしても、透花は慧を真っ直ぐに見た。それは彼女の決意を表すように毅然としたものだった。
「……少し考える」
「うん。ありがとう」
立ち去る慧の背中を見送った。一ヶ月付き合っただけ。それでもわかる。
きっとあの背中は怒っている。
「ありがとう、九条君」
慧と付き合ったのは五月の中頃。あのとき爽やかだった青い空は重い灰色の梅雨空に変わっていた。
***
重い告白をして一週間。
考えると言っていた慧は、黙ったままだ。元々一ヶ月と言い出したのは自分で、こういった結果を招いたのも自分。
出来ることならきちんとさよならをしたかったけれど……。寂しいなんて思う資格もない。
慧のクラスの前で、その後姿を目に止め心で溜息を吐いた。
「あっ!」
「あ、ごめん!!」
下を向いたまま歩いたのが悪いのだが、相手も余所見をしていたのだろう、勢いよく前方から来た男子生徒とぶつかってしまった。
「こっちこそごめんなさい!っいたっ」
「あ、ボタンに髪絡まってる。ちょっと待って」
慌てて謝ろうと頭を下げようとしたら、ぶつかった拍子に透花の髪がシャツのボタンに絡んでしまったらしく、ぴんと引っ張られた。
「あ、自分で」
「いいよ。宝生さん手が塞がってるから」
言われた通り、透花の両手は提出用に集めたノートで塞がっている。申し訳ないが、任せようと「お願いします」と言うと、男子生徒の手が髪に伸びた。
「触るな!」
途端に飛んだ鋭い声。
驚いて振り返るといつの間にか慧が傍に来ていた。
「俺がとる」
そう言って透花を後ろから抱き込むようにして、ボタンに絡んだ髪に手を伸ばす。
「あの、九条君……」
「もうとれるからじっとして」
後ろにいるから彼の表情は見えない。けれど、発せられる雰囲気と正面の男子生徒の顔を見れば慧が怒っているだろうことが伺えた。
「とれた。行こう」
はらりと絡んだ髪がほどけ、そのままノートを片手で奪い、もう片方の手で透花の手首を掴んだ。
腕を引かれた透花は慌ててぶつかった相手に「ごめんなさい」と告げ、慧の後ろを付いていく。
彼の歩調に小走りになりながら手を引かれ、ノートの提出先を聞かれたので国語科だと伝えれば、そのまま国語科準備室まで連れて行かれた。驚いた様子の教科担当の机にノートを置いて頭を下げると、またも腕を引かれた。
すれ違う生徒が怪訝な顔をしているが、彼は透花の手を引いたまま歩調を緩める気がないようだ。
「九条君、待って。どうしたの!?」
「どうしたって! 他の男に髪とか触らせるなよ!」
屋上に続く階段まで来た時に問えば、背を向けたまま怒りの声が響いた。
屋上への扉を開いて透花を引っ張るように引き入れた。そのまま後ろ手に扉を閉めると、ガンッと音を立てて扉に背を預け、俯いたまま憤りをぶつけるように前髪をくしゃりと掻いた。
屋上は最近の梅雨空の為か人気が無い。透花は息を整えながら慧を見た。
「あれは髪の毛が引っ掛かって……」
「それでも嫌だ! 俺以外の男の傍に行くな」
「そう言われても、あれはぶつかっただけで……」
「もう無理だ!」
途端、透花は捕られたままだった手を引かれぐっと抱き締められた。
「九条く……」
「透花 好きだ」
肩口に顔を埋められて、それは懇願のようだった。
「俺、透花の事が好きだよ。別れるとか考えられないんだ」
透花は慧の腕の中で抵抗することもなく抱きすくめたれた。応えたら駄目だと言い聞かせながら。
「私、これ以上好きな人にいろんなことで我慢させたくないの」
「そんなこと病気になってから考えろよ」
「それが出来ないから別れようって言ったんだよ。私、きっと一生こうだよ。九条君の事好きだから、こんな自分を受け入れて貰うのが申し訳ないの」
「だからそれを決めるのは俺だって! それに俺は今、透花に触れられない方が我慢できない。一生好きとか言うのは簡単だけど、確かにそうだとは約束できない。透花は俺に我慢させるのを怖がってるなら、付き合いきれなくなったらはっきりそう言う。だから今は別れない」
「九条君」
「別れない!」
宥めるように声を掛けても、紡がれる言葉は駄々っ子のようだ。
透花がそっと慧の背に腕を廻せば、慧の身体がびくりと揺れた。
「九条君。ありがとう。すごく嬉しい。もういいよ」
「ふざけるな! 俺は別れないって言ってるんだ」
「冷静になって」
「冷静に一週間考えたよ! いつか透花を傷付けることがあっても俺は別れたくない。別れない! だから、透花もそんな顔してないで俺に甘えろよ!」
「そんな顔って……」
「泣いてる」
体を離せば切なげな双眸に見つめられた 。透明な雫が頬を伝う。止めようと思っても勝手に流れ出した涙は次々と頬を濡らした。硬くて大きくてそれでいて優しい手が涙を拭う。その温かさに益々涙が零れた。
「透花。好きだ。俺のこと好きなら応えて」
卑怯な言い方をする。そんな風に言われてまで応えずにいることは不可能だ。
頬にある手に自らの手を添えて涙に濡れた顔で微笑んだ。
「……本当に嫌になったら別れようって言える?」
「言えるよ。俺はそんなに優しくないから大丈夫だよ」
優しくない人が一週間も悩んだりなんかしない。彼は真っ直ぐな人だからきっと葛藤するに違いない。
「言う時に後ろめたくならない?」
「知るか、そんなこと! とにかく今は一緒にいたい。そう思わなくなったらちゃんと言う。約束する。だから、おとなしく俺の彼女でいればいいんだ」
突き当たったら打ち砕いた。
彼はやっぱり眩しいくらいに真っ直ぐな人だ。
思いきって引き締まった胸に飛び込めば、優しく迎えられた。
「私、我が儘だよ。したいことがたくさんあるよ」
「何? 言って」
「ディズニーランド行きたい」
「今度の休みに行こう」
「友達に九条君と付き合ってるって言っていい?」
「なんだそれ。今まで言ってないほうが不思議なんだけど」
「お弁当、作ったら食べてくれる?」
「むしろ食べたいよ」
「バレンタインにチョコレート貰ってくれる?」
「だから欲しいって。もっとちゃんとしたお願いないの?」
「……もう一回彼女にしてくれるの?」
「別れたつもりないよ。他には?」
透花は一度、心を落ち着けるようにはぁと息を吐き出した。
「………結婚してって言ったら?」
慧の心臓がとくんと跳ねた後、頭上からふっと笑う声がした。
「その場合、プロポーズしてっていいなよ。まあ、いいや。いいよ。高校卒業したら籍を入れよう」
「身内だけでいいから結婚式してくれる?」
「友達も呼べば?」
「ドレスがいいな。ジルスチュアートかバービーの」
「なにそれ? 人形?」
「あはは。お色直しもしていい?」
「結婚式の事なんて知らないけど、透花の好きにしていいよ」
「一緒に選んでくれないの」
「いくらでも付き合うよ」
「………後悔するよ?」
「してもいい」
慧は愛おしいとばかりに透花の身体を閉じ込める。
その細いけれど逞しい身体に身を預け、好きな人の体温はこんなにも幸せなのかと考えた。
「……結婚するまで付き合ってるかな」
「さあ。俺は付き合ってると思うけど」
「嫌になったら直ぐに言ってね」
「わかってる」
「それまで甘えていいの?」
「いいよ。俺も甘えるし」
「九条君が甘えるの?」
「そう。触りたいときに触らせて」
「さわ!?」
「時と場所はわきまえるから」
「ええと、これもわきまえてるの?」
透花の頬は大きな手で包まれて上向かされている。そこにある黒く澄んだ瞳は確かに熱を孕んでいて。
「誰もいないから」
厚い雲の間から差し込む光に二人の影が重なった。
立ったまま抱き締めあうと、透花の耳は丁度慧の心臓の音が聴こえる辺りになる。とくとくと規則正しく聴こえる音がなんとも心地がいい。
「透花、一つ約束しよう」
「約束?」
「俺たち思ってる事はちゃんと言おう。嘘はつかなでいよう」
「嘘」
「これを言ったら嫌われるんじゃないかって事も言っていいよ。俺、叶えられれば叶えるし嫌ならそう言うから」
「九条君も」
「うん。俺もそうするから」
「病気で別れが来るのか、自然と心が離れるのかなんて分からない。だから、それまで嘘は吐かないでいよう」
「……うん。じゃあ、一つ言いたいことがあるんだけど」
「なに?」
透花は背の高い彼を見上げにっこりと笑う。
「九条君、大好き」
それは彼女の嘘のない告白だった。
読んで下さりありがとうございます。
念の為、筆者は医療関係者でも罹患者でもありません。
知っている事と想像で書かせて頂きました。
もし、当事者などの方に不愉快な思いをさせてしまったとしたら申し訳あません。
後編は、慧の告白となります。ご興味を持たれた方はよろしくお願い致します。